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昨今、PvP(対人)系のオンラインゲームが何かと話題に挙がる。それは明るい話題ばかりではない。少し前にあるプロゲーマーのスマーフやブースティングが問題視されたことがある。

ここではスマーフとブースティングを中心に様々な不正行為についても考察していくつもりだ。これからオンラインゲームを本格的にプレイしたいと考えている方は一通り目を通しておくとよいだろう

スマーフとは

スマーフとは、「高レートのプレイヤーが低レートのサブアカウントなどを使い実力が下のユーザーを蹂躙すること」だ。

ブースティングとは

ブースティングとは「高レートのユーザーが低レートのユーザーに協力してレートを上げるのを手伝うこと」である。ブースティングはMMORPGで言うところのトレインに近い。

スマーフとブースティングについて

スマーフとブースティングの問題点

スマーフ及びブースティングの問題点についてまとめていく。スマーフ自体はハラス(嫌がらせ)目的もあるが、ブースティングと相性のよい不正で同時に行われることがある。ブースティングはスマーフと一緒に行われることがあると同時に、別の問題とも重なりやすい。ブースティング単体ではそもそも問題として発覚しにくいのだ。

例えば、昨今話題に挙がったFPSでのブースティングの方法は分かりやすいもので2種類ある。1つが高レートの上手いプレイヤーが低レートのプレイヤーのアカウントを借りて操作するというものだ。アカウントの共有はどのゲームタイトルでも不正やトラブルに発展しやすいので禁止である。これはプレイヤー自身が宣言しない限り表沙汰になりにくい。

オンラインに限らずとあるコンシューマーゲームでも育成代行というサービスが問題になった。金銭授受が発生するケースもあるので、なおのこと表沙汰になりにくい。不正をしていますと高らかに宣言するユーザーはいないからだ。

もう1つの問題はこのブースティングをより容易に行うために、スマーフを同時に行うところにある。PvPのレートは単純なもので、勝ったら上がり負けたら下がる。相手の強さで増減の幅が変わるものもある。共通しているのは勝てばレートが上がっていくということだ。つまり、対戦する相手が自分よりも弱ければレートを上げやすくなる。ここで登場するのがスマーフである。

レートを上げたい低レートのプレイヤーに協力して、高レートのプレイヤーがサブアカウントを作成する。新規のアカウントであるため、サブアカウントにはレートが付かない。つまり最低レートになる。FPSは5:5の対戦が多く、この5人のレートを総合して、近いレートのチームと対戦するシステムが一般的である。低レート1人、最低レート4人で試合を開始すると、多くの場合、対戦相手のチームメンバーは初心者になる。

中身が高レートのプレイヤーであるなら、初心者を4人で倒すことは全く難しくない。肝は中身が高レートのプレイヤーだけで相手チームを倒せるかどうかだ。勝利することでプレイヤー全員のレートが上昇するので、まず勝てる相手と戦うことが重要になる。そのためのサブアカウントだ。普段使用しているアカウントよりもレートの低いアカウントを用いることで、実力が下のチームと戦うことができる。

スマーフによって相手を蹂躙することに快感を見出すプレイヤーも多い。迷惑を被るのはスマーフでレートを偽装したチームと戦った相手だ。本来当たるはずのない上級者と対戦したばかりに不当にレートを下げられてしまう。蹂躙する方は野良感覚で楽しめるかもしれないが、対戦相手からするとチーターと戦っているように感じるかもしれない。IP BANのないゲームではサブアカウントを通報してBANにしてもダメージはない。端的にまとめると、昔からある初心者狩りに手間を加えたものだ。

スマーフとブースティングの歴史

ここまで問題になっているのは、FPSを始め競技性の高いゲームがエンターテイメントとして、e-Sportsとして認知されてきたからだろう。少し前まで、マナーやモラルという問題にすらなっていなかった。むしろFPS界隈ではスマーフは当然のように行われていたように思う。それはシステムが今ほど便利ではなかったことも影響している。

その昔、サドンアタック(以下SA)という基本無料のFPSがあった。SAには後半までマッチングシステムというものがなく、ロビーでクラン戦を呼びかけ、合意したら部屋に入って対戦するという形式が採用されていた。その時の募集は「5:5 50前後」「6:6 40前後」など、人数と勝率を添えて募集を掛ける。この時、勝率50前後で募集したのに来たクランの勝率が60%なら話が違うということで解散になる。

本来のメンバーでは勝率60%でも、即席の面子で50前後の実力しかない場合は対戦するのが難しいシステムだった。そこで登場するのがサブアカウントとサブクランだ。メンバーを固定しているクランとは別に、自由に出入りできるサブクランを作り、同時にクラン戦専用のサブアカウントも用意する。これで50%前後の勝率でクラン戦を行うことができる。それと同時に、スマーフと呼ばれるものが登場してきた。

