Core Ultra 9 185Hの性能比較&ベンチマーク検証を行っていく。Meteor Lake世代におけるフラグシップモデルだ。コア・スレッドは16コア22スレッドと下位モデルのCore Ultra 7 155Hと同じだが、より高いクロック周波数を実現していて高いパフォーマンスを発揮する。Core i9-13900Hの後継モデルで14コア20スレッドから2コア2スレッドだけ増えている。今世代からPコアとEコアに加えてより省電力性の高いLPEコア(低電力Eコア)が追加された。このLPEコアが2コア増えた形だ。
コアの種類が2つから3つに増えたことで呼び方がこれまでのハイブリッドコアアーキテクチャではなく3Dパフォーマンスハイブリッドアーキテクチャへと変わった。今世代からAMDと同様にチップレット構造を採用して進化が続く。複数のダイを組み合わせることでコスト面及び省電力性の面で有利になる。性能的には従来モデルのCore i9-13900Hとそこまで変わらないか少し劣ってしまう。搭載ゲーミングPCは「Core Ultra 9 185H搭載ゲーミングノートPC一覧」で紹介している。海外メーカーが中心で国内BTOメーカーでの取り扱いはない。国内メーカーではIntel第14世代や第13世代CPUが主流となっている。そこまで人気のモデルとはいえなさそうだ。
当ページの目次
Core Ultra 9 185Hの概要
コードネーム | Meteor Lake |
---|---|
プロセス | 7nm |
コア/スレッド数 | 16コア(6Pコア+8Eコア+2LEコア)/ 22スレッド |
Pコア定格/最大クロック | 2.3 GHz/ 5.1 GHz |
Eコア定格/最大クロック | 1.8 GHz/ 3.8 GHz |
LEコア定格/最大クロック | 1.0 GHz/ 2.5 GHz |
L2キャッシュ | 24MB |
L3キャッシュ | 36MB |
内蔵GPU | Intel Arc Graphics |
PBP | 45W |
MTP | 115W |
発売日 | 2023年12月14日 |
価格 | $640 |
特徴 | (+) Meteor Lake世代のフラグシップモデル (+) 16コア22スレッドとスペックが高い (+) 最大クロックは5.1GHzに到達している (+) 省電力性が高い (-) 搭載モデルの価格が高い (-) ラインナップが少なく選択肢がない |
評価 | ・総合評価 8.0 ・ゲーム評価 8.0 |
Core Ultra 9 185Hの基本スペック
Intel製CPUと比較
Core Ultra 9 185H | Core Ultra 7 155H | Core i9-13900H | |
---|---|---|---|
コードネーム | Meteor Lake | Meteor Lake | Raptor Lake |
プロセス (コンピュートタイル) | 7nm | 7nm | 10nm |
SoCタイル | 6nm | 6nm | - |
I/Oタイル | 6nm | 6nm | - |
グラフィックスタイル | 5nm | 5nm | - |
トータルコア(スレッド) | 16(6P+8E+2LPE)/22 | 16(6P+8E+2LPE)/22 | 14(6P+8E)/20 |
定格クロック(P) | 2.3GHz | 1.4GHz | 2.6GHz |
最大クロック(P) | 5.1GHz | 4.8GHz | 5.4GHz |
定格クロック(E) | 1.8GHz | 0.9GHz | 1.9GHz |
最大クロック(E) | 3.8GHz | 3.8GHz | 4.1GHz |
定格クロック(LPE) | 1.0GHz | 0.7GHz | - |
最大クロック(LPE) | 2.5GHz | 2.5GHz | - |
オーバークロック | × | × | × |
L2キャッシュ | 不明 | 不明 | 20MB |
L3キャッシュ | 24MB | 24MB | 24MB |
対応メモリ | DDR5-5600 LPDDR5x-7467 | DDR5-5600 LPDDR5x-7467 | DDR5-5200 DDR4-3200 LPDDR5x-6400 LPDDR4x-4267 |
内蔵グラフィックス | Arc Graphics | Arc Graphics | Iris Xe Graphics |
実行ユニット | 8 | 8 | 96 |
グラフィックス周波数 | 2.35GHz | 2.25GHz | 1.50GHz |
PBP | 45W | 28W | 45W |
MTP | 115W | 115W | 115W |
MSRP | $640 | $503 | $617 |
搭載モデル価格 | 312,980円~ (RTX 4060M) | 212,980円~ (RTX 4060M) | - |
