Ryzen 9 7845HXのスペックレビュー&性能ベンチマークを検証していく。Zen 4(Dragon Range)世代のモバイル向けハイエンドモデルだ。Ryzen 9 7945HXの下位モデルに位置する。12コア24スレッドと数世代前まで考えられなかったスペックを誇る。処理性能が高くゲーミングノートPCやクリエイターノートPCで採用されている。高性能なグラフィックボードが必要なゲーマーにとってRyzen 9 7845HXは魅力的な選択肢となるだろう。
当ページの目次
Ryzen 9 7845HXの概要
コードネーム | Zen 4(Dragon Range) |
---|---|
プロセス | 5nm |
コア/スレッド数 | 12コア / 24スレッド |
コア定格/最大クロック | 3.0 GHz/ 5.2 GHz |
L2キャッシュ | 12MB |
L3キャッシュ | 64MB |
内蔵GPU | Radeon 610M |
TDP | 55W-75W |
PL2 | – |
発売日 | 2023年01月04日 |
価格 | – |
特徴 | (+)TDP最大75Wのハイエンドモデル (+)12コア24スレッドとスペックが高い (-)搭載BTOパソコンがほとんどない |
評価 | ・総合評価 8.5 ・ゲーム評価 8.5 |
Ryzen 9 7845HXの基本スペック
他のRyzen 9シリーズと比較
Ryzen 9 7845HX | Ryzen 9 7900X | Ryzen 9 7945HX | Ryzen 9 7940HS | |
---|---|---|---|---|
コードネーム | Zen 4 (Dragon Range) | Zen 4 (Raphael) | Zen 4 (Dragon Range) | Zen 4 (Phoenix) |
種類 | モバイル | デスク | モバイル | モバイル |
プロセス | 5nm | 5nm | 5nm | 4nm |
トランジスタ数 | 131.4億 | 131.4億 | 131.4億 | 250.0億 |
ダイサイズ | 2x 71 mm² | 2x 71 mm² | 2x 71 mm² | 178 mm² |
I/Oプロセス | 6nm | 6nm | 6nm | - |
I/Oダイサイズ | 122 mm² | 122 mm² | 122 mm² | - |
コア | 12 | 12 | 16 | 8 |
スレッド数 | 24 | 24 | 32 | 16 |
定格クロック | 3.00 GHz | 4.70 GHz | 2.50 GHz | 4.00 GHz |
最大クロック | 5.20 GHz | 5.60 GHz | 5.40 GHz | 5.20 GHz |
L2キャッシュ | 12MB | 12MB | 16MB | 8MB |
L3キャッシュ | 64MB | 64MB | 64MB | 16MB |
対応メモリ | DDR5-5200 | DDR5-5200 | DDR5-5200 | DDR5-5600 LPDDR5-7500 |
内蔵グラフィックス | Radeon 610M | Radeon Graphics | Radeon 610M | Radeon 780M |
GPUコア | 2 | 2 | 2 | 12 |
グラフィックス周波数 | 2.20 GHz | 2.20 GHz | 2.20 GHz | 2.80 GHz |
TDP | 45W-75W | 170W | 45W-75W | 35W-54W |
価格 | - | $549 | - | - |
発売日 | 2023/01/04 | 2022/09/27 | 2023/01/04 | 2023/01 |
Ryzen 9 7845HXのスペックについて詳しく見ていこう。Ryzen 9 7845HXはZen 4(Dragon Range)アーキテクチャを採用したCPUとなる。デスクトップ向けモデルのRyzen 9 7900Xをノート向けに改良したモデルだ。基本的なスペックが共通であることがわかる。Ryzen 9 7845HXもRyzen 9 7900Xと同様にチップレット構造(2×CCDと1×IOD)で製造されている。
12コア24スレッドとモバイル向けモデルとして高いスペックを持つ。8つのコアを持つCCXを2基搭載している。各CCXのコアを2つ無効化することで12コア(6+6)を実現している。まず異なるのはクロック周波数だ。定格クロックがRyzen 9 7845HXの方が1.70GHz(36%)低く、最大クロックも0.40GHz(7%)低い。その結果TDPも170Wから45W-75W(ベンダーが指定)まで引き下げられている。モバイル向けに改良となるとやはりTDPを抑える必要が出てくるのだから当然だろう。
