Core Ultra 9 275HXの性能比較&ベンチマーク検証を行っていく。モバイル向けArrow Lake世代のフラグシップモデルだ。デスクトップ向けモデルと同様に今世代からPコアのハイパースレッディングが廃止された。24コア(8Pコア+16Eコア)24スレッドというスペックだ。ゲーミングノートPCやクリエイターノートPCのハイエンドモデルで採用されることが多い。高解像度・高画質・高リフレッシュレートなどこだわりのゲーム環境を構築したいユーザー向けだ。搭載モデルは「Core Ultra 9 275HX搭載ゲーミングノートPC一覧」で紹介している。価格帯としては35万円以上となる。中には60万円を超えるモデルも販売されている。
Core Ultra 9 275HXの概要
コードネーム | Arrow Lake |
---|---|
プロセス | 3nm |
コア/スレッド数 | 24コア(8Pコア+16Eコア)/ 24スレッド |
Pコア定格/最大クロック | 2.7 GHz/ 5.4 GHz |
Eコア定格/最大クロック | 2.1 GHz/ 4.6 GHz |
L2キャッシュ | 40MB |
L3キャッシュ | 36MB |
内蔵GPU | Intel Graphics |
PBP | 55W |
MTP | 160W |
発売日 | 2025年01月13日 |
価格 | – |
特徴 (長所・短所) |
(+) モバイル向けハイエンドCPU (+) トップクラスのゲーム性能を持つ (+) ワットパフォーマンスが高い (-) 価格が高い (-) 搭載モデルが少ない |
評価 |
・総合評価 9.5 ・ゲーム評価 9.5 |
Core Ultra 9 275HXの基本スペック
Core Ultra 9 275HX | Core i9-14900HX | Ryzen 9 9955HX | |
---|---|---|---|
コードネーム | Arrow Lake | Raptor Lake-Refresh | Zen 5(Fire Range) |
プロセス(コンピュートタイル) | 3nm | 10nm | 4nm |
ダイサイズ | 243m㎡ | 257m㎡ | 2×70.6m㎡ |
トランジスタ数 | 178億 | – | 166.3億 |
グラフィックスタイルプロセス | 5nm | – | – |
SOCタイル | 6nm | – | – |
I/Oプロセス(I/Oタイル) | 6nm | – | 6nm |
I/Oダイサイズ | – | – | 122m㎡ |
I/Oトランジスタ数 | – | – | 34億 |
トータルコア(スレッド) | 24(8P+16E)/ 24 | 24(8P+16E)/ 32 | 16(16P+0E)/ 32 |
定格クロック(P) | 2.7GHz | 2.2GHz | 2.5GHz |
最大クロック(P) | 5.4GHz | 5.8GHz | 5.4GHz |
定格クロック(E) | 2.1GHz | 1.6GHz | 非搭載 |
最大クロック(E) | 4.6GHz | 4.1GHz | 非搭載 |
オーバークロック | 対応 | 対応 | 対応 |
L2キャッシュ | 40MB | 32MB | 16MB |
L3キャッシュ | 36MB | 36MB | 64MB |
対応メモリ | DDR5-6400 | DDR5-5600 DDR4-3200 |
DDR5-5600 |
内蔵グラフィックス | Intel Graphics | Intel UHD Graphics | Radeon 610M |
実行ユニット | 4(X-core) | 32 | 2 |
グラフィックス周波数 | 1.90GHz | 1.65GHz | 2.20GHz |
NPU | 13 TOPS | – | |
PBP | 55W | 55W | 55W |
MTP | 160W | 157W | 101W |
MSRP | – | – | – |
発売日 | 2025/01/13 | 2024/01/08 | 2025/01/06 |
Core Ultra 9 275HXはArrow Lake世代のモデルで複数のタイルを組み合わせたチップレット構造を採用している。複数のタイルを1パッケージにまとめる3D積層技術であるFoveros 3Dが適用となっている。コンピュートタイルは3nmで、旧世代のハイエンドモデルであるCore i9-14900HXが10nmプロセスだったので大幅に微細化されている。ダイサイズは5%小さくなっただけに留まる。これは内蔵グラフィックスなどで相殺されているようだ。グラフィックスタイルプロセスは5nm、SOCタイルとI/Oプロセスタイルは6nmとなる。