発売日 | 2023/12/14 | 2023/12/14 | 2023/01/04 |
Core Ultra 9 185Hのスペックについて見ていこう。比較対象は1世代前のCore i9-13900Hだ。Raptora Lake世代のモデルでプロセスは10nmだ。Core Ultra 9 185Hのようなチップレット構造は採用しておらず1つのダイで構成されるモノリシック構造だ。6つのPコアと8つのEコアを搭載していて14コア20スレッドというスペックを持つ。Core Ultra 9 185HではLPEコアが追加され16コア22スレッドとなる。
クロック周波数を見るとPコアもEコアも引き下げられていることがわかる。Pコアは定格クロック・最大クロックがそれぞれ0.3GHz低い。Eコアも定格クロックが0.1GHz低く、最大クロックも0.3GHz低い。Core Ultra 9 185Hに搭載されているLPEコアは定格が1.0GHz・最大が2.5GHzと低めに抑えられている。両モデルともオーバークロックには対応していない。
Core i9-13900HのL2キャッシュは20MBだ。Core Ultra 9 185Hは不明だが、同程度ではないかと思う。L3キャッシュは24MBと同等だ。メモリ周りが大きく変わった。Meteor Lake世代ではDDR4をサポートしておらず、DDR5-5600/LPDDR5x-7467となる。コスト的にはCore i9-13900Hの方が扱いやすいかもしれない。
内臓GPUはIris Xe GraphicsからArc Graphicsへと進化している。実行ユニットおよびグラフィック周波数は大きく異なるが、そもそもGPUのアーキテクチャが異なるため純粋な比較は難しい。PBPは45W・MTPは115Wと共通だ。MSRPはCore i9-13900Hから$23アップで$640となる。搭載モデルの価格は312,980円~だ。Core i9-13900Hを搭載したモデルは販売されていない。
下位モデルのCore Ultra 7 155Hとは共通点が多い。当然アーキテクチャは同じで複数のタイルを組み合わせたチップレット構造を採用している。16コア22スレッドも共通だ。大きく異なるのは各コアのクロック周波数とPBPだ。その他小さいところだと内臓GPUのグラフィック周波数が該当する。
Pコアの定格は0.9GHz高く、最大も0.9GHz高い。Eコアは定格が0.9GHz高いが、最大は同じだ。LPEコアについても定格が0.3GHz高いが、最大は変わらない。クロック周波数が高いこともあってPBPが60%高く45Wとなっている。価格差は$137だ。搭載モデルの価格は100,000円の差がある。もちろんメーカーや構成などの違いがあるので参考程度に留めておいてほしい。
AMD製CPUと比較
Core Ultra 9 185H | Ryzen 9 8945HS | |
---|---|---|
コードネーム | Meteor Lake | Zen 4 (Hawk Point) |
トランジスタ数 | - | 250億 |
プロセス | 7nm | 4nm |
ダイサイズ | - | 178 mm² |
トータルコア(スレッド) | 16(6P+8E+2LE)/22 | 8/16 |
定格クロック(P) | 2.3GHz | 4.0GHz |
最大クロック(P) | 5.1GHz | 5.2GHz |
定格クロック(E) | 1.8GHz | - |
最大クロック(E) | 3.8GHz | - |
定格クロック(LE) | 1.0GHz | - |
最大クロック(LE) | 2.5GHz | - |
オーバークロック | × | × |
L2キャッシュ | 不明 | 8MB |
L3キャッシュ | 24MB | 16MB |
対応メモリ | DDR5-5600 LPDDR5x-7467 | DDR5-5600 LPDDR5x-7500 |
内蔵グラフィックス | Arc Graphics | Radeon 780M |
実行ユニット | 8 | 12 |
グラフィックス周波数 | 2.35GHz | 2.80GHz |
PBP | 45W | 45W |
MTP | 115W | - |
価格 | $640 | - |
搭載モデル価格 | 359,800円~ (RTX 4070M) | 349,800円~ (RTX 4070M) |
発売日 | 2023/12/14 | 2023/12/06 |
競合モデルであるAMDのRyzen 9 8945HSと比較していく。Zen 4アーキテクチャを採用している。トランジスタ数は250億だ。プロセスサイズは4nmとなる。ダイサイズは178m㎡だ。コア・スレッドは8コア16スレッドとなっている。