上位モデルのRyezn 9 7945HXになるとRyzen 9 7845HXで無効化されていた2つのコアが有効化されて16コア(8+8)32スレッドとなる。定格クロックはRyzen 9 7945HXの方が0.5GHz(20%)高く、最大クロックはRyzen 9 7945HXの方が0.20GHz(4%)高い。Ryzen 9 7945HXの方がL2キャッシュが4MB多い。L3キャッシュ容量は共通だ。その他対応メモリや内蔵グラフィックスにも変更はない。
最後に省電力モデルの最上位モデルであるRyzen 9 7940HSと比較していく。同じZen 4アーキテクチャを採用したモデルだが、コードネームはPhoenixだ。プロセスは4nmとRyezn 9 7845HXよりも一回り小さい。メモリコントローラーなどがひとまとめになったモノシリックダイだ。トランジスタ数は250.0億、ダイサイズは178m㎡となる。
8コア16スレッドとRyzen 9 7845HXよりも33%ずつ少ない。定格クロックはRyzen 9 7940HSの方が1.00GHz(33%)高く、最大クロックはどちらも5.20GHzと共通だ。L2キャッシュはRyzen 9 7845HXの方が4MB多く、L3キャッシュもRyzen 9 7845HXの方が48MB多い。Ryzen 9 7940HSはDDR5-5600・LPDDR5-7500をサポートしている。Ryzen 9 7845HXよりも高クロックなメモリをサポートしている形だ。
Ryzen 9 7940HSはグラフィックスにRadeon 780Mを搭載している。GPUコアが12とRyzen 9 7845HXよりも6倍だ。グラフィックス周波数も2.80GHzと高い。これは外付けのグラフィックボードがない薄いノートパソコンでも搭載できるよう配慮しているのだろう。TDPは35W-54Wだ。
Intel製CPUと比較
Ryzen 9 7845HX | Core i9-13900HX | |
---|---|---|
コードネーム | Zen 4 (Dragon Range) | Raptor Lake |
プロセス | 5nm | 10nm |
トランジスタ数 | 131.4億 | - |
ダイサイズ | 2x 71 mm² | 257 mm² |
I/Oプロセス | 6nm | - |
I/Oダイサイズ | 122 mm² | - |
トータルコア | 12 | 24 |
トータルスレッド | 24 | 32 |
コア(P) | 12 | 8 |
スレッド(P) | 24 | 16 |
コア(E) | - | 16 |
スレッド(E) | - | 16 |
定格クロック(P) | 3.00 GHz | 2.20 GHz |
最大クロック(P) | 5.20 GHz | 5.40 GHz |
定格クロック(E) | - | 1.60 GHz |
最大クロック(E) | - | 3.90 GHz |
L2キャッシュ | 12MB | 32MB |
L3キャッシュ | 64MB | 36MB |
対応メモリ | DDR5-5200 | DDR5-5600 DDR4-3200 |
内蔵グラフィックス | Radeon 610M | UHD Graphics 770 |
PBP(TDP) | 55W-75W | 55W |
MTP | - | 157W |
価格 | - | $668 |
発売日 | 2023/01/04 | 2023/01/04 |
競合モデルであるIntel Core i9-13900HXと比較していこう。Core i9-13900HXはRaptor Lae世代のCPUで同時期に発売されたCPUだ。10nmプロセスを採用している。Ryzen 9 7845HXのCPUコアダイは5nmプロセスを採用していてアーキテクチャ的には進んでいる。Core i9-13900HXのダイサイズは257m㎡でRyzen 9 7845HX(264m㎡)よりも少しだけ小さい。
Core i9-13900HXは24コア32スレッドと高いスペックを持つ。Ryzen 9 7845HXが12コア24スレッドなのでコア数は倍だ。Core i9-13900HXはハイブリッドコアアーキテクチャを採用していて8個のPコアと16個のEコアを組み合わせている。
