CPUの2大メーカーであるIntel Core iシリーズとAMD Ryzenシリーズの特徴を比較していく。長らくIntel独占のCPU市場に一石を投じたAMD Ryzenシリーズの登場はゲーマーにとって好ましいことだと言える。今まで以上にゲーミングPC業界が盛り上がっている。2022年後半に第5世代Ryzenシリーズ(Ryzen 7000)、Intel第13世代Core iシリーズが続けて登場してより注目度が増しているように思う。2023年に入ってAMDもIntelも価格の安い下位モデルを投入してさらに市場が盛り上がっている状況だ。
Intel第13世代はこれまで同様高いゲーミング性能を持ちさらにEコアを増やしてマルチスレッド性能を高めている。総合性能ではIntel第13世代Core iシリーズが優勢だ。どちらのメーカーのCPUを選べばよいのか悩んでいる方はぜひチェックして欲しい。当ページでは主にゲーミング性能に重点を置いて解説していく。なお、ゲーミングCPUとしてあまり一般的ではないRyzen 3シリーズ及びCore i3シリーズは省略している。
- 第13世代Intel Core iシリーズ(デスク)
- 第5世代Ryzenシリーズ(デスク)
ゲーミング性能・マルチコア性能共に高い、マルチコア性能でもRyzenを上回る、コストパフォーマンスが高い
マルチコア性能が優秀、ゲーミング性能が向上、Intel第13世代の登場で価格が下落傾向にある
2022年09月27日に第5世代Ryzenシリーズが登場して、後を追う形で2022年10月20日にIntel第13世代Core iシリーズが登場した。その後AMDもIntelも下位モデルをリリースして最新モデルのラインナップが揃った。性能的にはハイブリッドアーキテクチャを採用しているIntel製CPUが優勢(Ryzen 7000X3Dを除く)だ。Ryzenシリーズの価格設定がポイントとなる。Ryzen 7000シリーズはプラットフォームコストが高くそこがネックだ。ゲーミングPCでどちらのCPUを選ぶべきか悩んだらIntel製CPUを選んでおけばよい。ゲーム性能とマルチコア性能のバランスがよく失敗しないはずだ。
当ページの目次
Intel Core iとAMD Ryzen比較表
Intel第13世代 | AMD第5世代 | |
---|---|---|
イメージ | ||
発売日 | 2022年10月20日 | 2022年09月27日 |
価格 | ◎ ($221~$699) (35,960円~106,480円) | ◎ ($229~$699) 29,700円~100,700) |
プラットフォームコスト | 安い | 高い |
省電力性(消費電力) | ||
ゲーミング性能 | ・3D V-Cacheモデル ・通常モデル | |
マルチコア性能 | ・3D V-Cacheモデル ・通常モデル | |
シングルコア性能 |
Intel第13世代CPUが登場したことで第5世代Ryzenシリーズは価格が押し下げられている。Intel第13世代CPUはプラットフォームコストが安いというメリットがある。つまり、安価なDDR4メモリや旧世代のマザーボードを流用できる。一方で、Ryzen 7000シリーズの場合ソケットが一新されてややコストが掛かってしまうのがデメリットだ。高価なDDR5メモリ及び最新のマザーボードを用意しなければいけない。
省電力性ではRyzenシリーズが優勢だ。Intelが10nmプロセスを採用しているのに対して、AMDは5nmプロセスを採用しているのが有利に働いている。ゲーミング性能についてはIntel第13世代Core iシリーズが頭一つ抜き出ている。ただし、3D V-Cache搭載のRyzen 7000X3DはCore iシリーズを上回るゲーミング性能を発揮する。RTX 4080などAda Lovelace世代のハイエンドクラスと合わせることで本領発揮となる。
マルチコア性能はハイブリッドアーキテクチャ採用のIntel製CPUが上だ。特にCore i7/Ryzen 7シリーズ以下のモデルではその差が大きくなる。また、3D V-Cacheモデルは総じてマルチコア性能が低い。シングルコア性能についてもIntel製CPUが優勢だ。総合的に見ればやはりゲーミング性能とマルチコア/シングルコア性能のバランスのよいIntel第13世代CPUがおすすめしやすい。
このような状況もあってAMDは近い将来にIntelと同様にハイブリッドアーキテクチャを採用する予定だということ(tom’s HARDWARE, 2023)だ。それだけ優れた技術ということだろう。実際Intel製CPUはゲームでもアプリケーションでも高いパフォーマンスを発揮している。市場シェアはIntelが68.7%に対してAMDは31.3%となりAMDは順調にシェアを伸ばしている状況(PC Watch, 2023)だ。Intel第13世代の登場もあり2023年は苦戦する可能性がある。
Intel Core iとAMD Ryzenのスペック&価格比較