トータルコアは24コアと共通だが、トータルスレッドは32から24へと8基少なくなった。これはPコアのハイパースレッディングが廃止されたことによるものだ。IPCの改善によってカバーされている。Pコアの定格クロックは0.5GHz高い一方で、最大クロックは0.4GHz低い。Eコアは定格クロックが0.5GHz高く、最大クロックも0.5GHz高い。Core i9-14900HXと同様にオーバークロックをサポートしている。L2キャッシュは8MB増えて40MBだ。
対応メモリについてはDDR4のサポートが終了となりDDR5に統一されている。高クロックなモデル対応となる。内蔵グラフィックスはINtel UHD GraphicsからIntel Graphics(Xeアーキテクチャベース)へと変わった。実行ユニットは4基と控えめだ。グラフィックス周波数は1.90GHzだ。NPUは13 TOPSでCopilot+ PCの要件である40 TOPSには届いていない。dGPU搭載を想定していることからこれは仕方がない。PBPは55WでCore i9-14900HXと同等だ。MTPは少しだけ引き上げられて160Wとなっている。
競合のフラグシップモデルであるRyzen 9 9955HXと比較していく。Zen 5アーキテクチャを採用した新しいモデルだ。プロセスは4nmだ。Zen 5もチップレット構造を採用していて2つのダイを備える。Intelでいうコンピュートタイルが4nmで2基のCCXを搭載している。ダイサイズは141.2m㎡だ。トランジスタ数は166.3億となる。I/Oプロセスは6nmだ。ダイサイズは122m㎡で、トランジスタ数は34億だ。トータルのダイサイズは263.2m㎡でCore Ultra 9 275HXよりも10%弱大きい。
Ryzen 9 9955HXのコア・スレッドは16コア32スレッドだ。すべてPコア相当でクロック周波数は高めだ。定格クロックはCore Ultra 9 275HXの方が0.2GHz高く、最大クロックはどちらも5.4GHzだ。Ryzen 9 9955HXもオーバークロックをサポートしている。L2キャッシュは16MBとCore Ultra 9 275HXよりも24MB少ないが、L3キャッシュは38MBも多く64MBだ。対応メモリはDDR5-5600となる。内蔵グラフィックスはRadeon 610Mだ。実行ユニットは2基と少なく基本的にはdGPU依存となる。ここはCore Ultra 9 275HXと同じだ。PBPは55W、MTPは101Wとなる。

実はこのCore Ultra 9 275HXのArrow LakeとCore i9-14900HXのRaptor Lake世代の間に、Arrow Lake世代と同じFoveros 3Dパッケージング技術(チップレットベース)を採用したMeteor Lake世代がある。しかしながら、このMeteor Lake世代ではHXシリーズはリリースされなかった。Core Ultra 9 185HなどのHシリーズのみだったのだ。もしかしたらFoveros 3DパッケージングでTDPを引き上げるのに時間がかかったのかもしれない。ハイエンドモデルはRaptor Lake世代(Core i9-14900HX etc.)が担っていた。
Core Ultra 9 275HX搭載ゲーミングノートPCの性能と特徴
モバイル向けCPUとしてトップクラスの性能を誇る
Core Ultra 9 275HXの性能スコアは39,018と高い数値を出している。モバイル向けモデルとしてはRyzen 9 9955HXに次いでトップクラスだ。従来モデルのCore i9-14900HXよりも15%弱も性能が向上している。ゲーミングノートPCでも妥協したくないというユーザーにおすすめだ。デスクトップ向けモデルで言えばCore Ultra 7 265Kが近い。
スペック的には24コア24スレッドと20コア20スレッドなのでCore Ultra 9 275HXの方が有利だ。Core Ultra 7 265も電力制限を解除してPL1=PL2=250WにするとCore Ultra 7 265Kに近い性能を得られる。ゲーム適性も高くRyzen 9 9955HXと同等以上だと考えてよいだろう。ハイエンドのグラフィックボードとの組み合わせでもパフォーマンスを引き出しやすい。高リフレッシュレートでのゲームプレイを考えるなら魅力的なモデルだ。グレード的にディスプレイもWQHD以上を搭載したモデルがほとんどで迫力のあるゲーム映像を体感できる。
ワットパフォーマンスはまずまず
製品名 | ゲーム平均 | ゲーム最大 | アイドル平均 |
---|---|---|---|
Ryzen 9 9955HX | 44.7W | 114.8W | 12.1W |
Core Ultra 9 275HX | 39.6W | 103.3W | 8.5W |
Core i7-14650HX | 57.9W | 70.4W | 9.1W |
