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当ページでは、電源容量が足りなくなった時に現れる症状と対策をまとめている。電源ユニットはパソコンパーツの中でも重要なパーツの一つで、不具合があると起動しなくなるなどトラブルの元になりやすい。パソコンを使用していて勝手に電源が切れたり、頻繁に何らかのエラーを発したりするなら危険信号だ。注意深くパソコンを使い続ける必要がある。

場合によっては電源ユニットの交換を検討しよう。買い替えを検討中の方はおすすめのゲーミングPC向けの電源ユニットについても参考にしていただければと思う。電源ユニットの交換は手間が掛かるので初めからある程度高品質なモデルを選択しておくとよい。

電源ユニットって何のこと?

kurouto-KRPW-PA1200W92パソコンの電源ユニットとは、パソコンを起動させたり各パーツを機能させたりするのに必要な電力を供給するパーツだ。具体的にはマザーボードやグラフィックボードへ電源を供給する役割を持つ。当然CPU・グラフィックボード・マザーボード・メモリなどのパーツは電力がないと機能しない。デスクトップパソコンなら本体の裏側に電源ユニットのボタンが配置されているはずだ。一般的にノートパソコンの場合はよりコンパクトなACアダプターが採用される。電源容量も控えめでデスクトップ向けの電源ユニットとは異なることを押さえておこう。

容量不足による対処法の基本は電源ユニット交換

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最初に結論付けると、電源の不具合=交換対応しかないことが多い。電源トラブルの原因は容量不足・物理的破損・劣化のいずれかに絞られる。つまり、基本的には電源ユニットを交換しないと問題が解決しない。ストレージのように内部のデータの異常などは存在しないので、その他の要因は考えにくい。

例えば、電源容量不足によって不具合が生じているのであれば、消費電力の大きいグラフィックボードを外すことでPCは稼働するようになるだろう。また、グラフィックボードやCPUをより省電力なものに落とすというのも選択肢に入る。CPUのTDPを抑えるのも有効だ。もちろん、これでは意味が無い。現在の環境においてパソコンを正しく動作させるためには、根本的な解決が必要だ。基本的に電源のトラブルに対してユーザーが取れる行動は電源ユニットの交換を行うしかない。

パソコンの各パーツが機能するためには十分な電力が必要だ。もし容量が不足してしまうと様々なトラブルが発生することになる。電源ユニットは、パソコンの根幹に関わる部分だと言える。電源ユニットがパソコンの”心臓”と呼ばれる所以だ。電源が不足した状態で使用を続けると従来どおりのパフォーマンスを発揮できず、ある日突然電源関係のトラブルに見舞われることも珍しくない。

とくにPCパーツの中でも消費電力の大きいグラフィックボードの交換を行った際に発生しやすい。最近はグラフィックボードだけではなくCPUの消費電力も上昇傾向にあるので注意しておこう。CPUの場合は電力制限の解除やオーバークロックで消費電力が上がることもある。グラフィックボードやメモリのオーバークロックも同様だ。これらの特殊な環境でPCを使うならより電源ユニットに気を配る必要がある。

症状から原因を探る

電源ユニットの不具合=基本的には交換というのは理解できたと思う。では、電源に不具合が発生するとどうなるのか。似たような症例を出す不具合も多くある。どこの不具合かもわからないまま電源ユニットを交換するのは手間と費用が掛かる。まずはしっかり原因を特定して対応していこう。電源ユニットの不具合や電源容量不足は気付きにくいという特性がある。不具合があったとしても電源が正しく稼働しているように見えるからだ。

パソコンに掛かる負荷が大きくなると電源が切れる

電源が切れてしまうというのがもっとも頻度の高い症状だ。ゲームを起動すると電源が切れたり、ゲームを起動してからしばらくすると電源が切れたりすると症状は一般的に起こり得る。電源容量不足によって発生することが多い。ただし、熱によるトラブルなどでも発生する可能性があるので慎重な判断が求められる。

