gtx980ti画像引用元:https://jp.msi.com/

NVIDIA製グラフィックボードに搭載されている「DSR(Dynamic Super Resolution)」について解説していく。DSRはGeForce GTX 900番台(Maxwell 2.0)で初めて搭載された機能だ。仮想的に4K環境を作り出しそれをモニターに合わせた解像度に落とし込むことで、ゲームグラフィックスの高画質化を実現できる。4Kモニターを所有する必要がなく対応ゲームの多さから気軽に利用できるメリットがある。

2022年1月にはそのDSRの進化版であるDLDSRがリリースされた。DLDSRではTensorコアを活用することでより効率的にレンダリングを行える。負荷が大きく上がってしまうというDSRの弱点をカバーできる。両者の特徴について詳しく見ていこう。また、同じ高画質化を実現する機能であるDLSSについても触れていく。

DSR(Dynamic Super Resolution)とは?

DSR(Dynamic Super Resolution)とはモニターの解像度よりも高解像度でレンダリングして、それを実際のネイティブ解像度にダウンサンプリングすることで高画質化を実現させる機能だ。直訳すると動的超解像度となる。フルHD(1920×1080)モニターを使用していても、DSRの活用で最大4倍のDSR解像度を設定できる。つまり、擬似的に4K環境(3840×2160)でのレンダリングが可能だ。4Kモニターを使用していれば8K環境(7680×4320)が構築できる。レースゲームなどでの恩恵が大きい。

DSR解像度の設定を行えば通常と比べて情報量が多くなり、より鮮明なグラフィックスを描写する土台ができる。もちろんDSR解像度のままだとモニターに出力できないので、モニターのネイティブ解像度に落とす。これでフルHD環境でありながら4K環境を元にした鮮明なグラフィックスが映し出される。

このDSRはGTX 900番台(Maxwell)の新機能として登場した。その後GTX 500番台以降のモデルでも使用可能になっている。もっともDSRではGPU負荷が高くなるため古いグラフィックスだと性能的に厳しい。当時のハイクラスのグラフィックボードをSLI・3Wayで運用してなんとか対応できるレベルだ。当時のハイエンドも出るであるGTX 980でも理論上は実現できるはずだったが、やはり性能的に苦しかった。現行のGeForce RTX 40シリーズやRTX 30シリーズで、DLSSと組み合わせてGPU負荷を下げて活用するのがよさそうだ。

DLDSR(Deep Learning Dynamic Super Resolution)とは?

geforcecontrolpanel
2022年1月にGame Ready DriverでこのDLSDSRが追加された。従来のDSRにAIを組み合わせることでより効率的に高画質の出力が可能となる。モニターよりも高解像度でゲームをレンダリングしてからモニターの解像度に縮める。ダウンサンプリングによって、細かい処理がよりキレイになり先端部分をよりスムーズにそしてちらつきが軽減される。

ここまではDSRとまったく同じだ。DLDSRのポイントは、GeForce RTX 20シリーズ以降で搭載されたTensorコアにある。素直に高解像度でゲームをレンダリングせずに、GeForce RTXシリーズのAIが高解像度ではどのような画像になるのかを理解できるのだ。Tensorコアを活用することで、GPU負荷を抑えられるメリットがある。DLDSRの2.25倍の画質は、DSRの4倍と同等だ。DSRの弱点であるGPU負荷を軽減できるということだ。

DSR・DLDSRの特徴を比較

DSRDLDSRDLSS
登場時期2014/092022/012018/09
技術ダウンスケールダウンスケールアップスケール
対応タイトル★★★★★★★★★★★★☆☆☆
対応グラボGTX 500シリーズ以降RTX 20シリーズ以降RTX 20シリーズ以降
GPU負荷の軽さ★☆☆☆☆★★☆☆☆★★★★★

DSR・DLDSRと似た機能であるDLSSも比較としてピックアップしている。DSRとDLDSRはダウンスケールで、DLSSはアップスケールだ。DLSSでは低解像度でレンダリングをしてそれを高解像度に引き伸ばすイメージとなる。DSRは2014年9月に登場した機能で、初めはGTX 900番台で利用できた。その後GTX 500番台以降のモデルにも拡充されている。対応タイトルはどちらも多い。GPU負荷が高くそれなりの性能が必要だ。

DLDSRではAIを活用することでGPU負荷を小さくできる。およそ2倍も効率的だ。対応グラボはTensorコアを搭載したGeForce RTX 20シリーズ以降のモデルだ。DLSSは2018年9月にGeForce RTX 20シリーズの登場に合わせて追加された機能となる。対応タイトルはそれほど多くないが、効果は絶大でグラフィックスの質を高めつつフレームレートの向上を見込める。NVIDIA自慢のAIが本領発揮となる。

