dlss4.5-nvidia*上記画像をクリックするとNVIDIAの公式サイトに遷移

本記事では、NVIDIAが提供するAI深層学習を用いたポストプロセス技術「DLSS(Deep Learning Super Sampling)」について解説していく。AMDの「FSR」と並ぶアップスケール技術の代表格であるDLSSは、描画負荷を抑えつつ高画質な映像出力を実現する、ゲーマーにとって革新的な機能といえる。正直、筆者はゲームをプレイしていてDLSSによる画質の違い(DLSS 4.5とDLSS 4.0の場合)をはっきりと認識できるわけではないが、違和感なくフレームレートを高められるという点では十分価値がある。

特にCES 2026で発表された最新のDLSS 4.5では、AIモデルの刷新により、さらなる高画質化とフレームレートの向上が図られている。負荷の大きい「レイトレーシング」とも極めて相性が良く、高いフレームレートを維持したままリアルな光の表現を楽しむことが可能だ。対応するタイトルについては、「DLSS対応ゲーム一覧」にまとめているので、あわせてご覧いただければと思う。

*ポストプロセスとは

ポストプロセスとは、映像出力前に行う映像処理全般のことを指す。DLSSの場合はAIによる映像生成・最適化技術の総称と捉えるとよいだろう。NVIDIAのDLSSは、今や単なるアップスケーラーではなくなっている。本来「ポストプロセス(出力前の後処理)」の一環として機能するDLSSだが、DLSS 3.0以降はAIによる映像生成・最適化技術の総称へと進化を遂げた。この「AIの力」をフル活用することで、レイトレーシングのような高負荷な環境でも、ネイティブ解像度を凌駕するパフォーマンスと画質を実現している。

DLSSの使用イメージ

DLSS 3.0のパフォーマンスを計測した。後日最新のDLSS 4.5へアップデートする予定だ。これまで以上に高フレームレートを実現できる。

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「Cyberpunk 2077」における、Core i9-13900KとRTX 4060 Ti 16GBの検証データがこちらだ。レイトレーシング・ウルトラ設定時のフレームレートは「71」となる。カクつきを感じることはない水準だが、高リフレッシュレートモニターを愛用している方なら、滑らかさが少し物足りないと感じるかもしれない。「せっかくのゲーミングモニターなら、もっと高いフレームレートで動かしたい」——そう思うのはゲーマーとして当然の心理だろう。DLSSがその悩みを解決してくれる。

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レイトレーシング・ウルトラ設定下でDLSS 3.0(FG)を適用したところ、フレームレートはネイティブ比60%増の「114(+43)」を記録した。重量級タイトルでの高リフレッシュレート維持において、DLSSはもはや不可欠な存在と言える。特筆すべきは画質のクオリティだ。DLSS 4.0以降、AIモデルがTransformerベースへと移行したことで、画像構成の精度が飛躍的に高まっている。これにより、単なるアップスケールを超え、ネイティブ以上にジャギーやチラつきを抑えたクリアな描写を実現できる。映像が破綻することなくフレームレートを上げられるならメリットしかない。

DLSSの概要(定義やメリット etc.)

DLSS(Deep Learning Super Sampling)とは

DLSSは、深層学習(AI)を活用した「超解像アップスケール技術」だ。具体的には、ゲーム画面を一度低い解像度でレンダリングし、AIがそれを高解像度へと描き直して出力する。いわば、AIがリアルタイムで低画質な映像を補完し、高精細な映像へ変換してくれる仕組みだ。この技術の裏側では、NVIDIAのスーパーコンピューターが、超高画質な画像と低画質な画像を繰り返し比較・学習している。その学習データがドライバーを通じてユーザーのPCへ届けられ、グラフィックボード上の「Tensorコア」がリアルタイムで推論(補完処理)を行うことで、効率的な描画が可能になるのだ。

「上げる」DLSSと「下げる」DSR/DLDSR

よく混同される技術に、Maxwell世代(GeForce GTX 900番台)から登場した「DSR/DLDSR」があるが、これらはDLSSとは逆のプロセスを辿る。つまり、DSR/DLDSR(ダウンスケール)では、モニター解像度以上の高画質(最大4倍)でレンダリングを行い、それをモニターのサイズに凝縮して出力することで、緻密な画質を実現する。ただし、負荷が非常に高いため、GPU性能に余力がある環境向けの設定だ。対して、DLSS(アップスケール)では低解像度で処理するため、GPUへの負荷を劇的に下げつつ、AIの力で高画質を維持できる。