FF14のベンチマーク計測時の各CPUの消費電力をまとめている。ゲームプレイ時の平均消費電力・ゲームプレイ時の最大消費電力そしてアイドル時の平均消費電力の3つだ。Core Ultra 9 275HXのゲーム平均は39.6WでRyzen 9 9950HXよりも12%低い。また、ゲーム最大も103.3WとRyzen 9 9955HXよりも10%抑えられていることがわかる。ゲーム性能は同等と言えるのでワットパフォーマンスはCore Ultra 9 275HXが優勢だ。前世代のCore 7-14650HXと比べても平均は30%以上も低く省電力性の高さが光る。
国内メーカーでも取り扱いがある
ドスパラやマウスコンピューターといった国内BTOメーカーでもCore Ultra 9 275HXを搭載したモデルが販売されている。数世代前までは国内メーカーではハイエンドモデルのラインナップが極端に少なかったように思う。組み合わせるグラフィックボードもGeForce RTX 5090 Mobile・GeForce RTX 5080 Mobile・GeForce RTX 5070 Ti Mobileなどハイクラス以上が定番だ。メモリやストレージなどの構成や競合モデルであるRyzen 9 9955HX搭載モデルよりも価格は高く設定されている。Core Ultra 9 275HX搭載モデルの購入を考えているなら40万円程度の予算を確保しておくとよい。
Core Ultra 9 275HXのベンチマーク一覧
Cinebench R23
Cinebench R23でのマルチコアは32,929で、シングルコアは2,074と高い。競合のAMD製Ryzen 9 9955HXと比べるとマルチコアが4%弱、シングルコアは3%弱低くなっている。従来モデルのCore i9-14900HXと比べるとマルチコアが7%高くなっているが、シングルコアは7%低くなっている。デスクトップ向けのCore Ultra 7 265Kと比べるとマルチコアが7%低く、シングルコアも9%程度低い。TDPが高い分だけデスクトップ向けモデルは有利だ。
Cinebench 2024
Cinebench 2024は次世代のレンダリングベンチマークツールだ。Ryzen 9 9955HXよりもマルチコアが2%弱、シングルコアが3%高くなっている。従来モデルのCore i9-14900HXと比べるとマルチコアが27%高く、シングルコアも3%高くなっている。スレッド数が8つ減ったにも関わらずこれだけマルチコア性能が向上しているのは素晴らしい。デスクトップ向けのCore Ultra 7 265Kと比べるとマルチコア性能は1%高く、シングルコアは3%低くなっている。十分健闘しているといえるだろう。
Blender
BlenderではRyzen 9 9955HXにわずかに届かなかった。スコアは4%弱低く533.28だ。monsterでのスコア差が6%ともっとも大きい。次いでclassroom、junkshopと続く。従来モデルのCore i9-14900HXと比べると33%もスコアが高く大きく向上していることがわかる。下位モデルのCore Ultra 7 255HXと比べても40%近くも高い。Core Ultra 7 265Kとの性能差は9%と大きい。コア数の多さがプラスに働いているのかもしれない。
Handbrake
HandbrakeではRyzen 9 9955HXとおおよそ同等のパフォーマンスを得られている。デスクトップ向けのCore Ultra 7 275KはCore Ultra 9 275HXよりも7%-40%程度高速だ。やはりデスクトップ向けCPUは強力だ。それでも従来モデルのCore i9-14900HXと比べるとH.265で15%速く、H.264でも4%速くなっていることがわかる。
7-Zip
Zipファイルの展開及び圧縮速度を計測している。競合のRyzen 9 9955HXと比べると展開速度が16%遅く、圧縮速度も12%遅くなっている。前世代のCore i9-14900HXと比べると展開速度が9%弱速く、圧縮速度も9%弱速くなっている。1世代飛ばしたモデルということを考えると物足りなさがあるのも事実だ。デスクトップ向けのCore Ultra 7 265Kと比べると展開速度が15%弱速く、圧縮速度も6%速くなっている。そこまで悪くない結果であるように思う。
Adobe Photoshop
PugetBenchを活用してベンチマークスコアを計測した。Core Ultra 9 275HXのスコアは8,855となる。従来モデルのCore i9-14900HXよりも5%弱高くなっている。競合のRyzen 9 9955HXと比べると5%程度低い。Core Ultra 7 265KやRyzen 9 9950X3Dなどデスクトップ向けモデルとの差は大きく20%以上だ。
Core Ultra 9 275HX搭載ゲーミングノートPC一覧
