CPUの2大メーカーであるIntel CoreとAMD Ryzenの特徴を比較していく。BTOパソコンで購入できるIntel Core Ultra 200S/Intel第14世代Core iシリーズとAMD Ryzen 9000/Ryzen 7000/Ryzen 5000/4000シリーズを取り扱う。なお、Ryzen 7000/5000/4000シリーズはBTOパソコンでは人気だが、単体CPUの在庫は減少傾向にありRyzen 9000シリーズへと世代交代が進んでいる。
世代の異なるモデルが入り乱れていてユーザーからすると複雑に感じてしまうかもしれない。まずは次の項目の比較表を見て欲しい。これでざっくりと両メーカーの特徴を把握できるはずだ。各CPUの性能や価格の詳細については、「CPU比較表【性能ベンチマーク・コスパが丸わかり】」を参考にしてほしい。
Intel CoreとAMD Ryzenの比較表【概要】
Core Ultra 200S | Intel第14世代 | Ryzen 9000 | Ryzen 7000 | Ryzen 5000/4000 | |
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発売日 | 2024年10月24日 | 2023年10月17日 | 2024年08月08日 | 2022年09月27日 | 2020年10月09日 |
ラインナップ | Core Ultra 9 285K Core Ultra 7 265K(F) Core Ultra 7 265(F) Core Ultra 5 245K(F) Core Ultra 5 235 Core Ultra 5 225(F) |
Core i9-14900KS Core i9-14900K(F) Core i9-14900(F) Core i7-14700K(F) Core i7-14700(F) Core i5-14600K(F) Core i5-14500 Core i5-14400(F) Core i3-14100(F) |
Ryzen 9 9950X3D Ryzen 9 9900X3D Ryzen 7 9800X3D Ryzen 9 9950X Ryzen 9 9900X Ryzen 7 9700X Ryzen 5 9600X Ryzen 5 9600 |
Ryzen 9 7950X3D Ryzen 9 7900X3D Ryzen 7 7800X3D Ryzen 9 7950X Ryzen 9 7900X Ryzen 7 7700X Ryzen 7 7700 Ryzen 5 7600X Ryzen 5 7600 Ryzen 5 7500F |
Ryzen 7 5800X3D Ryzen 7 5700X3D Ryzen 9 5950X Ryzen 9 5900X Ryzen 7 5800X Ryzen 7 5700X Ryzen 5 5600X Ryzen 5 5600 Ryzen 5 5500 Ryzen 5 4500 |
MSRP | $246-$589 | $109-$689 | $279-$649 | $229-$699 | $159-$799 |
国内価格 | 38,980円~99,800円 | 13,280円~119,800円 | 40,800円~132,800円 | 35,280円~79,800円 | 15,680円~45,799円 |
プラットフォームコスト | 高い | 安い | 高い | 高い | 安い |
ソケット | LGA1851 | LGA1700 | AM5 | AM4 | AM4 |
BTO人気 | ・通常 ・3D V-Cache搭載 |
・通常 ・3D V-Cache搭載 |
・通常 ・3D V-Cache搭載 |
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省電力性(消費電力) | ・通常 ・3D V-Cache搭載 |
・通常 ・3D V-Cache搭載 |
・通常 ・3D V-Cache搭載 |
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ゲーミング性能 | ・通常 ・3D V-Cache搭載 |
・通常 ・3D V-Cache搭載 |
・通常 ・3D V-Cache搭載 |
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マルチコア性能 | ・通常 ・3D V-Cache搭載 |
・通常 ・3D V-Cache搭載 |
・通常 ・3D V-Cache搭載 |
