巷で言われるゲーミングノートPCをおすすめしない理由について検証していく。ゲーミングノートPCは、持ち運びができるというのが特徴で興味を持っているユーザーも多いだろう。ネットなどで調べると”ゲーミングノートPCをおすすめしない理由”がたくさん出てくることに気づく。まずはどういったゲーマーであればゲーミングノートPCが合うのかを見ていく。
それを踏まえた上で一般的にゲーミングノートPCがおすすめされない理由を見れば本当にあなたに合うかどうかを判断できるはずだ。なお、当サイトを立ち上げた2012年時点ではゲーミングノートの性能が低く割高なモデルが多かったことから筆者自身もゲーミングノートPC購入に反対だった。基本的にはデスクトップパソコンをおすすめしていた過去がある。今は性能面の問題はある程度クリアされていてデメリットさえ受け入れられるのであれば購入しても問題ないと考えている。
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巷で言われるゲーミングノートPCをおすすめしない理由
一般的にゲーミングノートPCに反対している方が挙げる理由について見ていこう。どれも理にかなったものであることは間違いない。要はこれらの反対理由に納得できるかどうかがゲーミングPC購入では重要となる。単純にスペースを取りたくないからといった単純な動機で購入すると後悔してしまう可能性がある。
CPU・GPUの性能でデスクトップに劣る
ゲーミングノートPCがおすすめされない理由として一番に挙がるのは性能の低さかもしれない。上記はデスクトップ向け(オレンジ)とモバイル向け( )グラフィックボードの性能を比較したものだ。このグラフを見ると、同じGeForce RTX 4090という型番でもデスクトップ向けモデルとモバイル向けモデルでは50%以上の性能差があることがわかる。GeForce RTX 4090 Mobileはデスクトップ向けモデルで言えばGeForce RTX 4070 SUPERが近い。
また、グラフには記載していないが同じモバイル向けモデルのGeForce RTX 4090 Mobile(便宜上Mobileを追加)でもメーカーごとにパフォーマンスが異なる。具体的には規定された消費電力を枠内で自由に変更でき性能も変わるのだ。GeForce RTX 4090 Mobileの場合TDPは120Wから150Wとなる。薄型のゲーミングノートPCでは省電力性を重視してTDPを抑えたモデルを選択するだろう。メーカーの公式サイトにどのTDPが設定されているのか記載されていないためACアダプターの容量などから判断しなければいけない。レビューサイトを参考にしてもよいかもしれない。
CPUも同様で同じCore i9シリーズ/Core i7シリーズでもデスクトップ向けモデルとモバイル向けモデルは全く別物だ。ゲーミングノートPCの購入を検討する際は性能面についてしっかり理解しておこう。ゲームの推奨環境がわかりにくいのも問題だ。基本的にデスクトップの性能で表記されているためだ。ゲーミングノートPCの場合は公式発表の推奨スペックをそのまま受け取ると思った通りの結果が得られない可能性がある。
すでに記載した通り同じGeForce RTX 4090でもデスクトップ向けとモバイル向けで異なり、かつモバイル向けモデルの中でも性能差があるからだ。ワンランクあるいはツーランク上のモデルを検討するとよいかもしれない。ゲーミングノートPCの場合モニター・キーボードを購入する必要はないが、デスクトップパソコンと同等のパフォーマンスを追求するなら割高になる。型番に惑わされないようにしよう。
主要パーツの換装が難しく将来性が低い
ゲーミングノートPCは、CPUやGPUなどの主要パーツの換装が難しく将来性が低い。性能が物足りないと思っても基本的にアップグレードはできずゲーミングノートPC自体を買い替える必要があるのはデメリットだろう。デスクトップのようにパーツを換装して寿命を伸ばすということが難しい。CPUやグラフィックボードは1,2年周期で新しいモデルがリリースされる。その度にゲーミングノートPCを買い替えるというのは現実的ではない。
