Ryzen 5 5600Xの性能レビューを行った。6コア12スレッドの高パフォーマンスCPUで、第4世代Ryzenシリーズ(Zen 3アーキテクチャ採用)の中で最も安価なモデルだ。その後下位モデルの「Ryzen 5 5600G」がリリースされたが、ゲーミングCPUとしての地位は確立できておらずRyzen 5 5600Xの方が人気が高い。2022年3月にはより安価な「Ryzen 5 5600」がリリースされている。価格が安い割にゲーム適性が高いことで人気が出そうだ。搭載モデルが少ないのが難点だ。
Ryzen 5 5600Xは、前世代の8コア16スレッドのCPUであるRyzen 7 3700Xと同等の性能を持つ。Zen 2アーキテクチャを採用したRyzen 5 3600Xよりも$50も定価が上がっているのが価格面では不利だ。単体のCPUとして見ればそれ以上に性能が上がっているのでコストパフォーマンスは上々だ。ただし、ゲーミングPCに搭載されると価格が上がってしまうのが難点だ。搭載モデルは、「Ryzen 5 5600X搭載おすすめゲーミングPC」でまとめている。Intel第12世代Core i5-12400の登場は脅威となる。より安価でより高い処理性能を持っているからだ。後継モデルは、Zen 4アーキテクチャを採用した「Ryzen 5 7600X」だ。Ryzen 5 5600Xと比べて20%以上処理性能が向上している。
Ryzen 5 5600Xの基本情報
コードネーム | Zen 3 |
---|---|
プロセス | 7nm |
コア/スレッド数 | 6コア/12スレッド |
定格/最大クロック | 3.7 GHz/ 4.6 Ghz |
L3キャッシュ | 32MB |
TDP | 65W |
発売日 | 2020年11月06日 |
MSRP | $299 |
国内価格 | 19,380円 |
特徴 | (+)ゲーミング性能が飛躍的に向上 (+)CPUクーラーが同梱されている (-)前世代よりも$50価格が上がった (-)CPU内蔵グラフィックスは非搭載 (-)Ryzen 7 5700Xの方がコスパが高い |
評価 | ・総合評価 6.0 ・ゲーム評価 6.0 |
当ページの目次
Ryzen 5 5600Xの基本情報
5 5600X | 5 3600XT | 5 3600X | |
---|---|---|---|
メーカー | AMD | AMD | AMD |
コードネーム | Zen 3 | Zen 2 | Zen 2 |
プロセス | 7nm | 7nm | 7nm |
トランジスタ数 | 41.5億 | 38.0億 | 38.0億 |
ダイサイズ | 81 mm² | 74 mm² | 74 mm² |
CPUコア数 | 6コア | 6コア | 6コア |
スレッド数 | 12スレッド | 12スレッド | 12スレッド |
定格クロック | 3.7 GHz | 3.8 GHz | 3.8 GHz |
最大クロック | 4.6 Ghz | 4.5 GHz | 4.4 Ghz |
L3キャッシュ | 32MB | 32MB | 32MB |
対応メモリ | DDR4-3200 | DDR4-3200 | DDR4-3200 |
PCI-Express | Gen 4 | Gen 4 | Gen 4 |
CPUクーラー | Wraith Stealth | Wraith Spire | Wraith Spire |
TDP | 65W | 95W | 95W |
MSRP | $299 | $249 | $249 |
国内価格 | 19,390円 | - | 12,980円 |
発売日 | 2020年11月06日 | 2020年07月23日 | 2019年7月7日 |
これまで1つのCPUモジュールには4つのCPUコアしか搭載されていなかったが、Zen 3ではCPUモジュール当たり8つのCPUコアが搭載されている。つまり、同じ6コア12スレッドでも、2基のCCX(3コア×3コア)から1基のCCX(6コア)へと変わった。結果的にCCX同士のやり取りがなくなり、CCX間のレイテンシが軽減されるのだ。これはゲーミングパフォーマンスにも大きな影響を与える。
Ryzen 5 3600Xと比べてトランジスタ数が9%増えて、ダイサイズも10%大きくなった。アーキテクチャの進化もあってより高い性能を期待できる。定格クロックはRyzen 5 3600Xの方が3%高く、最大クロックはRyzen 5 5600Xの方が5%高い。L3キャッシュ容量は同等だ。対応メモリ・PCI-Expressも変わっていない。CPUクラーはWraith SpireからWraith Stealthに変わっている。TDPは95Wから65Wへと省電力性が高くなった。
Ryzen 5 3600XTやRyzen 5 3600Xと比べてスペック的に大きな違いはない。Ryzen 5 3600XTと比べると定格クロックが0.1GHz引き下げられ、最大クロックが0.1GHz引き上げられている。L3キャッシュは同じ32MBとなっている。TDPが95W→65Wとなっているのは嬉しい変更だ。CPUクーラーはWraith Stealthが同梱されている。価格は$50高く$299となっている。
Ryzen 5 5600Xの最新評価【2024年】