例えば、CPUファンの接着が甘くて熱が上がり過ぎてしまうということも考えられる。「Open Hardware Monitor 」や「HWMonitor」のようなツールでCPU使用率やCPU温度を確認してみよう。電源容量不足以外の要因を排除するのが最適だ。CPUが常時80℃以上の温度を保ち、熱が下がらなければCPU周りの不具合だ。熱が50℃前後で安定していれば正常である。一つひとつ可能性を潰していくことが大切だ。

パソコンの起動から一定のタイミングで電源が切れるなら、電源容量の問題が大きい。しかし、グラフィックボードの交換やCPUの交換、設定の変更を行っていないなら、電源の故障が疑われる。電源が故障すると電力の変換効率が落ちたり、電源の容量が下がるような症状が生じる。

これまでは普通に起動できたのが突如できなくなったら、電源の容量不足よりも故障を疑いたい。一度グラフィックボードを外して、同じ症状が発生するなら別のパーツに異常があるかもしれない。グラフィックボードを外すと安定する場合は電源の故障が濃厚だ。電源の交換も視野に入れたい。

頻繁にエラーを発するようになる

ブルースクリーンが現れて再起動を繰り返す状態になったら要注意だ。これは電源の容量不足でも起こるが、ストレージの不具合やエラーも疑うべき症状となる。まずはシステムの復元でエラーが発生する前の状態に戻し、症状が発生しなくなればストレージのエラーだと考えてよい。

それでも症状が治まらない場合は電源関係の不具合を疑うべきだろう。ここで言う電源関係は電源ユニットそのものよりも、電源を供給されるパーツである。グラフィックボードやマザーボード辺りが怪しくなる。グラフィックボードを外し、正常に稼働しなければマザーボードが怪しい。ドライバの再インストールや出荷時の状態に戻して様子を見ることで対処できる。

システムの復元で症状が治まらなければストレージを疑うべきだ。劣化や物理的破損があればエラーを発しやすくなる。プライマリストレージ以外を外すだけで解決すれば楽だ。OSの入ったプライマリストレージが破損していた場合はかなり面倒だ。新しいストレージを用意してクローン化する。その上でプライマリストレージを交換しなくてはならない。原因が特定出来ない最後の手段として考えておく必要があるだろう。

電源がつかなくなる

最後にパソコンの電源がつかなくなるという症状だ。必ずしも電源ユニット自体が原因というわけではなく、マザーボードの不具合でも発生することがあることは押さえておこう。メモリ1枚を残し、グラフィックボードや増設パーツを外した最低起動を試してみて欲しい。電源がついたら一度電源を切り、外したパーツを取り付けて再度起動しよう。これで問題がなければよしだ。

つかなければ電力不足の可能性が高くなる。マザーボードに何かが干渉している可能性もあるので、何を取り付けたらつかなくなるかを確認したい。グラフィックボードであれば電源の交換が必要になるだろう。消費電力的にグラフィックボード以外で消費電力が足りなくなることは考えにくい。物理的な破損も考えてパーツの交換が必要になるケースが多い。

電源容量が足りないと感じた時に行うべきこと

使用している電源ユニットの容量確認

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電源ユニットの電源容量を確認するには、パソコンの左サイドカバーを外す必要がある。カバーの後ろ側の上部か下部にある電源に容量等が記載されているので確認しよう。パソコンに搭載されている電源は全て同じ形式で表示されているわけではないので、参考程度に見て欲しい。

赤枠は容量を表示している。画像のモデルの場合500Wであることが分かる。そして青枠は80PLUSの規格だ。このパソコンに搭載されている電源は500W 80PLUS SILVERということになる。自分のパソコンに搭載されている電源容量がわかれば、消費電力を計算してパソコンに供給する電源容量として足りているかを確認しよう。とくに高性能なグラフィックボードやCPUに換装した場合は注意が必要となる。

現在のPCパーツ全体の消費電力の確認

CPUCore i5-12400F65W
グラフィックボードRTX 3060 Ti200W/最大およそ320W
メモリDDR4-3200 16GB(8GB×2)14W
SSD512GB NVMe×15W
HDD非搭載
光学ドライブ非搭載
その他(マザーボードなど)45W