Intel=ブルー軍、AMD=レッド軍として色分けしている。Core i9&Ryzen 9、Core i7&Ryzen 7、Core i5&Ryzen 5のグループごとにそれぞれの代表的なモデルを比較していく。冒頭で述べた通り、ゲーミングPCとして一般的ではないCore i3&Ryzen 3は省略している。
Core i9&Ryzen 9シリーズ比較
製品型番 | 定価 | 販売価格 | アーキテクチャ | プロセス | コア/スレッド | クロック(最大) | OC | L2キャッシュ | L3キャッシュ | TDP | 発売日 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Core i9-13900KS | $699 | 106,480 | Raptor Lake | 10nm | 24/32 | 3.2GHz(6.0GHz) | ◯ | 32MB | 36MB | 150W-253W | Q1'23 |
Core i9-13900K | $589 | 89,790 | Raptor Lake | 10nm | 24/32 | 3.0GHz(5.8GHz) | ◯ | 32MB | 36MB | 125W-253W | Q4'22 |
Core i9-13900 | $549 | 90,340 | Raptor Lake | 10nm | 24/32 | 2.0GHz(5.2GHz) | × | 32MB | 36MB | 65W-219W | Q1'23 |
Ryzen 9 7950X3D | $699 | 100,700 | Zen 4 | 5nm | 16/32 | 4.2GHz(5.7GHz) | × | 16MB | 128MB | 120W-162W | Q1'23 |
Ryzen 9 7950X | $799 | 74,280 | Zen 4 | 5nm | 16/32 | 4.5GHz(5.7GHz) | ◯ | 16MB | 64MB | 170W-230W | Q3'22 |
Ryzen 9 7900X3D | $599 | 73,450 | Zen 4 | 5nm | 12/24 | 4.4GHz(5.5GHz) | × | 12MB | 128MB | 120W-162W | Q1'23 |
Ryzen 9 7900X | $549 | 69,644 | Zen 4 | 5nm | 12/24 | 4.7GHz(5.6GHz) | ◯ | 12MB | 64MB | 170W-230W | Q3'22 |
Ryzen 9 7900 | $429 | 65,920 | Zen 4 | 5nm | 12/24 | 3.7GHz(5.4GHz) | ◯ | 12MB | 64MB | 65W-88W | Q1'23 |
Intel第13世代のCore i9-13900KS/Core i9-13900K/Core i9-13900は、Raptor Lake世代の最新モデルで10nmプロセスを採用している。競合モデルのRyzen 9 7950X/Ryzen 9 7900X/Ryzen 9 7900はZen 4アーキテクチャを採用したモデルだ。Ryzen 9シリーズのプロセスは5nmとRaptor Lake世代の半分でパワー効率が高い。アーキテクチャ的にはAMDが進んでいる。
Ryzen 9 7950Xは$799というMSRPで登場したが、Intel第13世代CPUのフラグシップモデルが$589で販売されたことで$699まで大きく販売価格が引き下げられている。実売価格も安くRyzen 9 7950Xは、Core i9-13900Kよりも15,000円安く購入できる。なお、Core i9-13900やRyzen 9 7900の価格が高めなのは発売間もないためで時間が経てばもう少し価格が下がるはずだ。
Intel第13世代Core i9シリーズでは従来モデルよりも大幅にスペックが強化されている。16コア24スレッドから24コア32スレッドとコアが50%アップでスレッドも33%アップだ。PコアはそのままでEコアが倍となっている。Ryzen 9 7950Xが16コア32スレッドなのでCore i9-13900Kの方がスペックが高いが、Pコアの数はRyzen 9 7950Xの方が倍ということになるIntelの考えとしてはPコアは8コアで十分だということだ。
Core i9-13900Kは、クロック周波数が高く5.8GHzとなった。限定モデルのCore i9-1390KSになると6.0GHzに到達する。Core i9シリーズではL2キャッシュ容量が多いのもポイントだ。32MBとRyzen 9 7950Xと比べても2倍の容量を持つ。L2キャッシュ容量を増やしたことでゲーム適性が向上している。
L3キャッシュについてはRyzen 9シリーズの方が多い。Ryzen 9 7950Xは64MBとCore i9シリーズの2倍以上となる。Core i9シリーズもRyzen 9シリーズもクロック周波数が高くなったことで消費電力が高くなってしまったのは仕方がないだろう。省電力性ではRyzen 9 7950XやRyzen 9 7900Xが一歩リードだ。5nmプロセスを採用しているのは強みとなっている。第5世代Ryzenシリーズから全モデルでCPU内蔵グラフィックスを搭載している。