クランは確かに勝率50%前後だが、プレイヤーのランクは低く成績が異常に高い。中身は有名なプレイヤーだったり、大会常連だったりもした。本来のチームでは強さを周知し過ぎていて対戦してもらえないので、有名なプレイヤーなどもサブアカウントで活動し始めた。そして、それと同時にチートも蔓延を始める。結局強いプレイヤーなのかチーターなのか分からなくなる。

そこから「ある程度自信のあった自分たちが一方的に負けた。相手はチートに違いない」という発想になり、誤BAN騒動にまで発展した。CS:GOでは、一定の階級まではMM(SAで言うところのクラン戦のようなもの)が1日3回しかできない。勝ち負けでランクが決定されるので、高レートの自分たちに混ざると強い相手と当たるのでかわいそうだ。

それなら、新規ユーザーに合わせて新規アカウントを作ろうとなり、新規ユーザーに合わせるためだけのアカウントが登場する。これもスマーフやブースティングとなるだろう。こちらの都合だけを考えて行動すると、他のプレイヤーに迷惑が掛かるだけでなく禁止行為に該当することもある。善し悪しの判断は自分でなく、ゲームの規約に則るという当然のことをしていれば何も問題はない。

ただ、突如禁止となることがあるので不正かもしれないと思ったらすぐに辞めるべきだ。もっとも、不正と分かって不正を行っているユーザーは大多数とは言えないはずだ。サードパーティツールを用いた不正はチートとして別格の不正だが、ゲーム内のシステムを考慮した工夫と考えているかもしれない。

スマーフとブースティングの背景

スマーフとブースティングにある背景は、マッチングシステムの欠陥やゲームのセキュリティの問題もある。SAを含む基本無料系のFPSはマッチングシステムがシンプル過ぎて最後まで主流のマッチングの手段にはならなかった。SAの場合はクランの勝率を重視しているため、クランを作り直したりサブクランを使用することでスマーフ行為が容易にできる。

また、作成したばかりのクランに関しては初戦を勝ってしまうと勝率100%でカウントされ、次戦は強豪クランと当たってしまう。ロビーチャットでの合意では、チーターやチートを使用するクランを避けることはできても、オートマッチングではそれを避けることができない。結局マッチングシステムはチーターや不正行為を行うユーザーが溢れてしまい、受け入れられなくなった。

CS:GOではあまりにチーターとの装具率が高いことから、FACEITやESEAのような外部マッチングサイトが活用されている。もちろん、外部マッチングサイトでも遭遇しないわけではないが、遭遇率は明らかに下がる。公式のマッチングではあまりにも遭遇することから、スマーフなのかチーターなのか本当に区別がつかない。ただただやる気だけが削がれていく。

今VALORANTが最も勢いのあるFPSと言われる所以は、対チーター対策が非常に上手くいっているからだ。同時アクセス数ではまだまだCS:GO におよばないながら、国内に限定すればCS:GO を超えているように思う。もちろん、優れたゲーム性も相まってのことである。最新のゲームではマッチングシステムがある程度完成されているので、スマーフやブースティングがポピュラーになりにくい。

チーターの数が少ないことから、スマーフがブースティングが目立つというのもある。VALORANTはその点では期待できる。ブースティングには下げランと呼ばれるものもある。一般的なブースティングとは逆に、自分のランクを下げる行為だ。一種のスマーフであり、ブースティングであるこの行為は「勝敗を予め決めて対戦する」ので下記のアビューズに関連していることもある。

このスマーフやブースティングは連鎖が始まる。強い相手を避けて、勝てる相手と試合がしたいという欲求から来ている。試合をコントロールし、圧勝するのが楽しいのだろう。自分より明らかな格上の相手との試合は学ぶことはあっても楽しいものではない。より適した相手と戦うために下げランが始まる。スマーフとブースティングはマッチングのシステムを崩壊させるだけでなく、プレイヤーの数を減らしてしまう要因にもなる。

特にFPSはそのゲームの性質上、ピリピリした空気になりやすい。煽るような行為や非マナー行為の積み重ねに嫌気が差すプレイヤーも多いはずだ。スマーフとブースティングが発生するのは、一部のプレイヤーのモラルやマナーから始まっている。また、スマーフやブースティングを問題視していない層もある。少し前までは、楽しむための手段の一つだったからだ。

禁止行為というのは、もっと明確にはっきりと示すべきだとも思う。とあるFPSで問題が指摘されていたプロゲーマーは認識していたかもしれない。しかし、認識していないプレイヤーもまだ多い。チートは違反だと知っていても、こういった行為が禁止だとは思ってもいないことだろう。今回、大々的に違反行為と公開されたことで周知されたはずだ。禁止行為についてはもっと周知させていく必要がある。

