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ゲーミングPCにおいてCPUクーラーは空冷と水冷のどちらがよいのかを検証していく。ゲーミングPCを購入あるいは自作PCを作る上で空冷にするべきか、水冷にするべきかは悩むところだ。実際に空冷と水冷でどの程度パフォーマンスに差が出るのかを見ていこう。コスト的には空冷の方が有利だ。まずはCPUクーラーに関する仮説を見てから実際の検証結果へと読み進めていただければと思う。

CPUクーラーに関する2つの仮説

  • 水冷クーラーの方が冷却効果が高い
  • Core i9以上なら水冷クーラーが好ましい

水冷クーラーの方が冷却効果が高いというのはイメージがしやすいように思う。Intelの公式でもCore i9シリーズでは水冷クーラーが推奨されていることからも納得しているユーザーは多いだろう。ゲーミングPCでもCore i9シリーズ搭載モデルでは水冷クーラーが選択されるのが一般的だ。

実際にCore i9シリーズなら水冷クーラーを選ぶべきかのか検証していく。ミドルの240mm水冷クーラーとハイエンドの空冷クーラーとの性能差は気になるところだ。また、ハイクラス相当のCore i7-13700においてもCPUクーラーによるパフォーマンス差を見ていく。

テスト環境

360mm水冷240mm水冷ハイエンド空冷ミドル空冷
イメージ360mmsuirei240mmsuireihighcoolermiddlecooler
PCケースSMZ-2WBT-ATXSMZ-2WBT-ATXSMZ-2WBT-ATXSMZ-2WBT-ATX
CPUCore i9-14900KCore i9-14900KCore i9-14900KCore i9-14900K
CPUクーラーDEEPCOOL LE720
(12,080円)
DEEPCOOL LE520
(8,980円)
DEEPCOOL AK620
(8,880円)
DEEPCOOL AK400
(4,120円)
GPUGeForce RTX 4090GeForce RTX 4090GeForce RTX 4090GeForce RTX 4090
メモリDDR5-5600 32GBDDR5-5600 32GBDDR5-5600 32GBDDR5-5600 32GB
マザーボードMSI MPG Z790MSI MPG Z790MSI MPG Z790MSI MPG Z790
電源玄人志向1200W PLATINUM玄人志向1200W PLATINUM玄人志向1200W PLATINUM玄人志向1200W PLATINUM

今回は長尾製作所×シミラボコラボの2WAYベンチテーブル「SMZ-2WBT-ATX」を使用した。同じ環境を構築しやすいからだ。PCケースを使用するとエアフローの問題が生じるため同じ環境を作るのは難しい側面がある。CPUはIntel第14世代のフラグシップモデルであるCore i9-14900Kだ。PL1とPL2は無制限としている。

メモリはDDR5-5600 32GBだ。グラフィックスはAda Lovelace世代のハイエンドであるGeForce RTX 4090を選択した。現行最強の組み合わせと言える。マザーボードはMSI MPG Z790だ。電源ユニットは1200W PLATINUMを採用している。後日CPUをCore i7-13700に変更して同様の検証を行った。

各CPUクーラーの性能を検証【i9-14900K】

Cinebench 2024

cinebenchr24
Cinebench 2024はCPUのレンダリング性能を計測するソフトウェアだ。全コアに負荷が掛かるのでクーラーの性能を測るのに適している。

cinebenchscore-i9-14900k
CPUクーラーによってスコアに少しだけ差が生まれている。ミドル空冷からハイエンド空冷で1%アップ、ハイエンド空冷から240mm水冷で2%アップ、240mm水冷から360mm水冷で1%アップだ。360mm水冷とミドル空冷でのスコア差は4%だ。空冷クーラーと水冷クーラーで差があることは間違いないが、グラフから受けるインパクトほど性能差があるわけではない。

cinebenchclock-i9-14900k
ミドル空冷についてはPコアの平均クロックが他のモデルよりも低い。一方で、Eコアの平均クロックは他よりも高い。冷却性能が低い分だけ高効率コアのクロックを引き上げているのではないかと思う。360mm水冷がもっとも高いクロック周波数を実現している。スコア的には240mm水冷の方が上だが、Pコアのクロック周波数はハイエンド空冷の方が高いのは興味深い。

cinebenchwatt-i9-14900k
消費電力は360mm水冷が一番高く270.8Wだ。次いでハイエンド空冷が高い。これは平均クロックが高いことからも予想できる。ミドル空冷は248.3Wと控え目だ。CPUパッケージ温度はミドル空冷が最も高い。冷却性能的にやや厳しいと言えそうだ。Core i9シリーズならハイエンド空冷以上がよいだろう。