Ryzen 9 7845HXにはEコア相当のコアはないのでPコアのクロック周波数を見ていく。定格クロックはRyzen 9 7845HXの方が0.80GHz(35%)高く、最大クロックはCore i9-13900HXの方が0.20GHz(4%)高い。L2キャッシュはCore i9-13900HXの方が20MB多く、L3キャッシュはRyzen 9 7845HXの方が28MB多い。
Core i9-13900HXは対応メモリがDDR5-5600・DDR4-3200と幅が広い。DDR4メモリをサポートしているのはコスト面で有利だ。Core i9-13900HXのTDPは5W・MTPは157WとRyzen 9 7845HXと同等だ。MTPは公開されていない。Core i9-13900HXのMSRPは$668と高めだ。ハイエンドモデルになると仕方がないだろう。参考までにデスクトップ向けのCore i9-13900KのMSRPは$589とCore i9-13900HXの方が高価だ。
Ryzen 9 7845HXの特徴まとめ
モバイル向けモデルの中でトップクラスの性能を持つ
Ryzen 9 7845HXのCPU性能スコアは、32,457で現行のモバイル向けCPUの中でトップクラスの性能を持っている。競合モデルのCore i9-13900HXと同等のスコアを叩き出した。12個のPコア搭載はパフォーマンス面で有利だ。デスクトップ向けモデルで言えばIntel第14世代のCore i5-14600Kが近い。GeForce RTX 4080 Mobileなどハイエンドのグラフィックボードとの組み合わせでもパフォーマンスを引き出せる。
なお、デスクトップ向けのRyzen 9 7900Xとの性能差は13%とやや大きい。デスクトップ向けモデルとはTDPが異なることもあって負荷の掛かる場面ではこれ以上の差が出ることもある。それだけモバイル向けCPUは制約が多いと考えるとよいだろう。もちろんモバイル向けラインナップの序列ではトップクラスであるという事実は変わらない。Ryzen 9 7940HSなどのメインストリームでは物足りなさを感じてしまう方は要チェックだ。
ラインナップが少なく選びづらさがある
すでにチェックしている方であれば気付いたと思うが、Ryzen 9 7845HXを搭載したゲーミングノートPCはほとんどない。取り扱いメーカーもASUSとDell(エイリアンウェア)ぐらいだ。選択肢が少ないとどうしても妥協が必要になってきてしまう。
Ryzen 9 7845HX搭載モデルを探しているならRyzen 9 7945HX・Core i9-13980HX・Core i9-13950HX・Core i9-13900HXなどのモデルも見ておくとよい。性能的には同等で選択肢が増えるのであなたにとってメリットも大きいはずだ。より幅広いBTOメーカー・ディスプレイサイズ・グラフィックボードとの組み合わせから選択できる。
Ryzen 9 7845HXのベンチマーク一覧
Cinebench R23
定番ベンチマークソフトであるCinebench R23でパフォーマンスを見ていこう。Ryzen 9 7845HXのマルチコア性能は27,953、シングルコア性能は1,863と高い。競合モデルであるCore i9-13900HXと比べてマルチコア性能は2%低く、シングルコア性能が10%低い。省電力モデルのフラグシップモデルであるRyzen 9 7940HSと比べてマルチコア性能が56%高く、シングルコア性能が4%高い。モバイル向けモデルとしてはトップクラスのモデルだ。
Handbrake
動画のエンコードソフトであるHandbrakeでのパフォーマンスを見ていこう。競合のCore i9-13900HXと比べて4%程度パフォーマンスが高い。上位モデルのRyzen 9 7945HXと比べると15%程度劣る形だ。ここはコアの差が出ている。メインストリームのRyzen 9 7940HSよりも10%近くもパフォーマンスが高い。スペックを考えるともう少し差が開いてもよさそうだ。
7-Zip(圧縮)
Zipファイルの圧縮速度を見ていく。客観的にCPU性能を計測する上で有効なアプリケーションの一つだ。競合モデルのCore i9-13900Kと同等の速度が出ている。Ryzen 9 7940HSと比べると18%もパフォーマンスが高い。上位モデルのRyzen 9 7945HXと比べて6%劣る。モバイル向けハイエンドモデルとして十分なパフォーマンスが発揮できている。
7-Zip(解凍)
