
Ryzen 9 8945HXの性能比較&ベンチマーク検証を行っていく。Zen 4アーキテクチャを冠したハイエンドモデルだ。16コア32スレッドという高いスペックを持ちゲーミングノートPCで採用されることが多い。Ryzen 9 7945HXの型番を変更したリネームモデルと考えるとよい。アーキテクチャもスペックも同じで性能は変わらないと考えられる。
もっともゲーミングノート向けCPUの場合純粋にスペックを比較することが難しいことは理解しておいてほしい。ベンダーが設定するTDPや冷却性能などに左右されるからだ。搭載モデルは「Ryzen 9 8945HX搭載ゲーミングノートPC一覧」で紹介している。2025年10月時点だとマウスコンピューターからのみ搭載モデルが販売されている。後継モデルはZen 5のRyzen 9 9955HXだ。アーキテクチャも変わり性能も大幅に引き上げられている。
| 価格帯 | 人気 | CPU | GPU |
|---|---|---|---|
| 25万円以上 | 9 275HX/9 9955HX/AI 7 350 | RTX5090/RTX5080/RTX5070TiM | |
| 20万円-25万円 | 9 8945HX/AI 7 350/7 260 | RTX5070M/RTX5060M | |
| 15万円-20万円 | AI 7 350/i7-14650HX | RTX5060M/RTX5050M | |
| 10万円-15万円 | i7-13620H/5 240 | RTX5050M/RTX3050M | |
| 5万円-10万円 | i7-11800H | RTX3050TiM |
搭載モデルの価格は20万円-25万円台から購入できる。グラフィックボードはGeForce RTX 5060 Mobileだ。GeForce RTX 5070 Mobile以上のモデルとなると25万円以上の予算が必要だ。現行のRyzen 9 9955HX搭載モデルとの価格差にも注目したい。
Ryzen 9 8945HXの概要
| コードネーム | Zen 4(Dragon Range) |
|---|---|
| プロセス | 5nm |
| I/Oプロセス | 6nm |
| コア/スレッド数 | 16コア / 32スレッド |
| コア定格/最大クロック | 2.5 GHz/ 5.4 GHz |
| L2キャッシュ | 16MB |
| L3キャッシュ | 64MB |
| 内蔵GPU | Radeon 610M |
| PBP | 55W |
| MTP | 101W |
| 発売日 | 2025年04月23日 |
| 価格 | – |
| 特徴 (長所・短所) |
(+) 16コア32スレッドハイエンドCPU (+) ゲームにもクリエイティブにも通用する (-) Ryzen 9 7945HXのリネームモデル (-) 搭載モデルが少ない |
| 評価 |
・総合評価 8.5 ・ゲーム評価 8.5 |
Ryzen 9 8945HXの基本スペック
| Ryzen 9 8945HX | Ryzen 9 9955HX | Ryzen 9 7945HX | |
|---|---|---|---|
| コードネーム | Zen 4(Dragon Range) | Zen 5(Fire Range) | Zen 4(Dragon Range) |
| チップ設計 | チップレット | チップレット | チップレット |
| プロセス | 5nm | 4nm | 5nm |
| ダイサイズ | 2x 71 mm² | 2x 70.6 mm² | 2x 71 mm² |
| プロセス(I/O) | 6nm | 6nm | 6nm |
| ダイサイズ(I/O) | 122 mm² | 122 mm² | 122 mm² |
| トータルコア(スレッド) | 16 / 32 | 16 / 32 | 16 / 32 |
| 定格クロック | 2.5GHz | 2.5GHz | 2.5GHz |
| 最大クロック | 5.4GHz | 5.4GHz | 5.4GHz |
| オーバークロック | 対応 | 対応 | 対応 |
| L2キャッシュ | 16MB | 16MB | 16MB |
| L3キャッシュ | 64MB | 64MB | 64MB |
| 対応メモリ | DDR5-5200 | DDR5-5600 | DDR5-5200 |
| 内蔵グラフィックス | Radeon 610M | Radeon 610M | Radeon 610M |