DLSSがもたらすメリット一覧

  • フレームレートの向上
  • 描画負荷を抑えることで、より滑らかな動作を実現可能だ。

  • 高画質化
  • 従来のアンチエイリアス(TAAなど)よりもエッジが鮮明になり、レイトレーシング併用時のパフォーマンス低下も補える。初期バージョンと比べると画質は大きく改善しているといえる。

  • ミドルクラスの救世主
  • 60番台のグラフィックボードでもWQHD以上の環境で快適に遊べるようになる。当サイトのグラフィックボード性能スコア表における20,000以下のモデルでも対応しやすくなる。

DLSSを活用すれば、最新のPCに買い替えなくても高解像度でのプレイが可能になる。

競合技術「AMD FSR」との違い

NVIDIA DLSS AMD FSR
仕組み AIによる深層学習(AI推論) アルゴリズムによる処理
専用コア 必要(Tensorコア) 不要
互換性 RTXシリーズ限定 幅広いGPU(Radeon以外も可)
画質傾向 過去フレームも参照し、
非常に高精度
現在の1フレームを処理
(*Verによって異なる)
導入の壁 独自技術のためやや高い オープンソースで導入しやすい


AMDも同様の技術「FSR(FidelityFX Super Resolution)」を展開しているが、DLSSとは設計思想が異なる。FSRは専用コアを使わないため汎用性が高い一方、通常の演算ユニットを消費するため、環境によってはパフォーマンスの伸びに限界がある。その点、独立したAIコアを持つDLSSは、画質と速度の両立において一歩リードしていると言える。

DLSSのバージョンと進化

バージョン リリース日 学習モデル マルチフレーム生成
(RTX 50シリーズ)
フレーム生成
(RTX 40シリーズ)
レイ再構築
(全てのRTXシリーズ)
超解像度
(全てのRTXシリーズ)
DLSS 4.5 2026年01月 第2世代Transformerモデル 6X 2X
DLSS 4.0 2025年01月 第1世代Transformerモデル 4X 2X
DLSS 3.5 2023年08月 CNN(畳み込みニューラルネットワーク) 2X 2X
DLSS 3.1 2023年02月 CNN(畳み込みニューラルネットワーク) 2X 2X ×
DLSS 3 2022年10月 CNN(畳み込みニューラルネットワーク) 2X 2X ×
DLSS 2.3 2021年11月 CNN(畳み込みニューラルネットワーク) × × ×
DLSS 2 2020年03月 CNN(畳み込みニューラルネットワーク) × × ×
DLSS 1 2018年09月 CNN(畳み込みニューラルネットワーク) × × ×

2018年の登場から8年。DLSSは、もはや単なるアップスケーラーを超え、独自の進化を遂げた熟成の域に達している。特に大きな転換点は、学習モデルが第2世代Transformerへと進化したことではないかと思う。これにより、従来のCNN(畳み込みニューラルネットワーク)では捉えきれなかった画像全体の相関関係を正確に把握できるようになり、驚異的な画質向上が実現した。

しかし、最新のDLSS 4.5を運用する上で、自作PCユーザーが注意すべきハードウェアの壁も浮き彫りになっている。第2世代Transformerモデルは演算効率を最大化するためにFP8(8ビット浮動小数点)精度を採用しているが、このネイティブ対応はGeForce RTX 50/40シリーズ以降に限られる。

FP8にネイティブ対応していないGeForce RTX 30/20シリーズでは、演算のスループットが追いつかず、逆にパフォーマンスが大幅に低下する(最大20%以上のFPS低下)ケースが報告されている。そのため、旧世代カードのユーザーは最新のプリセットを盲信するのではなく、あえて従来のCNNベースに近い挙動を持つ「Preset K(DLSS 4.0)」を選択することが、パフォーマンスと画質のベストバランスを保つための賢い選択となる。

DLSS 4.5 NEW!