続いて解凍速度を見ていく。Core i9シリーズを抑えてTOP 3に食い込んだ。Ryzen 9 7945HXよりも4%低くなっている。Core i9-13900HXと比べて5%パフォーマンスが高い。メインストリームのRyzen 9 7940HSと比べて20%もパフォーマンスが高くなっている。クリエイター作業は得意としている分野だ。
Adobe Photoshop
Photoshopでのパフォーマンスを見ていく。PugetBenchが公開しているベンチマークを活用している。Ryzen 9 7845HXのスコアは1,237だ。Core i9-13900HXと比べて10%程度パフォーマンスが高い。上位モデルのRyzen 9 7945HXよりも1%程度劣るものの同等と考えてよいだろう。メインストリームのRyzen 9 7940HSよりも4%程度パフォーマンスが低いのが気になるところだ。これはソフトウェア側で最適化がうまくできていないのではないかと思う。
Ryzen 9 7845HX搭載ゲーミングノートPC一覧
ROG Strix G17 G713PV(ASUS)
液晶:17.3インチFHD 144Hz
重量:約2.8kg
CPU:Ryzen 9 7845HX
GPU:GeForce RTX 4060 Mobile
メモリ:DDR5-4800 16GB
ストレージ:SSD 1TB Gen4 NVMe
コスパ:調査中
Ryzen 9 7845HX搭載モデルの中で最も安く購入できる一台だ。17.3インチFHDディスプレイを搭載している。リフレッシュレートは144Hz対応だ。本体重量は約2.8kgとやや重い。持ち運ぶことを前提に考えていると厳しいかもしれない。グラフィックスにはAda Lovelace世代のミドルクラスであるGeForce RTX 4060 Mobileを搭載している。フルHD環境でのゲームプレイに最適だ。CPU性能が高いのでクリエイター用途にも適している。CPUとGPUのバランスを考えるとCPU寄りだ。ゲームプレイをメインに考えるならCPUのランクを落としてグラフィックスの性能を上げる方がよいだろう。メモリDDR5-4800 16GB・SSD 1TB Gen4 NVMeと構成は平均以上だ。
ALIENWARE M16ゲーミング ノートパソコン(ALIENWARE)
299,979円 284,953円
液晶:16.0インチQuad HD+ 240Hz
重量:最大約3.30kg
CPU:Ryzen 9 7845HX
GPU:GeForce RTX 4070 Mobile
メモリ:DDR5-5200 16GB
ストレージ:SSD 1TB NVMe
コスパ:調査中
エイリアンウェアからもRyzen 9 7845HXを搭載したモデルが販売されている。16.0インチQuad HD+ディスプレイを搭載している。リフレッシュレートは240Hzだ。グラフィックスにはハイクラスのGeForce RTX 4070 Mobileを搭載している。Ryzen 9 7845HXとのバランスを考えると70番台以上の組み合わせがベターだ。メモリDDR5-5200 16GB・SSD 1TBと構成も充実している。高クロックなメモリを搭載しているのは興味深い。本体重量が約3.30kgと重いのがネックだ。持ち運ぶことを考えて大きめのカバンを用意しておくとよいだろう。
ALIENWARE M18 ゲーミング ノートPC(ALIENWARE)
液晶:18.0インチQuad HD+ 165Hz
重量:最大約4.23kg
CPU:Ryzen 9 7845HX
GPU:GeForce RTX 4080 Mobile
メモリ:DDR5-5200 16GB
ストレージ:SSD 1TB NVMe
コスパ:調査中
エイリアンウェアブランドのハイエンドモデルだ。18.0インチQuad HD+ディスプレイを搭載している。リフレッシュレートは165Hz対応だ。カスタマイズでFHD+(480Hz)ディスプレイに変更できる。FPSを本気でプレイするならカスタマイズを検討してもよいだろう。グラフィックスにはAda Lovelace世代のフラグシップモデルであるGeForce RTX 4080 Mobileを搭載している。高解像度・高リフレッシュレートでのゲームプレイも十分視野に入る。メモリDDR5-5200 16GB・SSD 1TB NVMeと構成も十分だ。問題は本体重量が約4.23kgとかなり重いことだ。ゲーミングノート全体で見ても4.00kgを超えるモデルはない。基本的には自宅に置いておくのがよい。持ち運びには車が必須だ。バッテリーも持ち運ぶとなると相当な重さになる。
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