| 実行ユニット | 2 | 2 | 2 |
| グラフィックス周波数 | 2.20GHz | 2.20GHz | 2.20GHz |
| TDP | 55W | 55W | 55W |
| PPT | 101W | 101W | 101W |
| 搭載モデル価格 | 329,800円(RTX 5070 TiM) | 339,980円~(RTX 5070 TiM) | – |
| 発売日 | 2025/04/23 | 2025/01/06 | 2023/01/04 |
Ryzen 9 8945HXは、Zen 4アーキテクチャを採用したモバイル向けCPだ。末尾のHXはクロック周波数及びTDPと高いハイエンドモデルを意味する。本来であればRyzen 9 7945HXと比較したいところだが、中身を見ると型番以外はすべて同じであることがわかる。スペック上では見えないマイナーチェンジが行われている可能性はあるもののベンチマークを見る限り同じだと考えても問題なさそうだ。今回は前世代のRyzen 9 7945HXとは比較をせずに進めていく。
Ryzen 9 8945HXは5nmのCPUコアダイと6nmのI/Oダイを組み合わせたチップレット設計を採用している。2つのダイを合わせると264m㎡だ。16コア32スレッドと高いスペックを持つ。定格クロックは2.5GHz、最大クロックは5.4GHzだ。オーバークロックに対応していてより高みを目指せる。L2キャッシュ容量は16MB、L3キャッシュ容量は64MBだ。対応メモリはDDR5-5200となる。内蔵グラフィックスはRadeon 610Mだ。実行ユニットはわずか2つと性能は高くない。TDPは55W、PPTは101Wとなる。
次世代のRyzen 9 9955HXと比較していく。Zen 5アーキテクチャを採用したモデルだ。コードネームはFire Rangeだ。チップレット設計を採用している。製造プロセスは4nmと微細化が進む。I/Oプロセスは6nmが維持されている。ダイサイズも同等だ。16コア32スレッドとここも変わらない。クロック周波数やキャッシュ周りも共通となる。Zen 4からZen 5へとアーキテクチャの進化でIPCが向上している分だけ有利だ。
対応メモリもDDR5-5200→DDR5-5600とより高クロックなメモリをサポートしている。内蔵グラフィックスは同等だ。TDPやPPTも変更なしとなる。搭載モデルの価格は10,000円の差がある。メーカーの違いがあるので純粋な比較は難しい。あくまでも一つの目安として見ていただければと思う。次世代モデルと比べてもそれほどスペックが高くなっているわけではないことがわかる。それでもアーキテクチャが進化したこともあり性能の底上げが行われているのは確かだ。

Ryzen 9 8945HXとRyzen 9 7945HXは同じモデルだという認識でよい。発売された時期が2年ほど違うためCPU性能が変わらなくても搭載グラフィックボードの世代が変わる。つまり、GeForce RTX 40シリーズからGeForce RTX 50シリーズへと変わったということだ。今ゲーミングノートPCを購入するなら必然的にRyzen 9 8945HXとGeForce RTX 50シリーズの組み合わせになる。今Ryzen 9 7945HX搭載モデルを持っている方もGPUのアップグレード目的に買い替えは選択肢に入る。ただし、クリエイティブ作業でのパフォーマンス向上を目的としている方にはおすすめできない。
Ryzen 9 8945HX搭載ゲーミングノートPCの性能と特徴
旧世代ながらモバイル向けとしてトップクラスの性能を持つ

Ryzen 9 8945HXのゲーム性能スコアは38,702と高い。Ryzen 9 7945HXとスコアはほとんど変わらない。すでに旧世代のモデルとなっているがモバイル向けモデルとしてはトップクラスだ。ゲーミングノートPC搭載のCPUにふさわしい性能を持っている。性能的にはGeForce RTX 5080 MobileやGeForce RTX 5070 Tiなどハイクラスのグラフィックボードとの組み合わせが好ましい。
当然価格は高くなってしまうが、できればグラフィックボードにもお金をかけたいところだ。次世代のRyzen 9 9955HXと比べると3%程度低くなっている。Core Ultra 9 275HXとの性能差は1%程度でやや劣る。Ryzen 9 8945HXよりも性能の高いCPUはあるが、そこまで性能差があるわけではなくその差を体感することは難しいだろう。
