
Ryzen 9 9955HXの性能比較&ベンチマーク検証を行っていく。Ryzen 9 8945HXの後継でZen 5アーキテクチャを採用した最新モデルとなる。16コア32スレッドと高いスペックを持ち、ゲームプレイにもクリエイティブ作業にも大活躍間違いなしだ。すでに海外メーカーを中心に搭載モデルが販売されている。価格は30万円オーバーと高めだ。搭載モデルは「Ryzen 9 9955HX搭載ゲーミングノートPC一覧」で紹介している。競合はIntelのCore Ultra 9 275HX(20コア20スレッド)となる。チップレット構造を採用するなど共通点も多い。
| 価格帯 | 人気 | CPU | GPU |
|---|---|---|---|
| 25万円以上 | 9 275HX/9 9955HX/AI 7 350 | RTX5090/RTX5080/RTX5070TiM | |
| 20万円-25万円 | AI 7 350/7 260 | RTX5070M/RTX5060M | |
| 15万円-20万円 | AI 7 350/i7-14650HX | RTX5060M/RTX5050M | |
| 10万円-15万円 | i7-13620H/5 240 | RTX5050M/RTX3050M | |
| 5万円-10万円 | i7-11800H | RTX3050TiM |
Ryzen 9 9955HX搭載モデルは最低でも30万円の予算が必要だ。当サイトの枠組みでは25万円以上となる。グラフィックボードをGeForce RTX 5060 Mobileまで落としても309,800円からだ。万人受けするモデルとは言えないが、それに見合う性能を持っている。クリエイティブ作業にも最適だ。5万円から10万円の価格帯は中古でのみ選択できることを補足しておく。
Ryzen 9 9955HXの概要
| コードネーム | Zen 5(Fire Range) |
|---|---|
| プロセス | 4nm |
| I/Oプロセス | 6nm |
| コア/スレッド数 | 16コア / 32スレッド |
| コア定格/最大クロック | 2.5 GHz/ 5.4 GHz |
| L2キャッシュ | 16MB |
| L3キャッシュ | 64MB |
| 内蔵GPU | Radeon 610M |
| PBP | 55W |
| MTP | 101W |
| 発売日 | 2025年01月06日 |
| 価格 | – |
| 特徴 (長所・短所) |
(+) 16コア32スレッドのハイエンドモデル (+) 競合を上回るゲーム性能・マルチコア性能を持つ (-) 搭載モデルのラインナップはそれほど多くない (-) ワットパフォーマンスは競合に劣る (-) 内蔵GPUの性能は高くない |
| 評価 |
・総合評価 9.0 ・ゲーム評価 9.0 |
Ryzen 9 9955HXの基本スペック
| Ryzen 9 9955HX | Ryzen 9 9955HX3D | Ryzen 9 8945HX | |
|---|---|---|---|
| コードネーム | Zen 5(Fire Range) | Zen 5(Fire Range) | Zen 4(Dragon Range) |
| チップ設計 | チップレット | チップレット | チップレット |
| プロセス | 4nm | 4nm | 5nm |
| ダイサイズ | 2x 70.6 mm² | 2x 70.6 mm² | 2x 71 mm² |
| プロセス(I/O) | 6nm | 6nm | 6nm |
| ダイサイズ(I/O) | 122 mm² | 122 mm² | 122 mm² |
| トータルコア(スレッド) | 16 / 32 | 16 / 32 | 16 / 32 |
| 定格クロック | 2.5GHz | 2.5GHz | 2.5GHz |
| 最大クロック | 5.4GHz | 5.4GHz | 5.4GHz |
| オーバークロック | 対応 | 対応 | 対応 |
| L2キャッシュ | 16MB | 16MB | 16MB |
| L3キャッシュ | 64MB | 128MB | 64MB |
| 対応メモリ | DDR5-5600 | DDR5-5600 | DDR5-5200 |
| 内蔵グラフィックス | Radeon 610M | Radeon 610M | Radeon 610M |
| 実行ユニット | 2 | 2 | 2 |
| グラフィックス周波数 | 2.20GHz | 2.20GHz | 2.20GHz |