その他の不正行為

アビューズ行為

アビュース行為は非常に容易に行える不正の一つだ。対人系のゲームではよくあるもので、1試合をすぐに終わらせてポイントや経験値を効率よく得ようとするものだ。SAではルートを指定した特攻部屋などがそれに該当していた。進行ルートを試合前に決めて、そのルートを止まらずに突き進む。全員が撃ちまくりながら進むので本来1試合最大27分掛かるところが、最大2分程度で終わる。

こういうルートや勝敗の談合はアビューズ行為として取り締まられる。とあるMMORPGでもこれは問題となった。基本はPvEだが、一部PvPコンテンツがある。そのコンテンツは20:20で勝利するとポイントが貯まり、非常に優秀な装備と交換できるものだった。ただ、上手い人が固まって入るとどうしても勝てない。10人でパーティーを組めば確実に同じチームになるのでなかなか勝てない。

上手い人と同じパーティーになるために、ゲーム内通貨で権利を買うという行為も見受けられた。そこで、勝てないプレイヤーは11人パーティーを2つ作った。同時にPvP開始ボタンを押すと必ず敵同士になる。そして、最大20人のチームなので上手い人たちの10人パーティーが入れない。そして試合開始とともに降参してポイントを稼ぐ。

過半数の11人がいるので他のプレイヤーに関係なく勝敗が一瞬で決する。これを交互にして多くのポイントを稼ぎ、レアだったPvP装備が標準装備レベルにまで普及し、初心者までPvP装備を持っていたほどだ。この不正は問題視され、10分経つまで降参ができなくなるなどのシステム変更が成され、いつしか行われなくなった。

これも勝敗の談合を行っているのでアビューズ行為である。装備やポイントを牛耳る一部のプレイヤーに対抗するための手段が不正行為になる。なんとも皮肉な話である。

バグや不具合の不正利用

禁止行為に該当していない禁止行為もある。これは、運営側が想定していないバグや不具合を利用した際に適用される。アビューズ行為同様に、正規の手順以外でのゲームの進行も該当する。有名なところではバグがそうだ。運営や開発のミスであっても、バグだと理解した上で本来得られない恩恵を得ることは、バグの不正利用として罰則を受けることもある。

MMORPGでは割とあるが、FPSでもバグの不正利用は度々確認できている。SAのように、負荷の軽い基本無料系のFPSではテクスチャが貼られていない箇所がある。それをトーテム(人の上に人を載せる)などを利用して、本来行けない場所に行くことでマップ全体を見渡すことができることがあった。結局これはバグの不正利用となるので禁止行為になったものの、ゲーム側での対処はなく、ユーザーのモラルの問題に留まった。

ゲームの進行を大きく変える要素であるにも関わらず、修正されることのなかったバグである。治らないバグと使っても罰則を受けない行為から徐々に広がってしまった。これにより、その人気だったマップは大会で選ばれなくなった。この辺りはすぐに問題が修正される現在のオンラインFPSではありえないことだ。

ゲームの要求スペックの向上よりも、パソコンスペックやコンシューマーゲーム機のスペックが向上したことの恩恵である。ある程度負荷の増大する高解像度のテクスチャを用いても対応できる。それこそ、負荷の軽さで有名なフォートナイトも昔の基準で考えるとウルトラハイエンドだ。

時代に合わせて進化したゲームにより、これまで問題視されてきたことが問題でなくなった。同時に、誰にでも遊べる環境となったことで、スマーフやブースティングといった新たな問題を生み出しているようにも思う。

アカウントの共有

ブースティングの項で少し触れたアカウントの共有についてもう少し詳しく掘り下げていく。どのゲームでも基本的にアカウントの共有は家族間であっても禁止されている。制限付きながら許されているのはSteamのファミリーライブラリシェアリングくらいだろうか。これはアカウントに関するトラブルが多いからだ。アカウントを共有していることで起こることもあるだろう。

それこそ、クレジットカードを登録しているゲームでは、リアルマネーが関連してくることも考えられる。googleやyahooなどのアカウントで簡易登録していると、それらのアカウントも関連して引っ張られることになる。クレジットカードや他サイトにアクセスすることもできる。個人情報を抜かれるとオンライン以外でも実害を被る可能性まで出てくる。

安心、安全にインターネットを利用するためにもアカウントの共有は大体のゲームが禁止している。もっとも、これはゲームだけに限らない。例えばNetflixやHuluなどのサブスクでも、家庭内でのみの共有を許しているに留まる。サブアカウントを幾つか作ることができても、それを管理できるように家庭内に留めるように記載されている。

それだけトラブルに発展しやすいので先に釘を打っている形だ。一時は面倒なクエストや反復して敵を倒すような任務をゲーム内通貨で依頼することがポピュラーだったゲームもある。システムでそうなっているのではなく、一部のランカーがランクを維持するためにアカウントを共有していた。

