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当記事では、グラフィックボード(GPU)に搭載されているメモリについて解説している。GPUメモリについて詳しく知りたいという方向けのコンテンツだ。GPUメモリは、ビデオメモリーやVRAMと呼ばれることもあるので合わせて覚えておくとよい。
まず基本的なグラフィックボードのメモリの役割についてまとめている。また、パソコン本体に搭載されているメモリとの違いにも触れていく。その後中上級者向けにもう少し突っ込んだ内容をまとめている。例えば、ゲーミングに必要なメモリ容量の検証やよくある疑問についてなどだ。知識がある方はぜひ参考にして欲しい。
当ページの目次
GPUメモリ(VRAM)の概要(容量、規格 etc.)
GPUメモリ(VRAM)とは?
GPUメモリとは、グラフィックボードに搭載されていてグラフィックの処理にのみ特化したメモリと考えてもらえばわかりやすいと思う。グラフィックボードのスペックを見るとGPUメモリ容量が記載されていることに気付くだろう。メインメモリとは役割が異なっている。違いは後述している。ゲームプレイやWEBデザインなどグラフィック処理を行う際に、必要に応じて映像データを一時的にGPUメモリに保存して必要な処理を随時行う形になる。
映像処理をスムーズに行うためにまずグラフィックボードの処理速度が優先される。しかしながら、リアルタイムにたくさんの映像処理を行うと、遅延が発生してしまいスムーズな処理ができなくなることもある。そこでGPUメモリが登場するというわけだ。GPUメモリ容量が大きければ大きいほどたくさんの映像に関する情報を保存することができ、同時に情報処理も行ってくれる。
ゲーム向けのGeForce製グラフィックボードのGPUメモリ容量は2GB~24GBの範囲となっている。GPUメモリを活用することでゲームプレイ時などに遅延が発生せず、リアルタイム描写でありながらスムーズな処理が可能になるのだ。なお、プロフェッショナル向けのNVIDIA RTXシリーズの場合最大GPUメモリ容量は48GBと大容量だ。3D CADなど大規模な処理を行う際に有効だと言える。
GPUメモリ規格
メモリ規格 | GDDR6X | GDDR6 | GDDR5X | HBM2 |
---|---|---|---|---|
製造元 | Micron | Samsung Micron Hynix | Micron | Samsung Hynix |
最大キャパシティー | 24GB | 24GB | 16GB | 32GB |
最大速度 | 19 to 21 Gbps | 16 Gbps | 10 to 14 Gbps | 2.4 Gbps |
バス幅 | 384 bit | 384 bit | 256 bit | 3092 bit |
消費電力 | 1.35V | 1.35V | 1.35V | 1.20V |
搭載モデル | RTX 3080 Ti RTX 3070 Tiなど | RTX 3060 Ti RX 6700 XTなど | GTX 1080 Ti GTX 1080など | Radeon Ⅶ RX Vega 64 など |
GDDR6は、RTX 3070以下のグラフィックボードで採用されている。AMDのRadeon RX 6000シリーズでも採用されていてもっとも多く見る機会のある規格だと言えるだろう。GDDR5Xと比べて最大速度・バス幅共に向上していて高いパフォーマンスを期待できる。
HBM2は、旧世代のAMD製グラフィックボードで採用されていたメモリ規格だ。省電力性・パフォーマンスが高いがコスト面で不利になってしまう。そのため、AMDの最新のグラフィックボードではGDDR6を搭載している。今後HBM2に移行する可能性は低いだろう。
GPUメモリ消費量の確認方法
VRAMとRAMの違いとは?