12コア24スレッドと下位グレードながらデスクトップ向けのハイクラスであるRyzen 9 9900Xを上回る性能は圧巻だ。もちろんパフォーマンスモードでの運用が前提で、エコモードなどTDPを抑えたモデルではがくっとパフォーマンスが落ちてしまう。
ワットパフォーマンスはやや低い
| 製品名 | ゲーム平均 | ゲーム最大 | アイドル平均 |
|---|---|---|---|
| Ryzen AI 7 350 | 23.0W | 33.0W | 3.9W |
| Ryzen AI 9 HX 375 | 25.4W | 36.7W | 6.6W |
| Core Ultra 7 255HX | 35.4W | 80.2W | 8.7W |
| Core Ultra 9 275HX | 39.6W | 103.3W | 8.5W |
| Ryzen 9 8945HX | 43.4W | 111.3W | 11.6W |
| Ryzen 9 9955HX | 44.7W | 114.8W | 12.1W |
| Ryzen 9 9955X3D | 48.3W | 119.1W | 12.6W |
| Core i7-14650HX | 57.9W | 70.4W | 9.1W |
Ryzen 9 8945HXのゲームプレイ時の平均消費電力は43.4W、最大消費電力は111.3Wだ。競合であるCore Ultraシリーズ2の方がワットパフォーマンスが高い。Ryzen 9 8945HXよりも性能の高いCore Ultra 9 275HXよりも消費電力が10%程度高くなっている。もっともこれぐらいの消費電力の差がパフォーマンスなど実用面で影響を与えるわけではない。プレイするタイトルや環境などで消費電力は変わるので一つの参考として見てほしい。すべてTDPが最も高い状態で計測している。消費電力を抑えたいならソフトウェア側で設定を変更すればいい。
搭載モデルのラインナップが少ない
| CPU | 取り扱いメーカー | ラインナップ数 |
|---|---|---|
| Ryzen 9 9955HX3D | MSI、ASUS | 2機種 |
| Ryzen 9 9955HX | 主要メーカー全て | 豊富 |
| Core Ultra 9 275HX | 主要メーカー全て | 豊富 |
| Ryzen 9 8945HX | マウスコンピューター | 3機種 |
| Ryzen 9 8940HX | MSI、ASUS | 3機種 |
Ryzen 9 8945HXを搭載したモデルはマウスコンピューターから販売されている3機種のみに限定される。国産メーカーにこだわりたい方は必見だ。特にマウスコンピューターは基本保証が3年間と長く安心して使用できる。色々なモデルを比較検討したいなら上記で紹介しているCPUも候補に入れるとよい。性能帯の近いモデルが多数存在していてRyzen 9 8945HXだけにこだわる必要はない。Ryzen 9 9955HXやCore Ultra 9 275HXについてはドスパラやパソコン工房など、マウスコンピューター以外の国内大手BTOメーカーでも取り扱いがある。
Ryzen 9 8945HXのベンチマーク一覧
Cinebench 2024
Cinebench 2024でもマルチコアは1,871pt、シングルコアは116となる。Ryzen 9 7945HXと全く同じといってもいいレベルだ。スペックを見れば当然だろう。競合のCore Ultra 9 275HXと比べるとマルチコアは9%低く、シングルコアも14%低い。現行モデルであるRyzen 9 9955HXになるとマルチコアが8%高く、シングルコアも12%高くなる。アーキテクチャの進化によってワンランク上のモデルに仕上がっている。
Cinebench R23
Ryzen 9 8945HXのマルチコアは32,551pt、シングルコアは1,930ptだ。やはりRyzen 9 7945HXとのスコア差はほとんどないことがわかる。現行のRyzen 9 9955HXと比べるとマルチコアが5%弱低く、シングルコアも9%低くなっている。省電力モデルであるRyzen 9 8945HSは8コア16スレッドとスペックが控えめなこともあり性能差は大きい。マルチコアで45%低く、シングルコアも7%低い。
Blender