Ryzen 9 7950X3D/Ryzen 9 7900X3Dは、3D V-Cacheテクノロジーを採用したCPUだ。ゲーム特化型のCPUでCore i9-13900Kを上回る高い処理性能を誇る。マルチコア性能が犠牲にされている部分があるためゲーム以外の用途でも使いたいと考えている方はRyzen 9 7950XやCore i9-13900Kを選ぶのがよい。
Core i7&Ryzen 7シリーズ比較
製品型番 | 定価 | 販売価格 | アーキテクチャ | プロセス | コア/スレッド | クロック(最大) | OC | L2キャッシュ | L3キャッシュ | TDP | 発売日 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Core i7-13700K | $409 | 59,800 | Raptor Lake | 10nm | 16/24 | 3.4GHz(5.4GHz) | ◯ | 24MB | 30MB | 125W-253W | Q4'22 |
Core i7-13700 | $384 | 61,199 | Raptor Lake | 10nm | 16/24 | 2.1GHz(5.2GHz) | × | 24MB | 30MB | 65W-219W | Q1'23 |
Ryzen 7 7800X3D | $449 | 60,801 | Zen 4 | 5nm | 8/16 | 4.2GHz(5.0GHz) | × | 8MB | 96MB | 120W-162W | Q1'23 |
Ryzen 7 7700X | $399 | 42,480 | Zen 4 | 5nm | 8/16 | 4.5GHz(5.4GHz) | ◯ | 8MB | 32MB | 105W-142W | Q3'22 |
Ryzen 7 7700 | $329 | 41,400 | Zen 4 | 5nm | 8/16 | 3.8GHz(5.3GHz) | ◯ | 8MB | 32MB | 65W-88W | Q1'23 |
Ryzen 7 5700X | $299 | 25,880 | Zen 3 | 7nm | 8/16 | 3.4GHz(4.6Hz) | ◯ | 4MB | 32MB | 65W | Q2'22 |
Core i7&Ryzen 7シリーズは、ゲーミングPCで人気の性能帯・価格帯のモデルだ。Core i7-13700KよりもRyzen 7 7700Xの方が17,320円も安く購入できる。ただし、プラットフォームコストを考慮すればCore i7-13700Kの方が割安だ。Ryzen 7 7700Xは、Zen 4アーキテクチャを採用したモデルでプロセスは5nmだ。Raptor Lake世代のCore i7-13700Kは10nmプロセスを採用している。Intelはなかなかプロセスの微細化が進まない状態だ。
Core i7シリーズも従来モデルと比べて大幅にスペックが強化されている。12コア20スレッドから16コア24スレッドとマルチコア性能が向上している。Ryzen 7シリーズが8コア16スレッドとなっているため競合と比べても優位性がある状態だ。コアがこれだけ増えても最大クロック周波数は5.4GHzとRyzen 7 7700Xと同等なのは評価できる。パフォーマンス的にも有利なはずだ。
消費電力についてはRyzen 7 7700Xの方が抑えられている。ただし、Core i7-13700KはRyzen 7 7700Xと比べて50%以上も処理性能が高いことを考慮すると必ずしもRyzen 7 7700Xの省電力性が高いというわけではない。ハイブリッドコアアーキテクチャは強力だ。
2023年1月に消費電力を落としたCore i7-13700及びRyzen 7 7700がリリースされた。発売されて時間が経過していないためそれぞれ上位モデルとの価格差が小さいか逆転してしまっている状況だ。スペック的にはクロック周波数を落としただけで性能的には5%前後劣るだけでコスパが高くどちらのモデルも人気が出る可能性が高い。Ryzen 7 7700の場合オーバークロックに対応していてRyzen 7 7700Xと同等のパフォーマンスを期待できる。
Ryzen 7 7800X3Dは、Ryzen 9 7950X3Dなどと同じ3D V-Cache搭載モデルだ。ゲーミング性能だけで言えば現行トップのモデルでRyzen 9 7950X3D/Ryzen 9 7900X3Dよりも高い。それはCCX×2基搭載のRyzen 9シリーズとは異なりCCXが1基のみでCCX間のやり取りが不要なことでより高いゲーム適性を発揮する。ゲームしかプレイしないのであればRyzen 7 7800X3Dは魅力的なCPUとなる。マルチコア性能はRyzen 7 7700XやCore i7-13700Kに大きく劣る。
Ryzen 7 5700Xは、2022年に発売されたモデルだが今でも購入可能だ。人気の秘密は価格の安さにある。税込25,880円で購入できる。現行のRyzen 7 7700Xと比べて17,000円程度も安い。当然ゲーミング性能も現行モデルには劣るが、コストパフォーマンス重視ならよい選択となる。Intel第13世代のCore i5シリーズと同等のゲーミング性能を期待できる。