メモリと聞けばゲーミングパソコン本体に搭載されているメモリ(RAM)を連想しがちだ。このRAMは、CPUとストレージ(SSD・HDD)との綱渡し役で、いわゆるVRAMとは全く異なるものとなっている。GPUメモリよりも広範囲な情報を取り扱う。
グラフィックボードに搭載されているメモリはあくまでもグラフィックに関する情報のみを保存する。GPUメモリもとても重要なパーツなので、軽視してはいけない。本体に搭載されるメモリ(メインメモリ)とは本質的に全く違うものになる。保持する情報に違いがあると考えれば十分だ。GPUメモリの容量が多いと下記のようなメリットがある。
高解像度でゲームができる
高いテクスチャ環境でゲームができる
アンチエイリアス処理をしていても快適なプレイができる
高解像度の3Dグラフィックスの処理が効率的に行える
GPUメモリの役割(中上級者向け)
次にGPUメモリがどのような用途で使用されているのかを知る必要がある。かなり簡略化しているが下記のような役割がある。初心者の方や簡単に役割を知れれば十分だという方はスキップしていただいても問題ない。
テクスチャの読み込み
テクスチャの読み込みが基本的な役割となる。テクスチャとは、ものの表面の質感をリアルに表現するために貼り付ける画像のことだ。車の汚れやシミを表現したり、ビルの模様を表現したりするのに利用される。リアリティを出すために必須の技術だと言える。
メモリにロードされるテクスチャのサイズはプレイしているゲーム及びゲームにセットされている質によって異なる。例としては、スカイリムの高解像度テクスチャでは3GBのテクスチャが含まれている。
ほとんどのアプリケーションは必ずしも全てのテクスチャがGPUメモリに残るわけではなく、動的に必要な時にテクスチャをロードしたり、アンロードしたりする。しかしながら、特定のシーンを描写するために必要なテクスチャは必ずメモリに保持される必要がある。
フレーム・バッファーの保持
レーム・バッファーの保持という機能も持っている。ディスプレイに送られる前または間に画像が描写されるとそのイメージを保持するために使用されるのだ。フレームバッファとは、複数のレイヤーにあるオブジェクトを一枚にすることを指している。
このように、メモリの使用量は出力する解像度(1920×1080×32の場合は8.3MBで3840×2140×31の場合は33.2MBとなる。)やバッファーの数に依存することになる。特定のアンチエイリアス処理(FSAA,、MSAA,、CSAA、CFAAが対象でFXAAとMLAAは対象外となる。)は描写されるべきピクセルの数が飛躍的に増加するので、それらは全体的に必要なGPUメモリの量を増加させる。
特に描写ベースのアンチエイリアス処理ではメモリー使用量に甚大な影響を与え、サンプルサイズが増加するにつれてさらに増えることになる。追加のバッファーはさらにGPUメモリを消費する。
Zバッファーの保持
Zバッファーを保持するという役割がある。Zバッファーとは、3次元画像の表示を深度情報を活用して高速化する技術のことだ。GPUメモリにはこの深度情報を格納することになる。GPUメモリ容量が多ければより速く処理を行うことが可能だ。ゲーミングではなくクリエイター作業におけるメリットだと言える。プロフェッショナル向けのNVIDIA RTX Aシリーズ/NVIDIA Tシリーズは、GeForceに比べてGPUメモリ容量が多く、要求されるスペックも高いということがわかる。
ゲーミングPCに必要なGPUメモリ容量は?
現行のグラフィックボード搭載メモリ容量一覧
型番 | GPUメモリ |
---|---|
RTX 4090 | 24GB |
RTX 4080 | 16GB |
RTX 3090 | 24GB |
RTX 3080 Ti | 12GB |
RTX 3080 | 10GB |
RTX 3070 Ti | 8GB |
RTX 3070 | 8GB |
RTX 3060 Ti | 8GB |
RTX 3060 | 12GB |
RTX 3050 | 8GB |
GTX 1660 SUPER | 6GB |
GTX 1660 | 6GB |
GTX 1650 SUPER | 4GB |
GTX 1650 | 4GB |
GTX 1060 6GB | 6GB |
GTX 1060 3GB | 3GB |
GTX 1050 Ti | 4GB |
GTX 1050 | 2GB |
GTX 1030 | 2GB |
RX 6900 XT | 16GB |
RX 6800 XT | 16GB |
RX 6800 | 16GB |
RX 6700 XT | 12GB |
RX 6600 XT | 8GB |