当時はそれについてアルバイトという表現を使っていたこともあり、禁止行為や違反行為であることを認知しているユーザーはそれほど多くなかったように感じる。運営が禁止行為である旨の告知を出すまでは、全体チャットで募集を掛けていたくらいだ。

RMT(リアルマネートレード)

MMORPGを始め、今ではどのゲームにも存在すると言われるRMTは有名だろう。Steamでは一部のアイテムを出品・購入ができる。これもRMTと言えばそうだが、公式での取引は許可されているタイトルもある。しかしながら、基本的にRMTは禁止行為となっている。そのため、最近のMMORPGでは装備やアイテムはそもそもトレード不可であることが多い。

その分だけレアな装備が比較的入手しやすくなり、全体的な難易度も下がっているように思う。入手できるアイテムをある程度制限しないことでクリアが容易になったからだろうか。レアな装備やアイテム自体が存在せず、強化の数値が全てになっている。これはオンラインゲームでありながら、どこかソロゲームのような侘しさを感じる。

時代の変化ではなく、不正を生業とする業者の存在により、自由であったはずのゲームに制限が加わった。MMORPGの衰退は、こういった部分が大きいのかもしれない。P UBGのスキンがトレードできなくなったのも、スキンを賭けるギャンブルサイトの存在によるものだ。CS:GOには未だにギャンブルサイトが存在し、高価なスキンをBETしている。これにより、市場は活発化している反面、RMTに繋がる要素としてチーターが増えた。

CS:GOのチーター問題はギャンブルサイトを禁止しない限り減ることはなさそうだ。もっとも、ギャンブルという市場が確立している今、禁止してしまうとCS:GOというゲームが終わってしまう可能性すらある。RMTが活発なゲームは人気がある証拠とも言われていた。RMTできないシステムにしても、業者は様々な手法で入り込んでいる。

それぞれのプレイスタイルを尊重したいが、禁止されているRMTを使用することは辞めてほしい。一人一人が利用しなくなれば、もっと平和で安全で楽しいゲームになる。金策が課金しかないようなゲームではRMTが横行しているように感じる。これはゲームバランスも影響しているということだ。

ただ、それ自体はRMT対策から始まっているかもしれないので、卵が先か鶏が先かの論争にしかならない。心情的にはRMTを利用したいと思う気持ちも分かる。ただ、それはオフラインゲームのチートのようなもので、ゲームの面白さややる気を削いでいく行為だ。誰のためにもならない不正行為はやるメリットがない。

ゲーム毎にルールを確認しておく

これらの禁止行為は一般的なものであり、ゲームによっては特殊な禁止行為というものがある。例えば、サードパーティツールにゲームパッドが該当するものもある。操作がしやすいようにゲームパッドを接続しても認識しない、認識するようにツールを使用すると不正行為になるというものだ。

快適なゲーム環境を構築するつもりが、いつの間にか不正行為を行っているかもしれない。ゲーム毎のルールやマナーはある程度確認しておきたい。昔と違い、ゲーム毎にユーザーの環境に差異を持たせないようにしているタイトルもある。USBヘッドホンがセキュリティに引っ掛かった事例もある。不正な行いをするつもりはなくても、一方的にそう判断されることは多々ある。

オンラインゲームの場合、セキュリティに引っかかるとチートや不正と判断される。そうなると誤BANされる可能性もある。一度BANされると二度と復旧できないこともある。BANには期間指定のものから、永久に戻らないものまである。また、IP BANというものはアカウントではなく接続先に対して行うBANである。非常に重いものでは引っ越ししても使用するクレジットカードなどの情報が一致すると登録できない。

誤BANは期間指定のものになりやすが、ゲームのシステムで永久BANしかないタイトルではその限りではない。何にしても、知らなかったでは通らない。規約やルールはオンライン上の法律である。それを破っているうちは、どうなっても保証はない。

最後に

スマーフやブースティングという行為が周知されたことで、不正行為というものを初めて知ったユーザーも多いはずだ。ゲーム内での行いが現実世界の罰則に繋がることは稀である。しかし、ゲーム内での行いがゲーム内での罰則に繋がることは多々ある。暴言や恐喝めいた発言はBAN対象になるなど、非マナー行為自体が迷惑行為と捉えられる。

ゲームを快適に、そして安全に遊ぶなら非常にシンプルだ。禁止されていることをしない。ただこれだけのことである。皆やっているからと、合わせて行動することはそれだけでリスクになる。禁止行為を行うということは、常にBANされる可能性があるということだ。どんな小さなことでも、BANされる可能性があることは避けるべきだ。ゲームは安全に、健全に楽しめてこそである。