AORUS ELITE 16 BWHC3JPC94SH (GIGABYTE)
価格:370,000円(送料込)
液晶:16.0インチWQXGA 165Hz
重量:約3.00kg
CPU:Core Ultra 9 275HX
GPU:GeForce RTX 5070 Mobile
メモリ:DDR5-5600 16GB
ストレージ:SSD 1TB Gen5 NVMe
電源:240W ACアダプター
コスパ:調査中
16.0インチWQXGAディスプレイを搭載したゲーミングノートPCだ。165Hzと高リフレッシュレートに対応している。GPUにハイクラスのGeForce RTX 5070 Mobileを搭載してて高いゲーム性能を持つ。最大消費電力は115Wに設定されていてGeForce RTX 5070 Mobileの最大限のパフォーマンスを引き出せる。Core Ultra 9 275HXとのバランスも良好だ。メモリDDR5-5600 16GB・SSD 1TB NVMe Gen5と充実した構成を持つ。Gen5接続のSSDは驚きだ。電源は240W ACアダプター付属となる。
G TUNE H6-I9G7TBK-C (マウスコンピューター)
価格:399,800円(送料込)
液晶:16.0インチWQXGA 300Hz
重量:約2.58kg
CPU:Core Ultra 9 275HX
GPU:GeForce RTX 5070 Ti Mobile
メモリ:DDR5-5600 32GB
ストレージ:SSD 1TB Gen4 NVMe
電源:330W ACアダプター
コスパ:7.2
16.0インチWQXGAディスプレイを搭載したゲーミングノートPCだ。WQXGAディスプレイ(300Hz対応)を搭載していてデスクトップパソコンと変わらないゲーム体験を得られる。構成はメモリDDR5-5600 32GB・SSD 1TB Gen4 NVMeと充実している。電源は330W ACアダプター付属だ。大容量電源搭載は高いGPU性能を表している。
GALLERIA UL9C-R59-8A 台数限定特価モデル(ドスパラ)
価格:619,980円+送料3,300円
液晶:18.0インチWQXGA 240Hz
重量:約4.00kg
CPU:Core Ultra 9 275HX
GPU:GeForce RTX 5090 Mobile
メモリ:DDR5 64GB
ストレージ:SSD 2TB Gen5 NVMe
電源:330W ACアダプター
コスパ:調査中
国内大手BTOメーカーであるドスパラが誇るフラグシップモデルだ。Core Ultra 9 275HX×GeForce RTX 5090 Mobileを搭載している。国産メーカーではかなり珍しい構成だ。GeForce RTX 5090 Mobile搭載モデルが希少だ。18.0インチWQXGA(2560×1600)ディスプレイを存分に活かせるだろう。メモリはDDR5 64GBと抜群だ。これだけの容量を持つゲーミングノートPCは素晴らしい。ストレージもSSD 2TB Gen5 NVMeとなる。Gen 5接続で快適にPC作業が行える。電源は330W ACアダプター付属で余裕がある。本体重量は約4.00kgと重量級だ。据え置きモデルとして考えるべきだろう。
Vector-17-HX-AI-A2XWJG-4850JP (MSI)
価格:638,800円(送料込)
液晶:17.0インチWQXGA 240Hz
重量:約3.00kg
CPU:Core Ultra 9 275HX
GPU:GeForce RTX 5090 Mobile
メモリ:DDR5-5600 64GB
ストレージ:SSD 1TB Gen4 NVMe
電源:330W ACアダプター
コスパ:調査中
当ページで紹介しているモデルの中でもっとも高価な一台となる。基本的にはドスパラのGALLERIA UL9C-R59-8Aとニているが、液晶が17.0インチWQXGAディスプレイとなる。リフレッシュレートは240Hz対応だ。本体重量は約3.00kgと重い。GPUは175W(Dynamic Boost 2.0有効時)に設定されていて高い処理性能を持つ。電源が330W ACアダプターであることからもわかるはずだ。Core Ultra 9 275HXとの組み合わせはベストに近い。メモリDDR5-5600 64GB・SSD 1TB Gen4 NVMeと抜群だ。予算が潤沢にあり性能面で妥協をしたくないゲーマー向けといえる。
ベンチマークテスト環境
モデル | G TUNE H6-I9G7TBK-C(レビュー) |
---|---|
ディスプレイ | 16.0インチWQXGA 300Hz |
CPU | Core Ultra 9 275HX |
GPU | Nvidia GeForce RTX 5070 Ti Laptop |
メモリ | DDR5-5600 32GB |
ストレージ | SSD 1TB Gen4 NVMe |