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シングルコア性能 | ・通常 ・3D V-Cache搭載 |
・通常 ・3D V-Cache搭載 |
・通常 ・3D V-Cache搭載 |
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特徴 | ゲーム性能が伸び悩む | バランスがよく人気がある | X3Dシリーズの存在感が凄い | 比較的コスパが高い | 終売が近くBTOメイン |
Intel Core Ultra 200S/Intel第14世代CPU・AMD Ryzen 9000/Ryzen 7000/Ryzen 5000(Ryzen 4000含む)の5つに分類してそれぞれの特徴をまとめた。Ryzen 7000/Ryzen 5000(Ryzen 4000)シリーズの取り扱いは少なくなってきている。Ryzen 9000シリーズへの世代交代が着実に進みつつある。Intel第14世代Core iシリーズはまだ潤沢な在庫がありそうだ。
黄色のマーカーを付けたモデルが特に注目のCPUだ。価格を重視するならIntel第14世代Core iシリーズかAMD Ryzen 7000/Ryzen 5000シリーズがよい。現行モデルだとRyzen 7 9800X3DやRyzen 7 9700Xが人気だ。価格はやや高めだが、ゲーム性能が高くコストパフォーマンスは良好だ。また、2027年頃までは同じプラットフォームを使用できるので長い目で見れば選択肢として悪くない。
AMD Ryzenシリーズは3世代に渡るモデルが選択できる。BTOパソコンでの人気も高い。Ryzen 9000/Ryzen 7000は、マザーボード及びメモリなどプラットフォームコストが高く割高だ。ただし、しばらくは同じプラットフォームを使用できるので長い目で見れば選択肢として悪くなさそうだ。3D V-Cache搭載のRyzen 7 9800X3D/Ryzen 9 7900X3D/Ryzn 7 7800X3D当たりはユーザーから支持されている。
省電力性はRyzen 9000/Ryzen 7000シリーズが優れている。Intel第14世代CPUはやや見劣りしてしまう。Core Ultra 200Sシリーズも悪くない。もっとも省電力性を重視しているユーザーがいるのかどうかは疑問だ。パソコンを使っていて消費電力を意識するユーザーは少ないはずだ。CPUよりもグラフィックボードの方が消費電力が高いので電源ユニット選択の際に重要なポイントになる。グラフィックボードに比べるとCPUの消費電力は相対的に小さい。
ゲーミング性能は3D V-Cache搭載のRyzen 9000X3D/Ryzen 7000X3Dがずば抜けて高い。次いでIntel第14世代が続く。Intel第14世代CPUはゲーム性能・マルチコア性能・シングルコア性能のバランスがよい。最新のRyzen 9000シリーズではシングルコア性能に磨きが掛かっている。
2024年10月に登場したIntel Core Ultra 200Sシリーズは正直選びづらい。マルチコア性能については順当に向上しているが、ゲーム性能が前世代よりも低くBTOパソコンでの人気もいまいちぱっとしない。ベンチマーク計測でIntel第14世代Core iシリーズに劣ることがある。今後ファームウェアやソフトウェアのアップデートで改善される可能性がある。今すぐ購入する必要はないのではないかと思う。
Intel CoreとAMD Ryzenの性能比較
ゲーミング性能
3D V-Cache搭載のRyzen 9000X3D/Ryzen 7000X3Dシリーズがゲーミング性能のトップを占める。次いでCore i9-14900KS・Core i9-14900Kが続く。現行トップのRyzen 7 9800X3Dは、Intel第14世代のフラグシップモデルであるCore i9-14900KSと比べておよそ15%も性能が高い。注意点としては、全てのタイトルで高いパフォーマンスを発揮するわけではなく、L3キャッシュ容量が効くタイトルだけだ。どのタイトルをプレイするのかで判断しよう。
Ryzen 9000X3D/Ryzen 7000X3Dシリーズを除けばIntel第14世代CPUが優勢だ。Intel第14世代のCore i9-14900KS/Core i9-14900Kがトップで、それにCore i9-14900・Core i7-14700Kと続く。Core i5-14600KでさえもRyzen 9000シリーズでもっともゲーミング性能の高いRyzen 7 9700Xと同等だ。Core i5-14400のみやや後退といった形だ。これはCore i5-14600K以上のモデルではPコアに最新のRaptor Coveが採用されているのに対して、Core i5-14400ではPコアがGolden Coveのリフレッシュモデルであることが要因だろう。