Blenderでのスコアは501.77ptとなる。Ryzen 9 7945HXよりも7.61ptだけ高い。競合のCore Ultra 9 275HXと比べると6%低いスコアだ。Ryzen 9 9955HXよりも9%程度低くなっている。モバイル向けでトップに君臨するRyzen 9 9955HX3Dと比べると14%低いスコアだ。デスクトップ向けのCore Ultra 7 265Kよりも4%スコアが高くモバイル向けモデルとしてトップクラスであることは間違いない。
Handbrake
動画のエンコードに係る時間を計測している。数値が少ない方が高性能であることを意味する。H.265では次世代のRyzen 9 9955HX3DやRyzen 9 9955HXと同等だ。H.264ではRyzen 9 9955HXよりも31秒遅くなっている。Ryzen 9 7945HXとパフォーマンスは同等だ。
7-Zip
Zipファイルの展開及び圧縮もCPU依存度の高い用途となる。Ryzen 9 8945HXはトップクラスのパフォーマンスを発揮する。デスクトップ向けのCore Ultra 7 265Kよりも展開速度が24%速く、圧縮速度も10%弱速い。Ryzen 9 7945HX3Dとほとんど変わらない速度を実現している。次世代のRyzen 9 9955HXと比べると展開速度は9%遅く、圧縮速度も10%弱遅くなっている。次世代アーキテクチャには敵わないものの十分な速度が出ている。
Adobe Photoshop
PugetBenchでPhotoshopでのパフォーマンスを計測した。Ryzen 9 8945HXのスコアは9,018ptだ。Ryzen 9 7945HXと比べて178ptだけ高い。Ryzen 9 7945HX3Dよりもスコアが高くなっている。Core Ultra 9 275HXと比べてもスコアは上だ。
Ryzen 9 8945HX搭載ゲーミングノートPC一覧
G TUNE H6-A9G60BK-C(マウスコンピューター)
価格:239,800円 229,700円(送料込)
液晶:16.0インチWQXGA 300Hz
CPU:Ryzen 9 8945HX
GPU:GeForce RTX 5060 Mobile
メモリ:DDR5-5200 16GB
SSD:500GB Gen4 NVMe
電源:240W ACアダプター
コスパ:調査中
16.0インチWQXGAディスプレイを搭載したゲーミングノートPCだ。300Hz対応でデスクトップと変わらない環境を構築できる。グラフィックスはBlackwell世代のミドルクラスであるGeForce RTX 5060 Mobileを搭載している。高解像度には不向きだが、設定次第では十分な性能を発揮する。メモリDDR5-5200 16GB・SSD 500GB Gen4 NVMeと構成は平均的だ。電源は240W ACアダプター付属となる。本体重量は約2.31kgだ。カバンがあれば持ち運びもできなくはないが、ノートパソコンとしてみれば重い。
G TUNE H6-A9G70BK-C(マウスコンピューター)
価格:289,800円(送料込)
液晶:16.0インチWQXGA 300Hz
CPU:Ryzen 9 8945HX
GPU:GeForce RTX 5070 Mobile
メモリ:DDR5-5200 32GB
SSD:1TB Gen4 NVMe
電源:240W ACアダプター
コスパ:調査中
Ryzen 9 8945HX×GeForce RTX 5070 Mobile搭載のハイクラスモデルだ。高解像度モニターを活かすには最低でもこれぐらいの性能は欲しい。高リフレッシュレートでのゲームプレイも現実的だ。メモリDDR5-5200 32GB・SSD 1TB Gen4 NVMeと構成も充実している。電源は240W ACアダプター付属だ。
G TUNE H6-A9G7TBK-C(マウスコンピューター)
価格:329,800円(送料込)
液晶:16.0インチWQXGA 300Hz
CPU:Ryzen 9 8945HX
GPU:GeForce RTX 5070 Ti Mobile
メモリ:DDR5-5200 64GB
SSD:1TB Gen4 NVMe
電源:240W ACアダプター
コスパ:調査中
GeForce RTX 5070 Ti Mobile搭載のハイエンドモデルだ。価格は329,800円と30万円オーバーとなる。メモリDDR5-5200 64GB・SSD 1TB Gen4 NVMeと圧巻の構成を持つ。電源は240W ACアダプター付属だ。GeForce RTX 5070 Ti Mobile搭載モデルとしてはやや抑えられている。本体重量は約2.47kgと重い。持ち運ぶ機会が多い方は注意しよう。





