DSR/DLDSR活用前の注意点

GeForce Experience対応タイトルでのみ使用可

geforceexperience
DSR/DLDSRを利用できるのは、「GeForce Experience」に対応しているタイトルのみとなる。GeForce Experienceとは、NVIDIAが提供するGeForceユーザー向けのソフトウェアだ。ゲームの最適化・ドライバーの更新・ShadowPlay(ゲーム画面録画)など便利な機能が詰まっている。ほとんどのタイトルで対応しているのでそこまで心配はしなくてもいいが、すべてのタイトルというわけではないので注意が必要だ。

また、ゲーム側でUIやHUDのカスタマイズが細かくできないと、文字などが小さくなるなど操作性や利便性にも大きく影響してしまう。とくに古いタイトルをプレイする場合は事前に確認しておくとよさそうだ。基本的にゲーム自体が4K解像度に対応していれば問題はない。YoutuberやNVIDIAの公式サイトなどで対応可否を確認しておこう。

DLDSRはTensorコア搭載モデルのみ使用可

DLDSRを利用するには、Tensorコアを搭載したグラフィックボードが必須だ。GeForce RTX 20シリーズ/RTX 30シリーズ/RTX 40シリーズが対象だ。DSRほどではないにしてもグラフィックス負荷が高くなることを考えると、GeForce RTX 30シリーズ以降のモデルが好ましい。性能の低いモデルの場合はDLSSとの併用がよい。DSRのようにGeForce GTX 500番台以降全てのモデルで対応しているわけではない。対応範囲が狭くなってしまうのはデメリットと言えるだろう。

ゲームジャンルによって向き、不向きがある

DSR/DLDSRは対人戦がメインのFPSには不向きだ。対人戦において重要なのはグラフィックスの品質ではない。GPU負荷が上がってフレームレートが下がってしまうのもデメリットになる。FPSにおいては、画質を落としてでも高いフレームレートを維持したいところだ。画質が荒くなれば敵が大きく見えるというメリットがある。

同じ対人系であっても、アクション要素の強いFPSではそこまで気にならない。昨今のグラフィックボードの性能を考えれば、これだけ性能が高くなったのだから意外と身近な機能になったようにも思う。問題は高解像度にするメリットを感じられる場面がFPSでは限定的であることだ。

MMORPGやTPSのようなゲームに向いている。もちろんフルHD環境時と体感する負荷に差がなければの話だが…。4K環境を構築するつもりはないが、少しでも綺麗なグラフィックを楽しみたいユーザーに最適だ。GeForce RTX 40シリーズになって性能が大きく向上した。DLSSとの組み合わせで高いフレームレートを実現できればMMORPGなどではメリットが大きそうだ。

DSRの設定方法

NVIDIAコントロールパネル

dsr-1
デスクトップ画面で右クリックをして「NVIDIAコントロールパネル」を開こう。Windowsの検索ボックスに直接タイピングしてもオッケーだ。

3D設定の管理 DSR-係数

dsr-2
3D設定→3D設定の管理→DSR-係数から倍率の設定を行う。ネイティブ解像度に対しての倍率を表す。フルHDディスプレイを使用していて4.00xにすると4K解像度となる。4Kモニターを使っていると4.00xで8K解像度だ。

倍率一覧

  • 1.20x(native resolution)
  • 1.50x(native resolution)
  • 1.78x(native resolution)
  • 2.00x(native resolution)
  • 2.25x(native resolution)
  • 3.00x(native resolution)
  • 4.00x(native resolution)

3D設定の管理 DSR-滑らかさ

dsr-3
滑らかさを変更することができる。基本的にはデフォルトの33%のままでいいように思う。

NVIDIA公式動画(英語)

Maxwellのダイナミックスーパーレゾリューション技術であるDSRは、劇的にゲームプレイを質を高めてくれる。DSRのおかげで、小さなモニターであっても4K解像度の高画質を気軽に体験できる。ここでそれがどのような仕組みになっているのかを解説する。GPUは、モニターに映像を映し出す前に、レンダリングするためにフレームバッファを使用する。多くの場合、バッファはモニターの解像度に最適化される。

しかしながら、ゲーマーの中には時に使用しているグラフィックボードの性能に合わせて、高いフレームレートを実現するためにフレームバッファの解像度を下げるのが好ましいと感じるときがあるだろう。このケースにおいてGPUはモニターに映し出される時にレンダーイメージを大きくするが、DSRはその反対をいくのだ。

スーパーレゾリューション技術によって、ゲームをあなたが使っているモニターよりも大きいある解像度に最適化させることができる。これはGPUがローカル環境において非常にハイクオリティイメージを産み出しているということになる。そして、それを小さくしてモニターに映し出すために洗練されたフィルターを使用する。低改造におけるレンダリングによって生じる映像をより自然にできる。