RX 6600 | 8GB |
RX 6500 XT | 4GB |
Ampere世代のフラグシップモデルであるRTX 3090も24GBとなっている。RTX 3070 Ti~RTX 3060 Tiまでが8GB、RTX 3060のみイレギュラーで12GB、RTX 3050が8GBだ。RTX 3050は、Ampere世代のエントリークラスのグラフィックボードで従来モデルのGTX 1650から倍増となった。
RTX 3060ではRTX 3060 Tiの256 bitメモリバスから192 bitメモリバスへとダウングレードされている。このダウングレードによる影響を小さくするために15 GbpsのGDDR6メモリを搭載している。メモリバンド幅画は360 GB/sでRTX 3060 Tiの20%ダウンに留まる。これらの変更によって8GBのGPUメモリを搭載することができなくなっていて、6GBか12GBの選択を迫られる。さすがに6GBでは価格に見合わないので、必然的に12GBを搭載することになったのだ。
前世代のGTX 1050及びGT 1030は2GBでそれ以外のモデルは2GB以上を搭載していることがわかる。GTX 1050 Tiは4GBメモリを搭載しているが、GTX 1060 3GBと比較すると性能は劣る。このことからGPUメモリの容量によって性能が大きく変わるということはないということが理解できるだろう。
Radeon RX 6800以上のモデルではGPUメモリ容量は16GBとなる。Radeon RX 6700 XTで12GBだ。Radeon RX 6600 XT及びRadeon RX 6600では8GBを搭載している。Radeon RX 6500 XTではGPUメモリ容量が4GBと控えめだ。競合モデルのRTX 3050が8GBなのでちょうど半分ということになる。
ゲームにおすすめのグラフィックボードを探している方向けの、2023年最新のグラボ性能スコア比較表だ。GPUのスペック・価格・コスパ指標も一覧でまとめている。
最低限必要なGPUメモリ容量は2GB
Pascal世代でかろうじてゲームプレイができるGTX 1050の2GBがゲーミングPCに必要な最低ラインとなる。ただし、GTX 1050の性能面まで考えるとやや厳しくなってきているのは事実だ。GTX 700番台のGTX 750 Tiだと1GBだったが、2022年時点では1GBというのは通用しない時代になった。
現行のグラフィックボードだとローエンドのGeForce RTX 3050でも8GBを搭載している。今後は8GBあるいはそれ以上が当たり前の時代が来るだろう。旧世代ならGTX 1650で4GB、GTX 1660で6GB、RTX 2060 SUPERで8GBとなる。基本的にGPUメモリ容量は「グラフィックボードの性能に依存する」と考えておけばいいと思う。情報の蓄積量と処理速度が関係する以上、基本的に性能がよグラフィックボードほどメモリ容量が大きいと効果が高い。
同じ型番でもGPUメモリ容量の異なるモデルがある
GPUメモリ容量の異なるグラフィックボードが発売されている。基本的にはGPUメモリ容量が多い方がパフォーマンスは高い。例えば、RTX 3080ではRTX 3080 10GB搭載モデルの上位モデルとしてRTX 3080 12GBモデルがリリースされた。ハイエンドクラスのグラフィックボードならGPUメモリ容量が増えるのは大きなメリットだ。また、純粋にCUDAコア数が増えたり、クロック周波数が引き上げられたりとスペックの強化がされたバージョンと考えることもできる。
Pascal世代で人気を博したGTX 1060には、GPUメモリ容量の異なるGTX 1060 6GBとGTX 1060 3GBがあり6GBの方が性能が上だった。ミドルクラスのモデルはそれほど恩恵があるわけではない。AMDにもRadeon RX 570のように8GBと4GBといったように異なるモデルが販売されている。
それより以前のグラフィックボードの場合、メモリ容量が多い方がよいのかどうかということを決めるのはより難しくなる。たとえGPUメモリが多いとしても、処理速度が遅いグラフィックボードだと結局メモリ容量を上手く生かすことができなくなるからだ。一例を挙げるならばGTX 760は基本的にGPUメモリが2GBだが、4GBのモデルも存在している。
この2GBと4GBではどちらのほうが性能がよいかと言われるとほぼ同等の性能と考えてよいだろう。グラフィックス処理性能はそれほど高くないモデルで、GPUメモリ容量がそれほど大きな影響を与えることはないからだ。グラフィックボード自体の性能によってアッパーが決まってしまうということになる。