まずはゲーム性能スコアを見ていく。スコアは25,932と悪くない。Core i5-12400と同等のゲーム性能を有する。次世代のCore i5-14400やCore i5-13400と比べると見劣りしてしまうが、エントリークラスのCPUとして見れば悪くない。旧世代のRyzen 5 3600Xと比べると20%以上もパフォーマンスが向上している。Zen 2からZen 3アーキテクチャになってゲーム適性が大きく向上した。IPCの改善が大きい。次世代のZen 4アーキテクチャになるとさらにゲーミング性能が引き上げられている。Ryzen 5 7600Xになると25%も性能が高い。
次にマルチコア性能を見ていく。スコアは20,616とまずまずだ。Core i5-12400を上回った。ただし、ハイブリッドコアアーキテクチャ採用となったCore i5-13400と比べると性能差は23%とやや大きい。6コア12スレッドと10コア16スレッドでは全く別物のCPUと言える。
上位モデルのRyzen 7 5700Xの存在は不気味だ。Ryzen 7 5700Xはかなり価格が下がっていてRyzen 5 5600Xに+5,000円で価格で購入できる。同時に搭載ゲーミングPCについてもそこまで大きく変わらない状況だ。Ryzen 5 5600Xの購入を考えている方はRyzen 7 5700Xもチェックしておこう。敵は味方にいたと言える。Ryzen 7 5700Xは、8コア16スレッドというスペックを持ちRyzen 5 5600Xと比べて10%程度処理性能が高い。当然ゲーミング性能でも上だ。
また、下位モデルのRyzen 5 5600も魅力的な存在だ。3,000円程度安く購入できRyzen 5 5600Xと同等のパフォーマンスを期待できる。クロック周波数が抑えられていてもゲーム性能にはそこまで影響はなさそうだ。マルチコア性能も大きく変わらない。Core i5-12400は中古で19,980円~で販売されている。Ryzen 5 5600Xが新品で購入できることを考えるとRyzen 5 5600Xに優位性があるように思う。
Ryzen 5 5600Xの特徴まとめ
8コア16スレッドモデルを超える性能を持つ
Ryzen 5 3600Xから20%程度パフォーマンスが向上した。実はゲーミング性能に関しては、前世代の8コア16スレッドのRyzen 7 3800XTを超えるパフォーマンスを持っている。これはZen 3アーキテクチャを採用したことによる恩恵だ。CPUモジュールに搭載されているCPUコアが増えたことやIPCの改善が行われたことが大きい。スペック以上の差があるというわけだ。
もちろん総合性能では8コア16スレッドのモデルに劣ってしまうこともあるが、下位モデルなら十分健闘していると言えるはずだ。次世代モデルのCore i5-12400になると一気に形勢逆転となってしまった。より安くより高い性能を得られるからだ。動画編集・画像編集などのクリエイター作業だけではなくゲーミング用途でも完敗だ。Core i5-12400搭載モデル以上に価格が下がらないと選びづらい。
CPU価格を見るとRyzen 5 5600Xは26,980円だ。一方で、Core i5-12400は28,450円となる。CPU内蔵グラフィックス非搭載のCore i5-12400Fなら25,480円だ。つまり、より高い性能を持つCPUをより安く購入できるということだ。搭載ゲーミングPCについてもCore i5-12400の方が安いことが多い。これではRyzen 5 5600Xの立場はなくAMDが好きな方向けのモデルに留まってしまう。
前モデルよりも省電力性に優れている
Ryzen 5 5600Xを始めとしてZen 3アーキテクチャのCPUは省電力性が高いのが特徴だ。Ryzen 5 3600Xと比べて性能が上がっているにも関わらず消費電力は低い。これまでAMD製CPUはIntel製CPUよりも消費電力が高いというデメリットがあった。ところが第4世代になって変わった。
プロセスが7nmに微細化されて2世代目でより洗練されたCPUへと生まれ変わっている。Intel製CPUと比べて最大25%消費電力が抑えられている。電源ユニットに掛けるコスト削減にも繋がるし、環境にも優しいとメリットだらけだ。
CPUクーラー同梱でコスパも上々
Ryzen 5 5600Xは、第4世代Ryzenシリーズの第一弾として登場したモデルの中で唯一CPUクーラーが同梱されているCPUだ。当該モデルに同梱されている「Wraith Stealth」は2,000円~3,000円程度の価値がある。別途CPUクーラーを用意する必要がないため、購入する上でお得感がある。オーバークロックなどを考えていないのであればWraith Stealthでも十分対応することができる。オーバークロックを考えているならメーカー品を別途購入するとよいだろう。
Ryzen 5 5600Xのゲームベンチマーク一覧
ゲームプレイ中のフレームレートを計測している。Cinebench R20などのベンチマークと比べてよりリアルなパフォーマンスを計測することができる。Ryzen 5 5600Xは、6コア12スレッドの高パフォーマンスモデルだ。