| TDP | 55W | 55W | 55W |
| PPT | 101W | 101W | – |
| 搭載モデル価格 | 339,980円~(RTX 5070 TiM) | 413,820円~(RTX 5070 TiM) | 329,800円(RTX 5070 TiM) |
| 発売日 | 2025/01/06 | 2025/01/06 | 2025/04/23 |
Ryzen 9 9955HXはZen 5(Fire Range)世代のハイエンドモデルだ。Ryzen 9 8945HXの後継モデルでアーキテクチャが進化している。根幹部分である製造プロセスが5nmから4nmへと微細化された。IPC(Instructions Per Cycle)は10%程度向上している。より効率的に処理が行えるということだ。I/Oプロセスは6nmが維持されている。ダイサイズも122m㎡と変わっていない。
トータルコアは16コア32スレッドと高スペックだ。定格クロックは2.5GHz、最大クロックは5.4GHzと従来のRyzen 9 8945HXと同じ数値となる。ただし、Zen 5アーキテクチャになりIPCが向上しているので、同じクロック周波数でもより高いパフォーマンスを発揮できる。Ryzen 9 9955HXはオーバークロックをサポートしている。16MBのL2キャッシュと64MBのL3キャッシュ搭載だ。対応メモリはDDR5-5200からDDR5-5600とより高クロックなモデルをサポートしている。
内蔵グラフィックスはRadeon 610Mと共通だ。実行ユニットは2基でグラフィックス周波数は2.20GHzだ。内蔵グラフィックスの性能は低く基本的には外付けのグラフィックボードとの組み合わせが必要となる。TDPは55Wと共通だ。Ryzen 9 8945HXはPPTの記載はないが、Ryzen 9 9955HXと同じ101W前後ではないかと思う。搭載モデルの価格は+10,000円だ。実はRyzen 9 8945HXの方がリリース日が遅い。旧アーキテクチャに当たるZen 4アーキテクチャの有効活用といったところだろうか。
実はモバイル向けモデルにも3D V-Cacheを搭載したモデルがある。Ryzen 9 9955HX3Dは、Ryzen 9 9955HXに3D V-Cacheを搭載したモデルでより高いゲーム適性を持つ。L3キャッシュ容量は倍増の128MBとなる。その他のスペックは共通だが、実環境においてはやや消費電力が高くなる傾向にある。搭載モデルの価格は40万円オーバーと一気に跳ね上がる。よりターゲット層は狭まるはずだ。ゲームをメインに考えている方におすすめできる。

Ryzen 9 9955HXは新しいアーキテクチャとなったものの従来モデルと比べて大幅に性能が向上しているわけではない。同じグラフィックボードを搭載したRyzen 9 8945HX搭載モデルがあればそちらを選択する方がコストパフォーマンスは高くなる。もっともリセールなどを考えればより新しい世代のモデルを選択するのが無難だろう。
Ryzen 9 9955HX搭載ゲーミングノートPCの性能と特徴
モバイル向けの最上位に位置するCPU

Ryzen 9 9955HXは、2025年10月時点でもっとも性能の高いモバイル向けCPUの一つだ。上位には同じAMD製で3D V-Cache搭載のRyzen 9 9955HX3Dが位置している。ゲーム特化型のCPUとなっている。総合性能ではそれほどの性能差は生まれない。従来モデルのRyzen 9 8945HXと比べると3%程度処理性能が向上している。性能差を体感することは難しいのではないかと思う。
競合のCore Ultra 9 275HXよりも性能は高い。Ryzen 9 9955HXはIntelでいうところのPコアが16コアとスペック面で上回っている。あとはゲームやアプリケーションの最適化によってCore Ultra 9 275HXが上回ることもある。この辺りの見極めは難しいところだが、全体的に見ればRyzen 9 9955HXが上回っていると考えてよい。デスクトップ向けのRyzen 9 9950Xと比べると20%程度パフォーマンスは劣る。
TDPやPPTの違いや特性を考えれば妥当だろう。それでもRyzen 9 9900Xよりもパフォーマンスは高いモバイル向けモデルとしては十分だろう。GeForce RTX 5090 MobileやGeForce RTX 5080 Mobileなどハイエンドグラフィックボードとの組み合わせがおすすめだ。
ワットパフォーマンスはやや低い
| 製品名 | ゲーム平均 | ゲーム最大 | アイドル平均 |