消費電力を正しく計測するのは非常に手間が掛かる。ここではおおよその消費電力を算出をしていこうと思う。CPUとGPUはわかりやすいようにTDPをそのまま足す形にしている。CPUがCore i5-12400Fなら65W、グラフィックボードがRTX 3060 Tiなら200Wだ。そこにメモリ1枚7Wほどで、SSDは一つ5W見ておけばよいだろう。マザーボードやケースファンなどは多めに見て45Wだろうか。上記の構成で消費電力はおよそ329Wである。

ゲームプレイ中などでパソコンに負荷が掛かるとCPUもGPUも消費電力は高くなる。ベンチマークなど負荷がダイレクトにかかる環境ではRTX 3060は320Wほどまでアップする。その点を考慮すると329W+120W=449Wとなる。これを基準に電源ユニットを考える必要がある。なお、消費電力がわかればおおよその電気代を計算することもできる。ゲーミングPCの購入を検討していて電気代が気になる方は合わせて参考にしていただければと思う。次に電源効率について詳しく見ていく。

電力変換効率の規格・認証

80PLUS認証

80plus-titanium80plus-platinum80plus-gold80plus-silver80plus-bronze80plus-standard
グレードTITANIUMPLATINUMGOLDSILVERBRONZESTANDARD
負荷率10%90%以上-----
負荷率20%92%以上90%以上87%以上85%以上82%以上80%以上
負荷率50%94%以上92%以上90%以上88%以上85%以上80%以上
負荷率100%90%以上89%以上87%以上85%以上82%以上80%以上
80PLUS認証の電源は、BTOパソコンで最も採用されている規格だ。80PLUS認証は、交流入力から直流出力への電力変換効率が80%以上の製品に与えられる認証だ。それだけ電力変換効率がよく、安定しているという証明である。搭載されている電源の規格で変換効率が変わるのでそこも覚えておこう。ゲーミングPCで採用されることが多いのはPLATINUM・GOLD・BRONZEだ。PLATINUMになると89%以上の電源効率が実現できる。つまり、850W PLATINUMなら756Wの電源効率ということになる。電源負荷率が下がると90%以上の電源効率となる。

Cybenetics ETA認証

アイコンETA_DIAMONDETA_TITANIUMETA_PLATINUMETA_GOLDETA_SILVERETA_BRONZE
グレードDIAMONDTITANIUMPLATINUMGOLDSILVERBRONZE
変換効率93%以上   91%以上93%未満89%以上91%未満87%以上89%未満85%以上87%未満82%以上85%未満
力率(PF)0.985以上0.980以上0.975以上0.970以上0.960以上0.950以上
5VSB変換効率79%以上77%以上76%以上75%以上73%以上71%以上
待機電力0.10W未満0.13W未満0.16W未満0.19W未満0.22W未満0.25W未満
Cybenetics ETA認証は、80PLUSよりも細かく明確な規定がある。ETA認証は単体で表記されることは少なく、80PLUS GOLD認証、ETA Platinum認証と80PLUSも記載される。力率(PF)は供給された電力が、どの程度有効に働いているかの数値だ。1に近づくほど効率がよく、優れているということを示している。5VSB変換効率は、省電力系の機能にしようされる5VSB系統の変換効率を示している。これも数値が高いほどよく、概ね70%以上で優秀とされている。待機電力は電力が使用されていない間の待機電力だ。これも少ないほど優秀だが、そこまで気にするほどのものではない。

LAMBDA認証

アイコンAMBDA_A++AMBDA_A+AMBDA_AAMBDA_A-AMBDA_STANDARD++AMBDA_STANDARD+AMBDA_STANDARD
グレードA++A+AA-STANDARD++STANDARD+STANDARD
騒音レベル~15dBA   15dBA~20dBA20dBA~25dBA25dBA~30dBA30dBA~35dBA35dBA~40dBA40dBA~45dBA
感じる音の目安無音ほぼ無音通常では聞こえないほとんど聞こえない非常に小さく聞こえる非常に小さく聞こえる小さく聞こえる
具体例蝶の羽ばたき雪の降る音木の葉のふれあう音鉛筆での執筆音深夜の郊外図書館静かな住宅街の昼
LAMBDA認証は電力の変換効率ではなく、その電源の静音性の認証だ。LAMBDA認証単体ではなく、Cybenetics ETA認証GOLD、LAMBDA認証A+のようにセットで表記されている。パソコンの音の多くは電源のファンの音と言われている。高性能なモデルになるほど電源の稼働率は高くなるため、静音性を意識するならLAMBDA認証を受けた電源がいい。

