thirdwave-glineup
2026年になってもゲーミングPC価格が下がる気配は見られない。もしかしたら、今後も価格が上がり続けるのではないかと危惧している。メモリ価格が高騰し始めた2025年11月時点では、メモリおよびSSD価格高騰の影響がこれほど大きいものになるとは想像もしていなかった。確かに、当時メモリ価格が上がっていると話題になっていたが、すぐに落ち着くだろうと楽観視していたのだ。その後ゲーミングPCの駆け込み需要が発生して、一部のBTOメーカーが受注を停止するなど異例の年末年始となった。今後の展望に関してはページの最後「今後の展望:メモリおよびSSD価格はいつ落ち着くのか?」で解説しているので参考にしてほしい。

ゲーミングPCの価格が5万円から10万円前後高くなっている

今回はドスパラとフロンティアを例として上げたが、パソコン工房やTSUKUMOなど他のショップでも同じだ。

ドスパラ

thirdwave-glineup
2025年11月以降ゲーミングPCの価格が段階的に上昇中だ。まさに高止まりといった状況となっている。上記はドスパラの廉価ブランドであるTHIRDWAVE-Gシリーズの値上げ幅を示したものだ。39,000円~87,000円も高くなっている。構成もメモリチャネルがデュアルチャネル(8GB×2枚)からシングルチャネル(16GB×1枚)になったり、そもそもの容量を16GB→8GBへと削減したりしてコストカットが図られている。

フロンティア

型番 ケース 値上げ幅 25/12/26 25/12/19 25/12/12 25/12/05 CPU GPU メモリ SSD
FRGHLB550/WS12200/NTK FRGKB550WS501NTK 60,000 209,800 179,800 172,800 149,800 7 5700X RX9060XT 16GB 16GB 1TB
FRGHLB550/WS12200 FRGHLB760WSA 55,000 214,800 194,800 186,800 159,800 7 5700X RTX5060Ti 8GB 32GB 1TB
FRGHLMB650/CB6C FRGHLB760WSA 93,000 279,800 259,800 242,800 7 9700X RX9060XT 16GB 32GB 1TB
FRGHLMB650/WS12201 FRGHLB760WSA 111,000 389,800 359,800 314,800 278,800 7 9700X RTX5070Ti 32GB 1TB
FRGHLMB650/WS12100 FRGHLB760WSA 103,000 399,800 369,800 344,800 296,800 7 9800X3D RX9070XT 32GB 2TB
FRGHLMB650/WS12200 FRGHLB760WSA 110,000 429,800 394,800 349,800 319,800 7 9800X3D RTX5070Ti 32GB 1TB
FRGAMB550/WS1225/NTK FRGAG-B550MWS914NTK 44,000 189,800 179,800 176,800 145,800 7 5700X RTX5060 32GB 1TB
FRGAMB550/WS1224/NTK FRGAG-B550MWS914NTK 42,000 199,800 192,800 185,800 157,800 7 5700X RX9060XT 16GB 32GB 1TB
FRGKA620/WS12200/NTK FRGKB550WS501NTK 80,000 309,800 289,800 274,800 229,800 7 9700X RTX5070 32GB 1TB
FRGKA620ASR/WS122240/NTK FRGKB550WS501NTK 80,000 324,800 309,800 279,800 244,800 7 9700X RX9070XT 32GB 1TB
FRGHLMB650/WS12240 FRGHLB760WSA 90,000 369,800 344,800 324,800 279,800 7 7800X3D RX9070XT 32GB 2TB
FRMFGB650/WS12200 FRMFGB760WS2 85,000 384,800 349,800 339,800 299,800 7 9800X3D RX9070XT 32GB 1TB
FRGHLMB650/WS12102 FRGHLB760WSA 100,000 399,800 399,800 352,800 299,800 7 7800X3D RTX5070Ti 32GB 2TB
FRGHLB860/WS12101 FRGHLB760WSA 123,000 419,800 394,800 339,800 296,800 7 265F RTX5070Ti 32GB 1TB
FRGHLMB650/WS12153 FRGHLB760WSA 100,000 489,800 449,800 429,800 389,800 7 9800X3D RTX5080 32GB 2TB
FRGHLMB650/WS12210 FRMFGB760WS2 110,000 809,800 764,800 749,800 699,800 9 9950X3D RTX5090 64GB 2TB

フロンティアでも値上げが続き、値上げ幅は42,000円~123,000円とかなり大きい。フロンティアはメモリやSSDが充実したモデルが多く、価格高騰の影響を受けやすいショップだといえる。