FF14

ff14
FF14でCPUクーラーのパフォーマンスを見ていこう。ベンチマークソフトがあるので客観的に性能を計測しやすい。

ffscore-i9-14900k
FF14のスコアはCPUクーラーのパフォーマンス順に並んでいる。360mm水冷とミドル空冷のスコア差は5%弱だ。

ff14-i4900k
360mm水冷がもっともクロック周波数が低い結果となった。トップのスコアを出しているにもかかわらずクロック周波数が低いのは、FF14のベンチマークではハイパースレッディングがあまり機能せずその数値を取り除いたからかもしれない。Eコアはハイエンド空冷がもっとも高いスコアとなっている。もっともEコアが果たす役割は小さくそこまで基にしなくてもよさそうだ。

ff14watt-i9-14900k
水冷クーラーは消費電力・温度共に低い結果だ。ミドル空冷だと温度は63.5℃とやや高い数値になる。クーラーの差が出ているのは明らかだ。

各CPUクーラーの性能を検証【i7-13700】

Core i7-13700での検証を追加した。Core i7-13700ではCPUクーラーによってパフォーマンスが変わることはなかった。空冷クーラーでも十分あパフォーマンスが出ていることがわかる。テスト環境はCore i9-14900Kと同じでCPUのみ変更している。

Cinebench 2024

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i7-13700cooler-cinebenchscore

360mm水冷がトップのスコアだが、その他のモデルはやや想定外だ。240mm水冷は1,493と空冷クーラーよりも劣る結果となった。スコア差で言えば3%程度とは言え気になるところだ。正直原因がわからない。

i7-13700cooler-cinebenchclock

クロック周波数も予想とは異なる結果となった。もっとも冷却性能が低いはずのミドル空冷がPコア・Eコア共に高い。次いで360mm水冷、ハイエンド空冷が続く。240mm水冷はやはり振るわない。

i7-13700cooler-cinebenchtemp

消費電力は240mm水冷が最も低いが、温度は一番高い。この結果から言えば240mm水冷クーラーがもっとも冷却効果が低いことになる。また、360mm水冷クーラーについてもミドル空冷とそこまで消費電力・温度が変わっているわけではない。Cinebench 2024のスコアも同等なので360mm水冷クーラーの有効性を証明することはできない。

FF14

ff14
i7-13700ff14-score
FF14のスコアは高性能な水冷クーラーなほどスコアが低くなっている。360mm水冷クーラーとミドル空冷のスコア差は6%前後だ。おそらくCPUクーラーの差というよりもグラフィックボードの問題ではないかと思う。

i7-13700ff14-clock

平均クロックについてはCPUクーラーの性能に比例して高くなっている。360mm水冷ではPコア平均が1376.2で、Eコア平均が583.8とトップだ。ミドル空冷クーラーとの差は大きい。これでスコアがCPU以外にあるのではないかと予測できる。

i7-13700ff14-temp
消費電力と温度も性能に比例して高くなっている。平均クロックを見ればこれも納得できる。

検証結果の考察

検証の結果2つの仮説「水冷クーラーの方が冷却効果が高い」・「Core i9以上なら水冷クーラーが好ましい」が正しいことを証明できた。Cinebench 2024でもFF14でも360mm水冷クーラーを搭載したケースが最も高いスコアを記録している。冷却性能が高い分CPUの性能を引き出しやすいということだろう。

温度についてはCinebench 2024ではハイエンド空冷よりも0.5℃高くなったが、スコアが高いこと及び平均クロック周波数が高いことを考慮すれば納得できる。FF14では360mm水冷クーラーが最も消費電力が低くかつ温度も低い。にも関わらずスコアが最も高くなった。これらの結果からCore i9-14900Kでは360mm水冷クーラーが好ましいと結論づけられるだろう。

今後の課題

今回の検証には課題があることも事実だ。特にゲームのベンチマークについてはFF14だけでは不十分で、負荷の異なる複数のタイトルについても検証するべきだろう。FF14でのベンチマークではCore i9-14900KのPコア及びEコアのクロック周波数が低かった原因についてもう少し深掘りしたいところだ。CPUあるいはCPUクーラーの差ではないように思う。

Cyberpunk 2077・Forza Horizon 5・FF15などベンチマークソフトが用意されていて客観的にパフォーマンスを計測できるタイトルを増やして再度検証したい。また、Core i5シリーズなど下位モデルでも水冷クーラーが有効なのかについても検証する予定だ。Core i7-13700の結果からわかる通りグレードが低くなればCore i9-14900Kほど発熱量も大きくなく空冷クーラーでも十分なパフォーマンスを引き出せるのではないかと思う。