メモリやストレージについては各スロットの空きがあるので容易に増設可能だ。スロットに余裕さえあれば問題なくできるだろう。ただし、ご自身で増設をした場合メーカーによっては保証がなくなってしまう可能性もあるため事前に確認しておくとよい。ストレージについては、外付けのストレージやクラウドストレージ(Dropbox・OneDrive etc.)で対応することもできる。
どこか一つのパーツが壊れるとパソコンを預ける必要があるのもデメリットと言えるかもしれない。例えば、キーボードの調子が悪くゲームプレイ自体に問題はなくても修理となるとメーカーに送る必要がありゲームができなくなる。これがデスクトップパソコンならキーボードだけを修理依頼すればいいだけだ。
キーボードが使いづらい
ゲーミングノートPCに採用されているキーボードはデスクトップ向けのキーボート異なる。タッチが悪くおすすめしづらい理由となる。配列にも癖があることが多い。高性能ないわゆる”ゲーミング”キーボードを採用したモデルであっても仕様上このデメリットが改善されることはない。ノートの形状では立体的なキーボードを搭載することが難しいからだ。ゲーミングノートPCのキーボードは総じて平型で薄く、ストロークも浅く、そして返しも弱い。
打ちやすいようにキートップの大きさは変えているくらいだ。これ自体は一般的な打鍵では役立つもので、ゲームプレイに関しては何も影響を与えてくれないものだ。FPSやRTSのように、激しい操作が求められるゲームジャンルにはとくに適していないように感じる。キーを押し続け、離してすぐ押すと認識しないタイプもあった。
今はある程度軽減されているものの、高速打鍵に近いゲームの操作では慣れが求められる。慣れても反応速度の関係で、思うようなプレイができないこともある。もちろんデスクトップ用のゲーミングキーボードを採用できるが、そうなると自宅など特定の場所に限定されてしまう。持ち運ぶことが前提のノートタイプでは、キーボードを持ち運ぶことはそのままデメリットになる。
意外と持ち運びには不向き
ゲーミングノートPCの最大のメリットは持ち運びができることだが、実際は本体が重くバッテリー駆動時間も短いため持ち運びに適していない。最近のゲーミングノートPCはモニターの大型化が顕著で、16.0インチ・17.3インチ・18.0インチ搭載モデルが販売されている。こうなると本体重量は2.5kg以上になり、中には3.0kgを超えることもある。さすがに2.0kgを超えてくると持ち運びがしづらい。
大きなカバンが必要で電車での移動は難しくなる。ビジネス向けのノートパソコンをイメージしていると愕然としてしまうだろう。ビジネス向けモデルだと16.0インチでも1.0kg前後のモデルも多い。ゲーミングノートPCとは重量が大きく異なる。大学生がゲーミングノートPCを選択して後悔するということがある。大学でノートパソコンを使用するので、趣味と実用性を兼ねてゲーミングノートPCを選択する。
その結果、重くてかさばるゲーミングノートPCを持っての通学にストレスを感じるというものだ。もちろんゲーミングノートPCの中には軽いモデルもあるが、それはエントリークラスのモデルで性能は低い。ある程度の性能を求めると、排熱や冷却の関係もあって重量が重くなる。
もう一つ注意すべきはバッテリー駆動時間の短さだ。公式サイトが公表しているバッテリー駆動時間は、JEITAバッテリ動作時間測定法(電子情報技術産業協会, 2023)に則ったもので動画再生時の時間を計測している。一般的なゲーマーの環境とは言えない。極端に駆動時間が短くなるためゲームプレイ時は電源接続が必須だ。こうなると外出先でも電源を使える環境がないと実質ゲームができないことになる。
モニターが小さく使いづらいときがある