ただし、BTOパソコンではLAMBDA認証を受けた電源を採用していることは稀だ。あっても表記されていないことがほとんどである。これはETA認証やLAMBDA認証は、80PLUS認証に比べてまだまだ市民権を得ていない。もう少し認知されるまでは知識として覚えておくといい。現時点では自作ユーザー向けの認証である。

電源ユニットの選び方と電源効率

電源効率を踏まえた電源選びが大切

前述の449Wのシステムの電源は何を選ぶべきだろうか。単純にシステムが449Wだからといって最小電源容量に近い500Wの電源を選ぶのは推奨できない。例えば500W 80PLUS BRONZEだった場合、100%負荷として82%の変化で410Wの変換になる。電力自体は足りていても、電力を変換するために必要な電力がオーバーしている。これにより電力のロスが発生し、処理が追いつかなくなると電源容量不足に陥る。不具合が発生してしまう可能性が高い。

G-Tuneの同性能帯のゲーミングPCで搭載されている電源ユニットは700W 80PLUS BRONZEである。この時の変換効率が82%の574Wだ。十分な容量が出ているのでロスの少ない電源となる。80PLUS STANDARDを除く規格は負荷率50%の状態が最も変換効率がよいと判断できる。負荷率50%が最も変換効率がよくなるということは、本来であれば449Wの2倍の容量が必要だ。もっとも、これではすぐにオーバースペックになってしまう。常に最高消費電力が掛かっているわけではないので、そこまで神経質にならなくてもよいだろう。

質の高い電源で寿命が延びる

消費電力と変換効率は省エネ具合に影響すると同時に、どれだけ効率よく電力を供給できているかの目安になる。BTOショップの場合は電力が足りているかのテストを必ず行っている。後はどこまで劣化を抑えられるかである。電源負荷率100%の状態が長く続くとダメージを受ける。

効率のよい50%に近づける意味でも、容量と規格は高いに越したことはない。消費電力450Wだったとする。500Wで対応すると90%の稼働率で負荷が高い。これが700Wになるだけで稼働率は約64%にまで下がる。負荷がかからないと変換効率も高くなり、寿命も長くなる。電源が重要視されるのはこういうことだ。

それを踏まえて、電源が足りているかいないかを判断してもらいたい。グラフィックボードやCPUを交換すると思いの外消費電力は上がってしまう。今の電源で容量が足りていなければ交換を視野に入れよう。また、消費電力は電気代とも深い関係があるのはすでに見てきたとおりだ。

当記事のまとめ

電源ユニットはゲーミングPCにおいて最も重要視されるパーツの一つだ。多くのユーザーが電源をカスタマイズしているのは、電源ユニットの重要性を理解していて少しでも不具合のリスクを下げたいと考えているからだろう。高負荷率の状態を長く続ければ老朽化も早まり、対応できる電力も徐々に下がってしまう。万が一不具合が発生しても、ユーザー自身はなかなか気付けないものだ。

電源ユニットの不具合は、ほとんどのケースで突然起こるからだ。昨日まで動いていたのに今日突然不具合が発生した。そこからでは電源ユニットの不具合になかなか辿り着けない。電源容量が多いことはマイナス要素ではない。カスタマイズや交換で少し余裕のあるものにするだけで不具合の発生率を抑えられる。

また、電源の不具合は交換以外で改善することがほとんどない。根本的に電力が足りていないことから不具合が起こるからだ。電源ユニットに不具合が発生していると察するだけで、交換にかかる費用が無駄にならない。原因が特定出来ないと不具合を起こしていないパーツまで買い替えてしまうだろう。

交換以外での対処は搭載しているパーツをいくつか外すしかない。消費電力の低いCPUやグラフィックボードに換装するということも選択肢に入る。いずれにしても現在の環境を維持できないのは痛い。それは応急処置程度に留めておきたい。故障を察知したらすぐに交換できるように予備を用意しておいてもよいかもしれない。

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