|---|---|---|---|
| Core Ultra 7 255HX | 35.4W | 80.2W | 8.7W |
| Core Ultra 9 275HX | 39.6W | 103.3W | 8.5W |
| Ryzen 9 9955HX | 44.7W | 114.8W | 12.1W |
| Ryzen 9 9955X3D | 48.3W | 119.1W | 12.6W |
| Core i7-14650HX | 57.9W | 70.4W | 9.1W |
| Ryzen AI 7 350 | 58.8W | 70.5W | 3.9W |
ゲームプレイ時の平均消費電力及び最大消費電力そしてアイドル時の平均消費電力をまとめている。Ryzen 9 9955HXのゲームプレイ時の平均消費電力は44.7Wとなる。最大消費電力は114.8Wだ。Core Ultra 9 275HXと比べると10%以上消費電力が高いことになる。性能差は10%もないのでワットパフォーマンスではCore Ultra 9 275HXが上だ。2つのコアを組み合わせたハイブリッドコアアーキテクチャがうまく機能している。
ゲーミングノートPCのシステムとして考えた場合はそこまで気にしなくてもよい数値ではないかと思う。Ryzen 9 9955HXを搭載したモデルは総じて高性能なグラフィックボードを搭載していてCPUがシステム全体に与える影響は小さいからだ。また、ゲーミングノートPCの排熱効率や冷却システムにもコストが掛けられていてCPUの消費電力が高いからといってなにかマイナスが発生するわけではない。バッテリー駆動時間はそもそもゲーミングノートPCには期待できない。
搭載モデルのラインナップは僅少
Ryzen 9 9955HXを搭載したゲーミングノートPCのラインナップはそれほど多くない。高価格帯のハイエンドモデルであることに加えAMDのラインナップが分散していることにも要因があるのではないかと考えている。そもそもハイエンドのHXシリーズ自体ターゲット層が狭くラインナップがそれほど増えることはない。Ryzen 9 9955HXと性能の近いモデルとしてRyzen 9 9955HX3D・Ryzen 9 7945HX3D・Ryzen 9 8945HX・Ryzen 9 8940HX・Ryzen AI Max+ 395と豊富なラインナップがある。おそらく今後もRyzen 9 9955HX搭載モデルが爆発的に増えることはなさそうだ。
正直Ryzen AI Max+ 395を含めてもこれらのモデルの性能差を体感することが難しくユーザーからすればRyzen 9 9955HXに絞り込む必要はない。組み合わせるグラフィックボードや好みのブランドなどの要素が選ぶ基準となりそうだ。メーカーもRyzen 9 8945HX搭載モデルに注力したり、Ryzen AI Max+ 395に注力したりと考え方次第で取り扱いモデルが変わってしまう。Ryzen 9 9955HX搭載モデルの購入を考えている方は他のモデルも合わせて検討するとよい。
Ryzen 9 9955HXのベンチマーク一覧
Cinebench 2024
Cinebench 2024でのマルチコアは2,026pt、シングルコアは130ptとなる。モバイル向けモデルではトップクラスのCPUだ。数年前まではモバイル向けモデルでここまでのスコアが出るとは想像もできなかった。デスクトップ向けのCore Ultra 7 265Kと近いスコアが出ている。前世代のRyzen 9 8945HXと比べるとマルチコアが3%弱高く、シングルコアも12%高い。シングルコアの伸びが大きいことがわかる。ここはIPCの改善がプラスに働いていそうだ。競合のCore Ultra 9 275HXと比べるとマルチコアが2%弱低く、シングルコアが4%弱低くなっている。
Cinebench R23
Cinebench R23でのマルチコアは34,189pt、シングルコアは2,127ptとなる。従来モデルのRyzen 9 8945HXよりもマルチコアが2%弱高く、シングルコアも8%高い。競合のCore Ultra 9 275HXと比べてもマルチコアが4%弱高く、シングルコアも3%弱高い。Cinebench R23のスコアはデスクトップ向けのCore Ultra 7 265Kと同等だ。3D V-Cache搭載のRyzen 9 9950X3Dになるとマルチコアが6%弱高く、シングルコアも2%弱高くなる。
Blender