Core i5&Ryzen 5シリーズ比較
製品型番 | 定価 | 販売価格 | アーキテクチャ | プロセス | コア/スレッド | クロック(最大) | OC | L2キャッシュ | L3キャッシュ | TDP | 発売日 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Core i5-13600K | $319 | 49,459 | Raptor Lake | 10nm | 14/20 | 3.5GHz(5.1GHz) | ○ | 20MB | 24MB | 125W-181W | Q4'22 |
Core i5-13400 | $221 | 35,960 | Raptor Lake | 10nm | 10/16 | 2.5GHz(4.6GHz) | × | 9.5MB | 20MB | 65W-117W | Q1'23 |
Ryzen 5 7600X | $299 | 35,979 | Zen 4 | 5nm | 6/12 | 4.7GHz(5.3GHz) | ○ | 6MB | 32MB | 105W-142W | Q3'22 |
Ryzen 5 7600 | $229 | 29,700 | Zen 4 | 7nm | 6/12 | 3.7GHz(4.6GHz) | ○ | 6MB | 32MB | 65W-76W | Q1'23 |
Ryzen 5 5600X | $299 | 21,500 | Zen 3 | 7nm | 6/12 | 3.7GHz(4.6GHz) | ○ | 3MB | 32MB | 65W | Q4'20 |
Ryzen 5 4500 | $139 | 9,980 | Zen 2 | 7nm | 6/12 | 3.6GHz(4.1GHz) | ○ | 3MB | 8MB | 65W | Q2'22 |
Core i5&Ryzen 5シリーズは、コストパフォーマンス重視の方向けの性能帯・価格帯のCPUだ。Raptor Lake世代のCore i5-13600Kは、14コア20スレッドと高スペックのCPUだ。競合モデルであるAMD Ryzen 5 7600Xは6コア12スレッドとなる。クロック周波数はRyzen 5 7600Xの方が0.2GHz高い。ミドルクラスのモデルでも5.0GHzを超えているのは驚きだ。
L2キャッシュはCore i5-13600Kの方が3.3倍多く20MBとなる一方で、L3キャッシュはRyzen 5 7600Xの方が35%多く32MBとなる。消費電力はCore i5-13600Kの方が高い。Core i5-13600Kのスペックを考えると納得できるのではないかと思う。全体的にクロック周波数を引き上げていることもあって消費電力は上昇傾向にあり次世代モデル以降の課題となるはずだ。
後発のCore i5-13400とRyzen 5 7600を比較していく。Core i5-13400は、Intel第13世代になって初めてCore i5シリーズの無印モデルでもハイブリッドコアアーキテクチャを採用している。10コア16スレッドと高いスペックを誇る。対してRyzen 5 7600は6コア12スレッドというスペックだ。定価は同等だが国内の価格は3,500円程度の差があってRyzen 5 7600の方が安い。やはりプラットフォームコストを考慮するとCore i5-13400の方が割安だと言える。
Core i5-13400に関してはRaptor CoveではなくGolden Coveのリフレッシュモデルとなっている。結果的にL2キャッシュやL3キャッシュ容量はCore i5-13600Kほど大容量ではない。上位モデルとの差別化が図られている形だ。Ryzen 5 7600はオーバークロックに対応しているのでその点は強みがある。
Ryzen 5 5600XはZen 3アーキテクチャを採用したモデルだ。発売は2020年とおよそ3年前のモデルだが、今でも購入できる。税込21,500円と価格が安いのが嬉しい。プラットフォームコストを抑えられるのもメリットだ。Ryzen 5 7600とRyzen 5 4500の間を埋める貴重な存在だ。
Ryzen 5 4500はZen 2アーキテクチャを採用したCPUだ。現行モデルから見ると2世代前のCPUということになる。価格は11,956円とかなり安いのが特徴だ。10万円前後の低価格帯のゲーミングPCで採用されることが多い。Ryzen 5 7600と比べてL2キャッシュが半分の3MBで、L3キャッシュが1/4の8MBとなっている。これがRyzen 5 4500の弱点でゲーム適性が高いというわけではない。あくまでも価格を抑えるためのモデルだと考えておこう。
Intel Core iとAMD Ryzenのゲーミング性能比較
Ryzen 7 7800X3D | |
Ryzen 9 7900X3D | |
Ryzen 9 7950X3D | |