Intel Core Ultra 200Sシリーズは全く振るわない状況であることがわかる。最上位モデルであるCore Ultra 9 285Kでも性能スコアは36,785と、Core i5-14600Kをかろうじて上回る程度だ。Core i9-14900Kとの性能差は7%と大きい。Core Ultra 7 265KやCore Ultra 5 245Kも同様に思ったほどのパフォーマンスを発揮できていない状況だ。ゲームプレイを考えるならまだCore Ultra 200Sシリーズには手を出さない方がよさそうだ。
3D V-Cache搭載モデルを除くRyzen 9000シリーズについて見るとフラグシップモデルのRyzen 9 9950XとミドルクラスのRyzen 5 9600Xで性能が逆転している。ゲームプレイだけを考えるならCCX×1基搭載のRyzen 7 9700XやRyzen 5 9600Xを選択するのが吉だ。これはCCXの仕様上の問題だと言える。Ryzen 9シリーズではCCX×2基を搭載することで12コア・16コアを実現していて、CCX間でのやり取りが必要でレイテンシが発生してしまうのだ。これがゲームプレイにおいてマイナスになってしまう。
Ryzen 7000シリーズのRyzen 7 5700XやRyzen 5 5500の価格が下がっていて選びやすくなっている状況だ。Core i5-14400と同等のゲーミング性能を持ち価格はCore i5-14400よりも安い。Ryzen 5 4500については他のモデルと別枠で考えてもよいのではないかと思う。アーキテクチャ的には2世代前のZen 2となる。Intel製CPUと比べると性能はツーランク以上落ちるが、コストパフォーマンスを重視するなら候補に入れてもよいだろう。今は中古でしか手に入れる術がないのは残念だ。
総合性能
総合性能では最新のRyzen 9 9950X3DがトップでRyzen 9 9900X・Core Ultra 9 285K・Core i9-14900KS・Ryzen 9 7950X・Core i9-14900Kと続く。当然コアが多いほうが有利だ。最新のCore Ultra 9 285Kを含むArrow Lake世代のモデルではハイパースレッディングを廃止している。24コア24スレッドと従来モデルのCore i9-14900K(24コア32スレッド)から実質スペックダウンだが、プロセスの微細化などアーキテクチャの改良でパフォーマンスが大きく向上している。
Core i9-14900Kは24コア32スレッドとコア数が多いが、高パフォーマンスコアであるPコアとパフォーマンスを抑えたEコアを合わせたコア数となっている。全てがPコアで16コア32スレッドというスペックのRyzen 9 9950Xには劣る。Ryzen 9シリーズは高い総合性能を持っている。ゲーム以外の用途を考えるならRyzen 9 9950XやRyzen 9 9900Xは魅力的なCPUといえるだろう。予算が許すならRyzen 9 9950X3Dも魅力的な選択肢となる。第2世代になり3D V-Cache搭載モデルの弱点である発熱の問題をクリアして高いクロック周波数を実現している。これが高いマルチコア性能につながっている。まさかXシリーズを上回るとは思わなかった。
販売されているBTOパソコンから見る両者の特徴
AMD製CPU搭載モデルが増加傾向にある
基本的にはIntel製CPUを搭載したゲーミングPCの方が豊富だが、ここ数か月はAMD Ryzen製CPUも勢いがある。2025年3月時点での当サイトでレビューをしているモデルを見ると、AMD Ryzen搭載モデルは49.4%(44/89)と半分を占めている。9月時点では30.8%(47/120)だったことを考えると大きく伸ばしていることがわかる。
AMD Ryzenシリーズで主流となっているのはRyzen 7 9800X3D・Ryzen 7 9700X・Ryzen 7 5700X・Ryzen 5 4500だ。ゲーム特化型・バランス型・コスパ型とうまくラインナップがそろっている。なお、ゲームプラットフォームSteamでのシェア率を見るとIntelが63.32%に対して、AMDは36.68%(Steam, 2024)と、まだまだIntel製CPUが強い。