Blenderのスコアは551.76ptと高い。3D V-Cache搭載のRyzen 9 9950X3Dとのスコア差は5%程度となる。Core Ultra 9 275HXよりも4%弱高く、Ryzen 9 8945HXよりも10%高い。デスクトップ向けのCore Ultra 7 265Kを上回るスコアは圧巻だ。
Handbrake
動画のエンコードにかかる時間をまとめている。処理にかかる時間はH.265で1分48秒、H.264で4分27秒だ。Ryzen 9 8945HXよりも処理が速い。Core Ultra 9 275HXと比べてもH.265では3秒遅いが、H.264では9秒速い。デスクトップ向けのCore Ultra 7 265Kとの性能差は大きい。特にH.265では54秒も速くなっている。TDPの差が出ているのかもしれない。
7-Zip
Zipファイルの展開及び圧縮速度をまとめている。Ryzen 9 8945HXよりも展開速度が10%弱早く、圧縮速度も16%速い。競合のCore Ultra 9 275HXと比べても展開速度が20%弱速く、圧縮速度も14%弱速い。
Adobe Photoshop
PugetBenchを活用してPhotoshopのパフォーマンスを計測した。Ryzen 9 9955HXのスコアは9,296ptとなる。従来モデルのRyzen 9 8945HXより278pt高い。競合のCore Ultra 9 275HXと比べても5%程度上回っている。Ryzen 9 9955HX3Dとのスコアは差2%程度だ。モバイル向けモデルとしては高いパフォーマンスを発揮する。
Ryzen 9 9955HX搭載ゲーミングノートPC一覧
ROG Strix G16 G614FM(ASUS)
価格:309,980円+送料3,300円
液晶:16.0インチWQXGA 240Hz
CPU:Ryzen 9 9955HX
GPU:GeForce RTX 5060 Mobile
メモリ:DDR5-5600 32GB
ストレージ:SSD 1TB Gen4 NVMe
電源:280W ACアダプター
コスパ:調査中
16.0インチWQXGA(2560×1600)搭載のディスプレイを搭載している。240Hz対応で快適なゲームプレイが約束される。本体重量は約2.50kgだ。持ち運びをするにはやや重めといえる。GPUにはBlackwell世代のミドルクラスであるGeForce RTX 5060 Mobile搭載だ。CPU寄りのモデルといえる。メモリDDR5-5600 32GB・SSD 1TB Gen4 NVMeと構成も平均以上だ。電源は280W ACアダプター付属となる。ROG INTELLIGENT COOLINGシステム搭載で高い冷却性能を持っている。7本のヒートパイプと3つのファンで効率的に冷却できる仕組みだ。ハイエンドモデルでは冷却性能も重要なポイントとなる。
GALLERIA ZL9R-R57T-6(ドスパラ)
価格:339,980円+送料3,300円
液晶:16.0インチWQXGA 300Hz
CPU:Ryzen 9 9955HX
GPU:GeForce RTX 5070 Ti Mobile
メモリ:DDR5-5600 32GB
ストレージ:SSD 1TB Gen4 NVMe
電源:240W ACアダプター
コスパ:調査中
ドスパラが販売するゲーミングノートPCだ。国内メーカーでRyzen 9 9955HX搭載モデルは珍しい。16.0インチWQXGAディスプレイを搭載している。リフレッシュレートは驚異の300Hz対応だ。シューティングゲームにも適している。GPUにはハイクラスのGeForce RTX 5070 Ti Mobileを搭載している。電源は240W ACアダプター付属だ。メモリDDR5-5600 32GB・SSD 1TB Gen4 NVMeと構成も充実している。
Vector-A18-HX-A9WIG-0353JP (MSI)
価格:559,799円+送料770円
液晶:18.0インチWQXGA 240Hz
CPU:Ryzen 9 9955HX
GPU:GeForce RTX 5080 Mobile
メモリ:DDR5 64GB
SSD:1TB NVMe
電源:400W ACアダプター
コスパ:調査中
18.0インチWSQXGAディスプレイ搭載だ。大型モニター搭載でゲームに没頭できる。本体重量は約3.6kgとかなり重く持ち運びには不向きだ。Ryzen 9 9955HX×GeForce RTX 5080 Mobile搭載のハイエンドモデルだ。電源は400Wと大容量だ。メモリDDR5 64GB・SSD 1TB NVMeと圧巻の構成だ。ゲーミングノートPCでも性能面で妥協をしたくないから候補に入れてもよいだろう。





