Core i9-13900KS | |
Core i9-13900K | |
Core i9-13900 | |
Core i7-13700K | |
Core i7-13700 | |
Core i5-13600K | |
Ryzen 9 7950X | |
Ryzen 9 7900X | |
Ryzen 7 7700X | |
Ryzen 7 7700 | |
Ryzen 5 7600X | |
Ryzen 5 7600 | |
Ryzen 7 5700X | |
Core i5-13400 | |
Ryzen 5 5600X | |
Ryzen 5 4500 |
Ryzen 7000X3Dシリーズを除けばIntel第13世代CPUが優勢だ。Intel第13世代のCore i9-13900KSがトップで、それにCore i9-13900K・Core i9-13900・Core i7-13700Kと続く。Core i5-13600KでさえもRyzen 7000シリーズのフラグシップモデルであるRyzen 9 7950Xを上回るゲーミング性能を誇る。Core i5-13400のみやや後退といった形だ。。これはCore i5-13600K以上のモデルでは最新のRaptor Coveが採用されているのに対して、Core i5-13400ではCPUコアがGolden Coveのリフレッシュモデルであることが要因だろう。
第5世代Ryzenシリーズについて見るとフラグシップモデルのRyzen 9 7950XとミドルクラスのRyzen 5 7600の性能差がおよそ9%とそれほど大きくない。ゲームプレイだけを考えるならCCX×1基搭載のRyzen 5 7600X/Ryzen 5 7600やRyzen 7 7700X/Ryzen 7 7700を選択するのが吉だ。これはCCXの仕様上の問題だと言える。Ryzen 9シリーズではCCX×2基を搭載することで12コア・16コアを実現しているため、CCX間でのやり取りが必要でレイテンシが発生してしまうのだ。これがゲームプレイにおいてマイナスになってしまう。
第4世代RyzenシリーズのRyzen 7 5700XやRyzen 5 5600Xは価格が下がっていて選びやすくなっている状況だ。Core i5-13400と同等のゲーミング性能を持ち価格はCore i5-13400よりも安い。Ryzen 5 4500については他のモデルと別枠で考えてもよいのではないかと思う。アーキテクチャ的には2世代前のZen 2となる。Intel製CPUと比べると性能はツーランク以上落ちるが、コストパフォーマンスを重視するなら候補に入れてもよいだろう。税込10万円以下のモデルで採用されることが多い。
Intel Core iとAMD Ryzenシリーズの総合性能比較
Core i9-13900KS | |
Core i9-13900K | |
Ryzen 9 7950X | |
Core i9-13900 | |
Ryzen 9 7950X3D | |
Core i7-13700K | |
Ryzen 9 7900X | |
Core i7-13700 | |
Ryzen 9 7900X3D | |
Ryzen 9 7900 | |
Core i5-13600K | |
Ryzen 7 7700X | |
Ryzen 7 7700 | |
Ryzen 7 7800X3D | |
Core i5-13400 | |
Ryzen 5 7600X | |
Ryzen 7 5700X | |
Ryzen 5 7600 | |
Ryzen 5 5600X | |
Ryzen 5 4500 |
また、ゲーミング性能が高いRyzen 9 7950X3D/Ryzen 9 7900X3D/Ryzen 7 7800X3Dはマルチコア性能ではワンランク以上パフォーマンスが落ちてしまう。3D V-Cache非搭載モデルとの差も大きい。マルチコア性能についてはあまり期待しない方がよいかもしれない。Ryzen 7000X3Dシリーズでマルチコア性能を求めるならRyzen 9 7950X3Dがおすすめだ。16コア32スレッドとスペックも高くコスパを考えなければ性能はまずまずだと言える。
Core i7-13700Kは、本来競合となるRyzen 7 7700Xを引き離し上位モデルであるRyzen 9 7900Xを上回るスコアを叩き出した。無印のCore i7-13700でもRyzen 9 7900Xと同等だ。後発モデルのRyzen 7 7700を大きく引き離している。Core i5-13600Kも同様で、Ryzen 5 7600XだけではなくRyzen 7 7700Xを上回るパフォーマンスを発揮している。Intel第13世代は競合モデルの上位モデルを上回る。
現時点では性能差ほどの価格差が現れておらずIntel第13世代Core iシリーズの方がコストパフォーマンスが高い。動画編集・エンコード・画像編集・ゲーム実況・3D CADなどCPU負荷の高い作業においてIntel製CPUが高いパフォーマンスを発揮するということだ。もちろん用途やアプリケーションによってはRyzenシリーズが高いこともある。Ryzen 7 5700XやRyzen 5 5600Xは現行モデルと比べるとシングルスレッド性能が有意に低い。総合性能を重視するなら避けた方がよいかもしれない。