最近では当たり前になっている8コア16スレッドのRyzen 7 5800XやCore i7-10700Kとの性能差にも注目したい。6コア12スレッドでも十分なのかどうかは気になるところだろう。合わせて前世代のRyzen 5 3600XやRyzen 7 3800XTとの性能差も見ていこう。
Borderlands 3
Shadow of the Tomb Raider
Hitman 2
その他アプリケーションのベンチマーク
ゲーム以外の一般的なアプリケーションでのベンチマークを見ていこう。Cinebench R20と合わせて参考にするとよい。Ryzenシリーズはマルチスレッド性能が高く得意としている分野だと言える。
Cinebench R20スコア
Intelの専売特許だったシングルスレッド性能も18%伸びている。レイテンシ軽減の恩恵もあって性能差を体感しやすいはずだ。このシングルスレッドの伸びは凄まじくRyzen 7 3800XTやCore i7-10700Kを上回る。競合であるCore i5-10600Kを圧倒する結果だ。
7-Zip
Puget Systems Adobe
Ryzen 5 5600X搭載おすすめゲーミングPC
Ryzen 5 5600X搭載モデルの価格帯は税込13万円~21万円となっている。ミドルクラスのRyzen 5 5600X搭載モデルとしてはやや価格は高いが、性能の高さや昨今の価格高騰の影響を考えると許容範囲だと言える。また、AMDがプレミアム価格路線に入り定価が上がっていることも要因として挙げられる。
LEVEL-M7P5-R56X-RBX(パソコン工房)
CPU:Ryzen 5 5600X
GPU:GeForce RTX 3060
メモリ:DDR4-3200 16GB
ストレージ:SSD 500GB NVMe
電源:700W 80PLUS BRONZE
コスパ:調査中
Ryzen 5 5600X×GeForce RTX 3060搭載のミドルクラスの一台だ。LEVEL∞のミニタワーケースを採用している。税込13万円台で購入できる。キャンペーン中は4,000円OFFだ。会員登録を行えば送料も無料だ。GeForce RTX 3060は、Ampere世代の60番台のモデルでフルHD環境なら設定次第で十分に安定したフレームレートを実現できる。レイトレーシング・DLSSをサポートしているのもポイントだ。メモリDDR4-3200 16GB、SSD 500GB NVMeという構成だ。電源ユニットは700W BRONZEを採用している。
G-GEAR GA5A-D230/B(TSUKUMO)
CPU:Ryzen 5 5600X
GPU:Radeon RX 7600
メモリ:DDR4-3200 16GB
ストレージ:SSD 1TB NVMe
電源:750W 80PLUS GOLD
コスパ:調査中
Ryzen 5 5600X×RX 7600搭載のミドルクラスのゲーミングPCだ。CPU・GPU共にAMD製パーツで揃えている。Radeon RX 7600は、RTX 4060と同等の性能を持ちフルHD環境でのゲームプレイに適している。グラフィックス処理性能的にはRyzen 5 5600Xでも十分な性能を引き出せる。メモリDDR4-3200 16GB・SSD 1TB NVMeと構成も平均以上だ。電源ユニットは750W GOLDを採用していて余裕がある。コストパフォーマンス的にはIntel製CPU×NVIDIA製グラフィックボード搭載モデルに劣ってしまう点は理解しておこう。AMDが好きなユーザー向けだと言える。
LEVEL-M7P5-R57X-SLX(パソコン工房)
CPU:Ryzen 5 5600X
GPU:GeForce RTX 4060 Ti
メモリ:DDR4-3200 16GB
ストレージ:SSD 1TB Gen4 NVMe
電源:700W 80PLUS BRONZE
コスパ:調査中
Ryzen 5 5600X×GeForce RTX 4060 Ti搭載のミドルハイクラスのゲーミングPCだ。ミニタワーケースを採用している。GeForce RTX 4060 Ti搭載モデルとして税込15万円台は最安値クラスだ。他社メーカーならGeForce RTX 4060搭載モデルと同等だ。メモリDDR4-3200 16GB、SSD 500GBと構成も充実している。電源ユニットは700W BRONZEを搭載していて万全だ。
ZEFT R25E(セブン)
CPU:Ryzen 5 5600X
GPU:GeForce RTX 3060
メモリ:DDR4-3200 16GB
ストレージ:SSD 500GB NVMe
電源:750W 80PLUS GOLD
コスパ:調査中
Ryzen 5 5600X×RTX 3060搭載のゲーミングPCだ。PCケースにはホワイトカラーが印象的な「ASUS TUF Gaming GT501 White Edition」を搭載している。取外し可能なダストフィルーターを搭載していてメンテンナンス性の高さが特徴だ。シンプルなデザインで使用するユーザーを選ばない。ゲーミング性能は標準的でフルHD環境が基準だ。設定調整が必要になるタイトルもある。メモリ16GB、SDS 500GBと構成は十分だろう。CPU性能が高いのでクリエイター作業にも最適だ。
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