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CES 2026で発表された「DLSS 4.5」は、DLSS 4.0のメジャーアップグレード版としてすでに導入が始まっている。最大の進化点は、AIモデルが第2世代Transformerへと移行し、フレーム生成機能が大幅に強化されたことだ。新たに採用されたダイナミックマルチフレーム生成では、ゲーム内の状況に応じてAIが生成枚数をリアルタイムに最適化してくれる。これにより、最大6倍(6X)という驚異的なフレーム生成を実現しつつ、懸念されるレイテンシの低減も両立している。

パストレーシング環境においても、4K解像度で360Hzという極めて高い水準の描写が現実的になった。また、第2世代Transformerモデルの恩恵により、雨の粒子や遠景のフェンスといった細部表現の正確性が向上し、ゴースト現象も劇的に抑えられている。一見すると微細な差かもしれないが、高リフレッシュレートの維持が容易になったことで、かつてないほど快適なゲーム体験が可能だ。

DLSS 4.0

2025年1月のCES 2025にて、満を持して「DLSS 4.0」が発表された。バージョンの繰り上げは、本技術がさらなる飛躍を遂げたことを象徴している。最大のトピックは、GeForce RTX 50シリーズから導入されたマルチフレーム生成への対応だ。従来のフレーム生成は、1つの実フレームに対して1つの追加フレームを挿入(2倍:2X)していたが、新技術では最大3枚までの追加生成が可能(4X)となった。これにより、これまでの限界を超えた圧倒的な高フレームレートを実現している。

この進化を支えるのが、学習モデルの抜本的な刷新だ。DLSS 4.0では、従来のCNN(畳み込みニューラルネットワーク)からTransformerモデルへと変更された。CNNは近くのピクセル同士の関係性を捉えるのは得意な反面、画面内の離れた要素同士の相関関係を把握するのが苦手という側面があった。一方のTransformerは、画像全体のコンテキスト(文脈)を統合的に処理できるため、より安定したフレーム生成が可能です。GPU性能の向上とアルゴリズムの最適化によって、計算負荷の高いTransformerのリアルタイム運用が可能になったことで、4倍(4X)や6倍(6X)といった高倍率な補完への道が切り拓かれました。6倍はDLSS 4.5で実現済みだ。

DLSS 3.5

2023年8月、NVIDIAは「DLSS 3.5」を発表した。同年秋頃の導入が予定されているこのアップデートの目玉は、新機能「Ray Reconstruction(レイ再構成)」によるレイトレーシング品質の劇的な向上だ。従来のレイトレーシング処理では、ゲームエンジンが生成したジオメトリやマテリアルに対して光線を飛ばし、照明効果のデータを取得する。しかしながら、リアルタイム性を維持するために光線の数を絞る必要があり、そのままでは画面がノイズだらけで描写にならない。

これを補うのが、従来の「デノイザー(ノイズ除去器)」だ。デノイザーは、過去のフレームを利用する「Temporal Accumulation(時間的蓄積)」や、隣接するピクセルから情報を補完する「Spatial Interpolation(空間的補間)」という手法でノイズを埋めていた。しかし、これらの手動調整された手法は完璧ではなく、ノイズ除去の過程で細部がぼやけるブラーが発生したり、不自然な映像を生成したりする課題があった。

そこで登場したのが「Ray Reconstruction」だ。この技術は、AI(機械学習)がマテリアルやジオメトリの情報に加え、モーションベクターなどの多大なデータを直接処理し、光線をインテリジェントに再構築する。驚くべきことに、手動のデノイザーを介すよりも、AIが統合的に処理を行うことで、より鮮明で忠実なグラフィックス描写が可能となったのだ。

対応タイトルには「Cyberpunk 2077」や「Alan Wake 2」、「Portal with RTX」といった大作が並び、さらに「D5 Render」や「Chaos Vantage」といったプロ向けレンダラーにも対応予定だ。ゲームだけでなく、クリエイティブな制作現場においてもその真価を発揮する点に注目が集まっている。

cyberpunk2077-dlss3.51出典:(NVIDIA, 2023)

Ray Constructionのおかげでより適切なヘッドライト照明が実現している。手動のデノイザーの弱点を克服していると言える。

cyberpunk2077-dlss3.52出典:(NVIDIA, 2023)

DLSS 3.5の有効化で、ビルボードの反射やネオンライト正確に描写されている。

DLSS 3.1

2023年2月にDLSS 3.1が利用可能となった。今回のアップデートでは、DLSSの自動更新・異なるスケーリング比率とゲームコンテンツに合わせたDLSSのカスタマイズ設定・パフォーマンスの最適化・バグの修正などが実施されている。マイナーアップデートと言えるだろう。

DLSS 3

2022年10月に最新のDLSS 3.0がリリースされた。通常のレンダリングと比べて性能が最大で4倍になる画期的なものだ。グラフィックス負荷の高いタイトルでも快適にゲームを行える。DLSS 2とは違ってGeForce RTX 40シリーズでのみ使用できる技術となる。従来のアップスケールに加えて「Frame Generation(フレーム生成)」が追加されている。2つを組み合わせることで高フレームレートを実現できる。