ゲーミングPCから見る両者の特徴
ラインナップはIntel搭載モデルが圧倒的に多い
各BTOメーカーが販売しているゲーミングPCを見ればIntel製CPU搭載モデルが多いことに気付く。2023年05月時点での当サイトでレビューをしているモデルを見ると、Ryzen搭載モデルは29.4%(35/119)に留まることがわかる。数年前に比べて明らかにRyzenシリーズ搭載モデルが増えてきているもののCore iシリーズが優勢な状況は変わらない。確かに2,3年前までなら各BTOメーカーのラインナップにおいてRyzenシリーズが占める割合は10%にも満たなかったように思う。
ドスパラ・パソコン工房・パソコンショップセブンでわずかに取り扱いがあったぐらいだった。その時期から比べるとよい方向に向いている。Intel第13世代Core iシリーズの性能が高いため、第5世代Ryzenシリーズは価格で優位にならないと同じ土俵には上がれないだろう。Ryzen 7000シリーズになりプラットフォームがAM5になりコストが掛かるのが悩ましい。搭載ゲーミングPCの価格も跳ね上がっている。
全体で見るとCore i5シリーズの人気が高い
Intel第12世代Core iシリーズになってミドルクラスのCore i5-12400の注目度が高くなっている。Alder Lake世代でCPUコアがリニューアルされて性能が高くなったためだ。当サイトのおすすめランキングを見てもCore i5-12400(F)の後継モデルであるCore i5-13400(F)搭載モデルがランキングに入っていることがわかる。
これまでCore i7シリーズが担っていた部分をCore i5シリーズがカバーしている形だ。RTX 3060 TiやRTX 3060など人気のグラフィックボードとのバランスが取りやすいというのは強みだ。次世代のAda Lovelace世代のグラフィックボードは性能が高く、Core i5シリーズではバランスが取りづらくなるかもしれない。そうなるとより性能の高いCore i7シリーズが復権となることも十分考えられる。
Ryzen 7 5700X/5 5600Xが存在感を増している
ゲーミングPC市場ではRyzen 7 5700XやRyzen 5 5600Xの注目度が増している。特にRyzen 7 5700Xは各BTOメーカーの売れ筋モデルの上位になっていることからも判断できるだろう。当サイトのゲーミングPCおすすめランキングでもRyzen 7 5700X搭載モデルがいくつか入っている。まずまずのゲーミング性能と安価な価格設定が人気の秘密だ。在庫がなくなればお得なモデルを購入するチャンスはなくなる。気になっている方は今の内に手に入れておこう。
低価格帯ではRyzen 5 4500搭載モデルが強い
税込10万円以下の低価格帯の安いゲーミングPCを見ると、一点Ryzenシリーズが勢いを増す。例えば、最安値モデルを見るとRyzen 5 4500を搭載したドスパラの「Lightning AH5」が出てくる。Lightining AH5は、税込10万円以下で購入できる貴重なモデルだ。
少しでも安いゲーミングPCを探している方はRyzen 5 4500搭載モデルをチェックして欲しい。ミドルクラス以上ならIntel製CPUが強いが、低価格帯を見るとAMD製CPUが強い傾向にある。Intelの低価格帯を支えるCore i5-12400よりも価格が抑えられるのはメリットだと言える。
両者でうまく棲み分けが行われているように思う。ただし、ゲーミング性能はCore i5-13400の方が上だ。マルチコア性能でも大きな差がある。長い目で見た時に性能的に物足りなくなってしまう可能性もある。性能を理解した上で購入するようにして欲しい。
Intel Core iとAMD Ryzenシリーズの歴史とシェア
これまでの歩み・歴史
年月日 | Ryzen | Intel |
---|---|---|
2023年04月06日 | Ryzen 9 7 7800X3D | |
2023年03月03日 | Ryzen 9 7950X3D Ryzen 9 7900X3D | |
2023年01月14日 | Ryzen 9 7900 Ryzen 7 7700 Ryzen 5 7600 | |
2023年01月12日 | Core i9-13900KS | |
2023年01月04日 | Core i9-13900 Core i7-13700 Core i5-13400 | |
2022年10月20日 | Core i9-13900K Core i7-13700K Core i5-13600K | |
2022年09月27日 | Ryzen 9 7950X Ryzen 9 7900X Ryzen 7 7700X Ryzen 5 7600X | |
2022年04月15日 | Ryzen 5 5600 Ryzen 5 5500 Ryzen 5 4500 | |