ここ数か月のBTOメーカー/パーツメーカーの動向

福袋なし


まさかドスパラが福袋の販売を取りやめるとは思いもしなかった。また、毎年恒例の謹賀新年特別モデルの販売もなかったのは驚きだ。メモリおよびSSD価格高騰が影響を与えていると考えてよいだろう。

2025年福袋

dospara-akihabara
2025年は2,025円の福袋が販売された。SSD 500GBが入っているというものだ。当たりは1TB、大当たりは2TBと注目度も高かった。

新規オーダーの停止

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駆け込み需要により注文が殺到してTSUKUMO・マウスコンピューター・サイコムでは新規オーダーを停止している。長らくBTOメーカーの動向を見てきて販売を停止するというのは異例中の異例だ。それだけメモリ価格高騰の影響は大きいということだ。

在庫切れ

frontier-soldout
フロンティアではセールを更新するたびにすぐに在庫切れとなる。パソコン工房やドスパラでも一部のモデルが完売となった。

納期の長期化(最大2か月程度)


納期の長期化も普段ではほとんど見られない。出荷スピードの速さに定評のあるドスパラでさえ2週間(記事執筆時点では3週間~7週間)となった。

カスタマイズ価格の引き上げ

galleria-memorycustomize
当然カスタマイズ費用も高額になる。上記画像はドスパラのカスタマイズ画面だ。メモリ32GBへのカスタマイズは49,999円だ。64GBだと99,9999円となる。さらに、通常時デュアルチャネルだったのがシングルチャネルへとコストカットが図られている。

BTOメーカー(及びパーツショップ)の生の声

以下のBTOメーカーの声を見て欲しい。やはり価格高騰は避けられなさそうだ。メモリだけに留まらずSSDやグラフィックボードの値上げが起こり得る。

将来的な値上げは必至-2025年11月時点

11月の時点でショップは高騰することを示唆している。この時期から1か月程度は値上げまでの猶予があったことになる。

購入するなら今しかない-2025年12月時点

iodata-priceup出典:(アイ・オー・データ機器, 2025)

マウスコンピューターが12月10日につぶやいてから一気に駆け込み需要での購入が殺到したように思う。多くのユーザーにゲーミングPC価格高騰が現実手身を帯びていることを知らしめた。アイ・オー・データもSSDやHDDの1月以降の値上げを発表している。

順次値上げが適用となる-2026年1月時点

マウスコンピューターでは12月16日の時点で1月以降順次価格変更を行うということを公表していた。受注を停止中のサイコムでも一部パーツの値上げを適用していくということだ。

PCパーツの価格が高騰している要因

AIデータセンター向けメモリおよびSSD需要の増大

価格高騰の一番の要因は、AIデータセンター向けの需要が激増していることにある。AIの処理においては、GPUへのデータ転送を効率的に行うため、大容量かつ高速なメモリが要求される。転送速度が遅ければGPUとの間にボトルネックが発生してしまい、巨大なモデルを動かせなかったり、動作が極端に遅くなったりするのだ。実際にローカルLLMを動かしてみれば、いかにメモリ容量が重要であるかが痛感できるだろう。16GBや32GB程度では、すぐに負荷が100%に達し、動作が著しく重くなってしまう。

AIデータセンター向けメモリには、より高性能なHBM(High Bandwidth Memory)が採用されている。コンシューマー向けのDDRメモリでは、GPUの高速処理に転送スピードが追いつかないためだ。現在の生産ラインが、より高収益なAI用HBMへ傾倒したことで、一般消費者向けのメモリが供給不足に陥るという事態を招いている。メーカー側からすれば、より高い利益を得られるAI市場に注力するのは当然の経営判断といえる。そこには、筆者を含め一般人の想像をはるかに超えた巨大な需要が存在しているのだ。

同様に、生成AIの学習において膨大なデータを処理するためには、大容量ストレージも欠かせない。サーバー向けモデルともなれば、その容量は数十TBに及ぶ。また、学習内容が失われた際の保険として、定期的に学習状態を保存する「チェックポイント」の作成も必須だ。こうした背景から、利益率の低いコンシューマー向けモデルの生産はどうしても後回しにされてしまうのである。

世代交代によるDDR4の生産量減少

DDR5メモリへの世代交代が進む中、主要メーカーが相次いでDDR4メモリの生産終了(あるいは大幅な減産)を発表した。これを受け、DDR4メモリを必要とするデバイスメーカー各社が、安価なうちに確保しようと大量買い付けに走った結果、深刻な供給不足を招き価格が高騰している。一時は、最新規格であるDDR5メモリの価格を上回るほどの逆転現象さえ発生した。