Core Ultra 9 185HでいうPコア相当のみ搭載だ。Ryzen 9 8945HSの定格クロックは4.0GHzで、最大クロックは5.2GHzだ。Core Ultra 9 185Hと比べてそれぞれ1.7GHz、0.1GHz高い。L2キャッシュ容量は8MBで、L3キャッシュ容量は16MBとなる。L3キャッシュは8MB少ない。
対応メモリはDDR5-5600・LPDDR5x-7500だ。Core Ultra 9 185Hと同等と考えてよいだろう。内臓グラフィックスはRadeon 780Mだ。実行ユニットは12で、グラフィックス周波数は2.80GHzとなる。PBPは45Wで共通だ。GeForce RTX 4070 Mobile搭載モデルの価格は10,000円高いが、メーカーや構成などによって異なる。
Core Ultra 9 185H搭載ゲーミングノートPCの性能と特徴
高いマルチコア性能を持つCPU
Core Ultra 9 185Hのマルチコア性能は23,326と高めだ。ただし、旧世代のCore i9-13900Hよりもわずかにパフォーマンスが低い。競合のRyzen 9 8945HSと比べると3%弱低い結果となった。次世代モデルとしてみると物足りなさを感じてしまうだろう。Core Ultraシリーズが今後性能を伸ばせるのかどうかは気になるところだ。Intel第14世代/第13世代CPUあるいはRyzen 7000シリーズを使用しているならCPU性能に対しての買い替えのメリットは小さい。グラフィックボードが次世代モデルに代わるなら選択肢として悪くないはずだ。
Meteor Lake世代のCPUは性能よりも省電力性を重視していると考えてよいだろう。軽量化された本体やより長いバッテリー駆動時間を実現するのに適している。もっともゲーミングノートPCの場合は消費電力の高いグラフィックボードを搭載しているのでそこまでうまくいくわけではない。Core Ultraシリーズになって1世代目ということになる。次世代以降のモデルに期待したい。
搭載ゲーミングノートPCの価格が高い
Core Ultra 9 185Hを搭載したゲーミングノートPCの価格が高いのはネックとなる。2024年12月時点でラインナップを見ると最低でも31万円~と高額だ。価格的に万人受けするモデルとは言えない。GPUはミドルクラスのGeForce RTX 4060 Mobileだ。GeForce RTX 4060 Mobileの相場的には18万円~23万円となっているので、Core Ultra 9 185Hを搭載することで50%前後高いということになる。
Core Ultra 9 185Hとのバランスを考えると、GeForce RTX 4070 Mobile以上のモデルを選択したいところだ。もちろんそうなるともう少し価格が高くなる。それならIntel第14世代Core iシリーズあるいはRyzen 8000シリーズを選んでワンランク上のGPUを選択する方がよさそうだ。デスクトップ向けのグラフィックボードと比べて性能が劣ることを考慮してもGPUへの投資は価値がある。そのような事情を踏まえるとCore Ultra 9 185Hはなかなか選びづらいCPUであることを理解しておこう。
Core Ultra 9 185Hのベンチマーク一覧
Cinebench R23
マルチコアは17,045で、シングルコアは1,850だ。従来モデルのCore i9-13900Hよりもマルチコアが1%高いが、シングルコアは4%低い。競合のRyzen 9 8945HSと比べるとマルチコアは5%低いが、シングルコアは3%高くなっている。マルチコア自体は下位モデルであるRyzen 7 8845HSと同等だ。省電力性を重視した結果かCore Ultraシリーズはややパフォーマンスで見劣りしてしまう。
Cinebench 2024
Cinebench R23に代わるベンチマークソフトとなる。より最新のCPUへの適性が高くなっている。Core Ultra 9 185Hのマルチコアは947で、シングルコアは111だ。従来モデルのCore i9-13900Hとマルチコア性能は1%低く、シングルコア性能も2%弱低い。競合のRyzen 9 8945HSと比べてもマルチコアが1%弱高く、シングルコアも6%高い。コアが多い分だけ有利な状況だ。
Handbrake
動画のエンコードにかかる時間をまとめている。Core i9-13900Hよりも5%程度パフォーマンスで劣る。下位モデルのCore i7-13700Hと比べてもわずかに劣る。同世代の下位グレードであるCore Ultra 7 155Hと比べると8%程度高い性能だ。旧世代のモデルと比べるとやや期待外れといえるかもしれない。
7-Zip(圧縮)
Zipファイルに圧縮速度をまとめた。Core Ultra 9 185Hは、従来モデルのCore i9-13900Hと比べて7%弱上回っている。Ryzen 9 8945HSと同等のスコアだ。下位グレードのCore Ultra 7 155Hと比べると8%弱高い。
7-Zip(解凍)