2022年01月05日 | Core i9-12900 Core i7-12700 Core i5-12400 Core i9-12900HK Core i7-12700H | |
2021年11月04日 | Core i9-12900K Core i7-12700K Core i5-12600K | |
2021年08月6日 | Ryzen 7 5700G Ryzen 5 5600G | |
2021年05月17日 | Core i9-11980HK Core i9-11900H Core i7-11800H Core i5-11400H Core i5-11300H | |
2021年03月30日 | Core i9-11900K Core i7-11700K Core i7-11700 Core i5-11600K Core i5-11400 | |
2021年01月12日 | Ryzen 9 5980HX Ryzen 9 5900HX Ryzen 7 5800H Ryzen 5 5600H | |
2020年11月06日 | Ryzen 9 5950X Ryzen 7 5800X Ryzen 5 5600X | |
2020年07月18日 | Ryzen 9 3900XT Ryzen 7 3800XT Ryzen 5 3600XT | |
2020年05月20日 | Core i9-10900K Core i9-10900 Core i7-10700K Core i7-10700 Core i5-10600K Core i5-10600 | |
2020年02月22日 | Ryzen 5 3500 | |
2020年02月07日 | Ryzen TR 3990X | |
2019年12月13日 | Core i9-10980HK Core i7-10875H Core i7-10750H Core i5-10300H | |
2019年07月07日 | Ryzen 9 3900X Ryzen 7 3700X Ryzen 5 3600X Ryzen 5 3600 | |
2019年06月07日 | Core i7-9700F | |
2019年05月16日 | Core i3-9100F | |
2019年03月29日 | Core i9-9900KF Core i7-9700KF | |
2019年02月01日 | Core i5-9400F | |
2018年10月20日 | Core i9-9900K Core i7-9700K | |
2018年09月11日 | Ryzen 5 2500X Ryzen 3 2300X | |
2018年09月01日 | Ryzen TR 2950X | |
2018年04月19日 | Ryzen 7 2700X Ryzen 7 2700 Ryzen 5 2600X Ryzen 5 2600 | |
2018年04月03日 | Core i5-8500 | |
2017年11月02日 | Core i7-8700K Core i7-8700 Core i5-8400 | |
2017年07月27日 | Ryzen 3 1300X Ryzen 3 1200 | |
2017年04月15日 | Ryzen 5 1500X Ryzen 5 1400 | |
2017年04月11日 | Ryzen 5 1600X Ryzen 5 1600 | |
2017年03月02日 | Ryzen 7 1800X Ryzen 7 1700X Ryzen 7 1700 | |
2017年01月06日 | Core i7-7700K Core i7-7700 Core i5-7600K Core i5-7400 |
2022年12月時点ではIntelのシェアが大きい
出典:(Steam, 2023)
2023年04月になってAMDがシェアを伸ばしている。3月時点では23.80%まで落ち込んでいたが、3月上旬にリリースされたRyzen 7000X3Dシリーズのおかげで4月時点では32.84%まで伸ばした。今後もIntelとAMDのライバル同士の競争には注目したい。
これまでのIntel&Ryzenの比較から見る総評&レビュー
ゲーム用途ではIntelを基本に考えよう
客観的に見てもIntel製CPU以外を選ぶ理由はないのではないかと思う。現時点ではゲームプレイだけではなく動画編集などのクリエイター作業においてもIntel製品に分があると考えている。Intel第13世代Core iシリーズの登場で第5世代Ryzenシリーズの立場は危うくなっている。
ハイブリッドコアアーキテクチャを採用したことで大幅に性能が引き上げられたからだ。特にRaptor Coveを採用したCore i5-13600K以上のモデルだとゲーミング性能はかなり高い。ゲーミング性能では敵わないのでAMDは価格で勝負するしかない状況だ。それも高額なメモリやマザーボードの購入が必要なのが足かせとなっている。
その後登場したRyzen 7000X3Dはユーザーによっては魅力的なモデルになる可能性がある。ゲーム実況・動画編集などの作業を考えずゲーム性能だけを追求したいなら候補に入れてもよいだろう。Intel第13世代CPUを上回るゲーム性能は圧巻だ。L3キャッシュ容量が増えてもパフォーマンスが伸びないタイトルもあるので見極めが大事となる。