今後の展開として、この旺盛な需要を鑑み、メーカー側が生産ラインの一部をDDR4に生産を再開する可能性もゼロではない。そうなれば、価格は落ち着きを取り戻すだろう。しかし、依然としてDDR4の供給不足が解消されなければ、ユーザーは否応なしにDDR5環境への移行を強いられることになる。その結果、DDR5メモリへの需要がさらに集中し、さらなる価格高騰を引き起こすリスクも懸念される。

NANDフラッシュの供給不足と各種コストの増加

キオクシアやSamsungなどのNANDメーカーが利益率を上げるために生産を意図的に抑えていたこともあり、急激にNANDフラッシュの供給不足が深刻になってきている。メモリの価格が上昇した直後は安定していたが、1か月ほど遅れて急に価格が高くなっている。チップの製造コストや物流コストが上昇していることも価格高騰の一因となっている。日本国内においても様々なものの価格が上がっていることを体感しているはずだ。大手メーカーであってもそれは避けられない。

長く続く円安

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出典:(Yahoo!ファイナンス, 2025)

海外生産となるメモリの価格について、円安が与える影響は無視できない。2025年4月以降円安が続き今は1$=155円前後で推移している。円安が進めば円の価値が下がり、海外製品を手に入れるにはより多くの円が必要となる。メモリ価格高騰の一因となっていることは間違いないだろう。政府も利上げで円安を抑制しようと動いているが、思ったほどコントロールできていない。今後も円安が続く可能性があるので、為替の動向を注視したい。

一般消費者の必要容量が増加

身近なところではパソコンの必要メモリが増えたことも要因として考えられそうだ。もちろん、企業のAI需要と比べるとその影響は微々たるものかもしれない。それでも小売店にユーザーが殺到することは容易に想像できる。ゲーミングPCの最低基準が16GBとなり、8GB搭載モデルはほとんど見かけなくなった。さらに、今では16GBでも足りず32GB以上を必要とするユーザーが増えているように思う。中には64GBや128GBを搭載するユーザーもいるぐらいだ。ゲームの要求スペックが上がったことに加えて、大容量メモリを必要とする画像生成AIなどAI関連ソフトの普及がメモリ容量の引き上げにつながっている。

今後の展望:メモリおよびSSD価格はいつ落ち着くのか?

当面の間、価格が落ち着くことはないというのが筆者の見解だ。ここで「当面」というのは、2026年から2027年前半までを指している。メモリおよびSSDに対する需要が減退する兆しはなく、供給が需要を満たす可能性は依然として低いと考えられるからだ。まず需要の側面では、やはり企業のAI投資の加速が挙げられる。

四季報を一通り読んでみると、各企業の概要欄に「AI」という文字が何度も登場することに気づくはずだ。業種を問わず、多くの企業がAIを活用して業務の効率化を図っている。最新のGemini 3やChatGPTを利用したことがある方なら、その進化の凄まじさに驚かされるのではないだろうか。AIは日々進化を続け、今や私たちの生活やビジネスになくてはならない存在となっている。

これだけの需要があれば、Google、Microsoft、Amazon、ソフトバンク、NTTデータといった巨人は、データセンターへの投資を止めることはないだろう。ソフトバンクは、2026年中に北海道・苫小牧でのAIデータセンター開業(ソフトバンクニュース, 2025)を目指している。ハイパースケーラーであるGoogleやMicrosoftの投資規模は言わずもがなであり、この勢いが2026年中に収束するとは到底思えない。

次に供給側(Samsung、SK Hynix、Micron、WD、キオクシア等)の事情を見てみよう。各社とも需要を満たすために工場建設など多額の投資を行っているが、その対象はあくまでAIデータセンター向けが中心だ。また、工場を建設しても実際に稼働して出荷が始まるまでには、数年単位の期間を要する。一般消費者にその恩恵が回ってくるのは、まだ先のことになるだろう。

半導体メーカーには、2022年から2023年頃のコロナ禍での苦い経験もあり、増産投資に対して慎重な姿勢も見られる。当時は半導体不足を受けて増産に踏み切ったものの、結果として供給過剰を招き、価格の暴落と巨額の赤字に苦しんだ。メーカー側も、現在のAIブームが一時的なバブルではないかという懸念を完全には拭い去れていない。そのため、現在は売上規模の拡大よりも利益率の向上に重点を置いており、必然的に高単価・高利益なAIデータセンター向け製品が優先されているのである。

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