フレーム生成自体はGPUで後処理として実行されるので、CPUがボトルネックとなっていてもフレームレートを高めることが可能だ。つまり、これまではあまり恩恵のなかったフルHD環境でもメリットがあるということになる。なお、フレーム生成の弱みであるレイテンシを軽減するためにNVIDIA Reflexが搭載されている。CPUとGPUのバランスを取りより滑らかなゲーム描写を実現している。

ゴーストの低減やエッジの滑らかさの向上など画質も向上している。2022年10月時点で、35以上のゲームやアプリケーションがサポートを表明(NVIDIA, 2022)しているということだ。

DLSS 2.3

2021年11月にDLSS 2.3が発表された。ゲーム上のモーションベクターの優れた活用で動きのある物体の描写・パーティクル再構築・ゴースティングなどが改善されている。下記2つの例を見ればよりイメージしやすくなるのではないかと思う。

dlss2.3-cyberpunk出典:(NVIDIA, 2021)

Cyberpunk 2077でのスクリーンショットだ。車の左サイドミラーの端からDLSS 2.1では白いものが続いている。右側のDLSS 2.3ではその白いものがなくなりゴーストが軽減されていることがわかる。

dlss2.3-doom出典:(NVIDIA, 2021)

DOOMの例もわかりやすい。火の粉がゴーストによって線のようになっている。DLSS 2.3ではかなり改善されていてより忠実に再現されている。

DLSS 2

2020年3月にNVIDIAが、DLSSのアップデートバージョンであるDLSS 2を発表した。GeForce RTX 30シリーズ/RTX 20シリーズでも利用可能だ。AIネットワークが見直されて、DLSS 1比で描写性能が最大2倍となっている。より高画質なグラフィックスも実現している。Quality・Balanced・Performance・Ultra Performanceという4つの画質モードを選択できるようになった。ユーザーの好みやゲームの特性に合わせて柔軟に対応できるのは嬉しい。

DLSS 2.0では1つのネットワークで複数のタイトルに対応できるようになった。つまり、タイトルごとに全てのトレーニングを行う必要がなくなったということだ。火・水などの共通エフェクトについては、ゲームごとに学習させる必要がなくなりゲーム運営側の実装ハードルが引き下げられている。

結果的にDLSS対応タイトルが増えるという好循環が生まれる。その後1回のメジャーアップデートがリリースされてより品質が向上している。2021年6月にAMDが、DLSSの対抗技術としてFidelityFX Super Resolutionをリリースした。対応ハードウェアが増えるという点でユーザーにとってメリットが大きい。

DLSS 1

2018年9月に発売のGeForce RTX 20シリーズで初めてDLSSが搭載された。リリース時点ではBattlefield Ⅴ・Shadows of the Tomb Raider・モンスターハンターワールド・Metro Exodusなど対応タイトルも少なく活用しているユーザーも少なかった。ゲームタイトルごとにニューラルグラフィックスネットワーク(NGX)で学習する必要があり、実装のハードルが高かったのだ。

その他にもフルHD環境には対応していなかったり、ノイズ・乱れ・ぼやけが出てしまったりとまだまだ改善の余地があるバージョンだった。そうは言ってもこのバージョン1.0がなければ今のDLSS自体がないわけで存在価値が大きい。NVIDIAはゲームのAI分野において大きな一歩を踏む出すことになった。

DLSS対応ゲーム一覧 2026/2/4更新!

タイトル DLSS Ver. フルレイトレ レイトレ
Alan Wake 2 DLSS 4.0
黒神話: 悟空 DLSS 4.0
Bright Memory: Infinite DLSS 3.0 ×
Cyberpunk 2077 DLSS 4.0
Dune: Awakening DLSS 4.0 × ×
Farming Simulator 25 DLSS 3.0 × ×
フォートナイト DLSS 2.0 ×
Forza Horizon 5 DLSS 3.0 ×
Marvel’s Spider-Man Remastered DLSS 3.0 ×
Microsoft Flight Simulator DLSS 4.0 × ×
Portal With RTX DLSS 3.0
S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl DLSS 4.0 ×
The Last of Us Part II Remastered DLSS 4.0 × ×
ウォッチドッグス レギオン DLSS 2.0 ×

DLSS 4は250以上のタイトルで利用可能となっている。今後も増えていくだろう。最新のGeForce RTX 50シリーズを選択する価値はある。

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