低価格帯のモデルを狙うならRyzenもあり
低価格帯のゲーミングPCでは第4世代Ryzenシリーズの存在感が増してきているように思う。特に10万円以下のモデルでは圧倒的だ。価格が安くそれなりのゲーミング性能を持つというのは心強い。ただし、Ryzen 5 4500はアーキテクチャ的に数年前のモデル(Zen 2)で性能が高いわけではない。
AMD Ryzenの登場は単純な性能面だけではなく市場へよい影響を与える。ユーザーにとっては更に選択肢が広がり、非常によい傾向にあると言えるだろう。ただ、ショップにあるRyzen搭載モデルはIntel搭載モデルに比べてまだまだ少ない。メーカーの担当者によると売上的にもよくない状態が続いているということだ。
もっとも、この売上がよくないという点においては、自作ユーザーに人気だという背景があるからだろう。Ryzen搭載のゲーミングPCの存在感は薄いわけではなく、Intel製品との価格差がほとんどない状態だからだ。CPU単体で見れば選択する価値はあり、コストパフォーマンスは優秀だが、搭載モデルとなるとその長所は失われがちだ。
これからもRyzenの進化に期待が持てる
第5世代Ryzenシリーズになってゲーミング性能が上がりIntelとの差は縮まっている。その上でマルチコア性能が高いので、ゲーマーだけではなく幅広い用途を考えている方におすすめできる。Intelの第13世代に対してまだ第5世代だ。進化のスピード・期待値・将来性などは圧倒的にRyzenに分がある。
Ryzenは今後CPUにおける唯一の選択肢に成長する可能性も十分にある。第4世代では届かなかったが、覇権を奪い主流のCPUになる日も遠くないのかもしれない。たくさんのアプリケーションを同時に起動し、複数の作業を同時にこなすのであればRyzenという図式は崩れつつある。Intel製CPUは総合性能・コア単位の性能に優れ、ゲームやフォトショップなどの特定のアプリケーションで真価を発揮しやすい。
Intel第13世代になってその差は広がるばかりだ。例えば、Core i9-13900Xはより価格の高いRyzen 9 7950Xと比較するとCore i9-13900Kの方が優れている。どの価格帯・性能帯を選ぶかによって優劣が逆転することもある。相性問題など複雑な関係もあり、分かりやすいIntel製品を選ぶほうが無難であり万能でもある。それはRyzen 7000X3Dを含めてのことだ。
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- AMD to Make Hybrid CPUs, Also Using AI for Chip Design: CTO Papermaster at ITF World(tom’s HARDWARE, 2023)
- CPU史上最悪の凋落の中、AMDのシェア3割迫る(PC Watch, 2023)
- Steamハードウェア&ソフトウェア 調査: April 2023(Steam, 2023)
ガレリアのAXFとXFだと、YouTubeでApexなどのpcゲームのライブ配信などをするにはAXFの方が良いのでしょうか?
ストレスなくみやすいのはどちらでしょうか?
ライブ配信にあたって、ゲーム+配信+何かの何かにはどういった事が含まれるでしょうか?
コメントありがとうございます。
>ガレリアのAXFとXFだと、YouTubeでApexなどのpcゲームのライブ配信などをするにはAXFの方が良いのでしょうか?
GALLERIA XFとAXFを比較すると配信に向いているのは間違いなくAXFです。特にGALLERIA XFのCPUがi7-9700Fにダウングレードされている今はGALLERIA AXFが圧倒的です。
>ストレスなくみやすいのはどちらでしょうか?
こちらは視聴者側という視点で考えます。この点については、どちらも同じと考えて良いでしょう。
ただし、GALLERIA AXFは性能が高い分動画の負荷を高くすることができますので、GALLERIA AXFの方がストレスを感じてしまう可能性は上がります。
それでもビットレートを調整すれば対応できます。
>ライブ配信にあたって、ゲーム+配信+何かの何かにはどういった事が含まれるでしょうか?
ライブ配信にあたっての「何か」とはその他のCPU負荷がかかるアプリケーションやツールのことを指します。それらに対応しやすいのがCPU負荷に強いRyzenシリーズです。動画の編集ソフト、キャプチャーソフト、仕事で使用するツール等も含まれます。
これらは操作していなくても、起動していれば負荷が発生します。例えば、ゲームを配信しながらDiscordやSkypeなどのボイスチャットツールもそうです。ゲーム+配信以外の「何か」ソフトやツールを起動していても安定するという表現で記載しました。人それぞれ起動するソフトやツールが違うので、明確に記載出来ませんでした。分かりにくい表現となってしまい、申し訳ありませんでした。
以上です。
よろしくお願いいたします。