解凍速度をまとめている。Core i9-13900Hよりも3%程度速いが、下位モデルであるCore Ultra 7 155Hとほとんど変わらない速度なのは気になるところだ。競合のRyzen 9 8945HSと比べても4%弱低い。用途によってパフォーマンスが序列が変わる傾向にある。
Adobe Photoshop
Photoshopスコアは1,271だ。Ryzen 7 8845HSと同じスコアとなっている。従来モデルのCore i9-13900Hよりも4%弱スコアが高い。競合のRyzen 9 8945HSと比べると2%弱低くなっている。
Core Ultra 9 185H搭載ゲーミングノートPC一覧
Alienware m16 R2 ゲーミング ノートPC (ALIENWARE)
液晶:16.0インチQuadHD+ 240Hz
重量:約2.61kg
CPU:Core Ultra 9 プロセッサー 185H
GPU:GeForce RTX 4060 Mobile
メモリ:DDR5-5600 16GB
ストレージ:SSD 1TB NVMe
電源:240W ACアダプター
コスパ:調査中
16.0インチQuadHD+ディスプレイを搭載したゲーミングノートPCだ。対応リフレッシュレートは240Hzと優れている。本体重量が最大で2.61kgとやや重いのが難点だ。GPUにはAda Lovelace世代のミドルクラスであるGeForce RTX 4060 Mobileを搭載している。設定次第では高リフレッシュレートを目指せる。メモリはDDR5-5600 16GBだ。ストレージはSSD 1TB NVMeとなる。電源は240W ACアダプター(小型フォームファクタ)付属だ。+2,200円で280Wアダプターへ変更することができる。その他メモリやストレージもカスタマイズも可能だ。
Stealth-14-AI-Studio-A1VGG-5003JP (MSI)
液晶:14.0インチWQXGA+ 120Hz
重量:約1.70kg
CPU:Core Ultra 9 プロセッサー 185H
GPU:GeForce RTX 4070 Mobile
メモリ:DDR5 32GB
ストレージ:SSD 1TB NVMe
電源:240W ACアダプター
コスパ:調査中
14.0インチQWXGA+(2,880×1,800)ディスプレイを搭載したゲーミングノートPCだ。本体重量が約1.70kgと軽い。ゲーミングノートPCでこの重量を実現したのはすごい。Core Ultraシリーズだからこの結果だ。GPUにはハイクラスのGeForce RTX 4070 Mobileを搭載していて高いパフォーマンスを発揮する。メモリはDDR5 32GBだ。ストレージはSSD 1TB NVMeを搭載している。複数のゲームを保存しても余裕がある。動画や画像などのメディア保存にも最適だ。電源は240W ACアダプター付属となっている。
OMEN Transcend 14 スプリームモデル(HP)
液晶:14.0インチ2.8K 120Hz
重量:約1.63kg
CPU:Core Ultra 9 185H
GPU:GeForce RTX 4070 Mobile
メモリ:LPDDR5x-7467 32GB
ストレージ:SSD 2TB Gen4 NVMe
電源:140W ACアダプター
コスパ:調査中
HPのゲーミングブランド「OMEN」のハイクラスのモデルとなる。14.0インチ2K(2,880×1,800)ディスプレイを搭載している。120Hz対応で快適なゲームプレイが可能だ。本体重量は約1.63kgと軽い。Core Ultra 9 185Hの本領発揮といえる。GPUにはハイクラスのGeForce RTX 4070 Mobileを搭載している。メモリがLPDDR5x-7467 32GBだったり、電源ユニット140A ACアダプターだったりと省電力性を重視しているモデルだ。ストレージはSSD 2TB Gen4 NVMeと大容量だ。ゲームにメディアにたくさん保存することができる。
Stealth-16-AI-Studio-A1VHG-3003JP (MSI)
液晶:16.0インチ4K+ 120Hz
重量:約1.99kg
CPU:Core Ultra 9 プロセッサー 185H
GPU:GeForce RTX 4080 Mobile
メモリ:DDR5 32GB
ストレージ:SSD 1TB NVMe
電源:240W ACアダプター
コスパ:調査中
16.0インチ4K+(3,840×2,400)ディスプレイを搭載した一大だ。120Hz対応でシューティングにも適している。Core Ultra 9 185H×GreForce RTX 4080 Mobileのハイエンドモデルだ。4K環境にも対応できるポテンシャルを持つ。メモリはDDR5 32GB・SSD 1TB NVMeと平均以上の構成だ。電源は240W ACアダプター付属だ。50万円近い価格はなかなか手が出ない。潤沢な資金を持つユーザー向けといえるだろう。