ただし、Core Ultra 200Sシリーズの販売は思ったほど伸びていないのではないかと考えている。プラットフォームコストが高いことやゲーム性能が低いことから伸び悩んでいるとはっきり感じている。当サイトのおすすめランキングを見てもIntel製CPUは、Intel第14世代Core iシリーズが中心でCore Ultra 200Sシリーズを搭載したモデルの数は少ない。
全体で見るとCore i5シリーズの人気が高い
Intel第12世代Core iシリーズ以降ミドルクラスのCore i5シリーズ無印モデルの注目度が高くなっている。Alder Lake世代でCPUコアがリニューアルされて性能が高くなったためだ。当サイトのおすすめランキングを見てもCore i5-12400(F)の後継モデルであるCore i5-14400(F)搭載モデルがランキングに入っていることがわかる。
これまでCore i7シリーズが担っていた部分をCore i5シリーズがカバーしている形だ。GeForce RTX 4060 TiやGeForce RTX 4060など人気のグラフィックボードとのバランスが取りやすいというのは強みだ。次世代のBlackwell世代のグラフィックボードは性能が高く、Core i5シリーズではバランスが取りづらくなるかもしれない。そうなるとより性能の高いCore i7シリーズが復権となることも十分考えられる。
AMDは旧世代CPUの存在感が増している
ゲーミングPC市場ではRyzen 5 4500やRyzen 7 5700Xの注目度が増している。特にRyzen 5 4500は各BTOメーカーの売れ筋モデルの上位になっていることからも判断できるだろう。当サイトのゲーミングPCおすすめランキングでもRyzen 5 4500搭載モデルがいくつか入っている。最低限のゲーミング性能と安価な価格設定が人気の秘密だ。
少しでも安いゲーミングPCを探している方はRyzen 5 4500搭載モデルをチェックして欲しい。モデルによっては10万円前後で購入できる。ミドルクラス以上ならIntel製CPUが強いが、低価格帯を見るとAMD製CPUが強い傾向にある。AMDの低価格帯を支えるRyzen 7 5700Xよりも価格が抑えられるのはメリットだと言える。両者でうまく棲み分けが行われているように思う。
ゲーミング性能はRyzen 7 5700Xの方が上だ。マルチコア性能でも大きな差がある。長い目で見た時に性能的に物足りなくなってしまう可能性もある。性能を理解した上で購入するようにして欲しい。Core i5-14400搭載モデルよりも価格が安ければRyzen 7 5700X搭載モデルもねらい目となる。
ガレリアのAXFとXFだと、YouTubeでApexなどのpcゲームのライブ配信などをするにはAXFの方が良いのでしょうか?
ストレスなくみやすいのはどちらでしょうか?
ライブ配信にあたって、ゲーム+配信+何かの何かにはどういった事が含まれるでしょうか?
コメントありがとうございます。
>ガレリアのAXFとXFだと、YouTubeでApexなどのpcゲームのライブ配信などをするにはAXFの方が良いのでしょうか?
GALLERIA XFとAXFを比較すると配信に向いているのは間違いなくAXFです。特にGALLERIA XFのCPUがi7-9700Fにダウングレードされている今はGALLERIA AXFが圧倒的です。
>ストレスなくみやすいのはどちらでしょうか?
こちらは視聴者側という視点で考えます。この点については、どちらも同じと考えて良いでしょう。
ただし、GALLERIA AXFは性能が高い分動画の負荷を高くすることができますので、GALLERIA AXFの方がストレスを感じてしまう可能性は上がります。
それでもビットレートを調整すれば対応できます。
>ライブ配信にあたって、ゲーム+配信+何かの何かにはどういった事が含まれるでしょうか?
ライブ配信にあたっての「何か」とはその他のCPU負荷がかかるアプリケーションやツールのことを指します。それらに対応しやすいのがCPU負荷に強いRyzenシリーズです。動画の編集ソフト、キャプチャーソフト、仕事で使用するツール等も含まれます。
これらは操作していなくても、起動していれば負荷が発生します。例えば、ゲームを配信しながらDiscordやSkypeなどのボイスチャットツールもそうです。ゲーム+配信以外の「何か」ソフトやツールを起動していても安定するという表現で記載しました。人それぞれ起動するソフトやツールが違うので、明確に記載出来ませんでした。分かりにくい表現となってしまい、申し訳ありませんでした。
以上です。
よろしくお願いいたします。