GPUメモリ容量の負荷が大きいタイトルでであればGTX 760の4GBのほうがよいと思ってしまうかもしれない。しかし、事実はそうでもないこともある。というのも、性能自体はどちらもGTX 760なのだからメモリが大きくなろうと処理性能に違いはない。容量が大きくなることによりスムーズに処理できるはずだが、処理速度が追いつかずに遅延の原因となることもある。
もちろん、これはゲームタイトルによるため全てのゲームでそうなるとも限らない。それこそGTX 780 Tiに「6GB版が出る」と話題になったように、もしも全世界で発売されていたら世界はGTX 900番台の登場を待たず革命的な衝撃を受けただろう。GTX 760では元々の性能がそこまで高くないことであまり意味がないと一蹴されたが、当時のハイエンドモデルであるGTX 780 Tiがメモリ2倍となれば話は別だ。
GTX 1060 6GBとGTX 1060 3GBとベンチマーク比較
参考までにGTX 1060 6GB及び3GBのパフォーマンスを比較していく。基本的にGTX 1060 6GBの方が性能が高いと考えてよいだろう。ただし、やはりグラフィック処理性能が変わるわけではなく大きな差があるというわけではない。
Battlefield 4
GTX 1070 | |
GTX 1060 6GB | |
GTX 980 | |
GTX 1060 3GB | |
R9 390X | |
RX 480 |
Grand Theft Auto 5
GTX 1070 | |
GTX 980 | |
GTX 1060 6GB | |
GTX 1060 3GB | |
R9 390X | |
RX 480 |
Rise of the Tomb Raider
GTX 1070 | |
GTX 980 | |
R9 390X | |
RX 480 | |
GTX 1060 6GB | |
GTX 1060 3GB |
マーケティング手法として使われるというお話
GPUメモリの過信は禁物
GPUメモリに関しては色々な憶測が飛び交っている。GPUメモリ自体がビデオカードの販売メーカーによってマーケティングの道具として使われることがある。どういうことかというと、ゲーマーの多くは、何事も多ければ多いほど質がいいものと信じている。そのため各メーカーはメモリ容量の多さを大きく売り出しプロモーションを強化するのだ。
結果として、彼らが必要とするものより多くのRAMを搭載した入門用ビデオカードを購入してしまうのは当然かもしれない。失敗しないためには必要な性能を考えてそれを基準にグラフィックボードを選ぶことだ。GPUメモリを基準にすることはNGとなる。Pascal世代のグラフィックボード以降ではそれほど心配する必要はない。
GPUメモリ<グラボ性能
2GB搭載GPUは1GB搭載GPUよりも早いというのは時に真実ではない。メーカーは時にあまり高価ではないグラフィックボードにあまりにも多くのメモリを搭載することで多くのマージンをとるというのは驚くことではない。なぜなら多くのメモリを積んでいるグラフィックボードの方が速くなると信じている人がいるので販売側にはおいしい話だ。
当然GPUメモリを増やせば販売価格を高く設定することが可能になる。実際は、ビデオカードが搭載してるメモリ容量というものはゲームをプレイしていてメモリを全て使用できる環境にない限りは製品のパフォーマンスに影響を与えることはない。それでは多くのGPUメモリがあるのはどういうときに効果があるのだろうか。
当記事のまとめ
グラフィクボードのメモリ(GPUメモリ)とは、グラフィック情報を一時的に保存しておくことができるパーツだ。GPUメモリはグラフィックボードの内部に搭載されている。美しい映像をリアルタイムに映し出すためには、メモリに情報を移して効率化する必要があるのだ。これは本体にあるメモリ(ROM)と異なるものとなっている。
GPUメモリの大きさはゲームプレイに影響を与えないことがある。GPUメモリが多ければ多いほど良いと考えるのは、グラフィックボードを販売している側の策略かもしれない。実際に容量の差を体感することはできないので深刻に考える必要はない。GPUメモリは補完的に考えてグラフィックボード自体のパフォーマンスを重視するのがおすすめだ。
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GPUに関する、とても良い記事を読ませてもらいました。
分かりやすい説明で、すんなりと頭に入ってきました。
中でも「処理性能とメモリ容量は別問題」というのは盲点でした。購入の参考にさせていただきます。
しかし、物事はバランスとは万物に共通ですね。