ゲーミングノートPCは大きくても18.0インチとデスクトップ向けのゲーミングモニターと比べてかなり小さい。24.0インチや27.0インチのモニターと比べて表示される文字やUIは小さくなる。4K対応モニターを搭載したゲーミングノートPCならより顕著だ。文字・UI・アプリケーションそのものを拡大表示しても、UIの画面占有率が上がるだけで根本的な解決とはならない。
ゲームプレイにおいてはUIを大きくしなければ細かな数値が見えないということが起こり得る。ただし、大きくしたせいで、画面のほとんどがUIで埋まり現実的ではないケースもある。UIのカスタマイズができないゲームだと、視認するのが難しい情報もある。必要な情報の取捨選択を強いられることになる。FPSやRTSではそれほど影響はなくても、RPG系のゲームでは厳しい。UIが被って先が見えない、見にくいというのを経験してきた。普段デスクトップPCを使っていれば痛感してしまうだろう。
ファンの音が大きい
ゲーミングノートPCを初めて使うとファンの大きさに驚くことになるかもしれない。これは事前に想定しておく必要がある。ゲーミングノートPCはデスクトップパソコンと比べて本体内部にスペースがなく熱がこもりやすい。ゲーム中は熱くなりすぎて膝の上に置けないほどだ。熱を排出するためにファンは必須だ。耳元に近いこともあってかなりうるさく静かな環境では使いづらい。
CPUやグラフィックボードの高性能化によって消費電力が上がり発熱量も増える。ゲーミングノートPCにとっては厳しい時代が来ている。240Hz対応モニターを搭載したモデルも登場して、快適なゲーム環境を整えられるようにはなった。高リフレッシュレートモニターに対応できる性能も有している。あとは冷却性能が追いつけば文句はない。年々冷却の問題は大きくなっているように感じる。
1時間程度の使用でも熱気を感じるくらいにはなるので、プレイスタイルよりもプレイするゲームジャンルの影響を受けると考えるべきだろうか。本体が重くなるのは熱対策のための冷却システムが必要なことも関係している。うまく熱が排出できないとパフォーマンスが低下してしまうこともある。
対人要素の強いフレームレートが重要なゲームでは、フレームレートが不安定になることは避けたいはずだ。これは性能が高くなればなるほど起こりやすくなる。しかし、性能を抑えるとそもそもの負荷が高まるので、どちらにしてもラグや遅延に遭遇することになる。極端に言えば、ゲーミングノートPCを使用しているだけで不利な状況に陥る可能性があるということだ。
熱対策はいくつかあるものの、構造的に効果的な冷却方法はない。一番効果的なのはパフォーマンスを犠牲にしてファンの稼働を落として発熱量自体を下げてあげることだ。新しい世代のCPUやグラフィックボードであればファンの稼働を落としてもまずまずのパフォーマンスを期待できるはずだ。CPUもAMD製の省電力モデル(Ryzen 7 7840HS)を選択すればよい。プロセスの微細化が進み発熱量は抑えられている。
ラインナップが極端に少ない
ゲーミングノートPCは、デスクトップパソコンと比べてラインナップが少なく限られたモデルの中から選択しなければいけない。理想のモデルが見つからない場合は妥協することになる。ゲーミングノートPCを探すならASUSやDellなどの海外メーカーか、ドスパラ・マウスコンピューター・パソコン工房などの国内BTOメーカーに限定される。国内BTOメーカーでもTSUKUMO・サイコム・ark・パソコンショップセブンなどはゲーミングノートPCの取り扱いがない。
一時はゲーミングノートPCの時代が来たかと思うほど人気がありゲーミングノートPCのラインナップを大幅に拡充していた。しかし、今はそのラインナップも軒並み縮小されている。もしかしたら巣ごもり需要の影響もあったのかもしれない。選択肢が少ないことで競争も生まれづらくユーザーにとっては不利な環境だ。数が出ないということはそれだけ価格も高めになってしまう。割高になってしまう要因の一つと考えられる。
ゲーミングノートPCをおすすめしない理由を検証
理由まとめ | 深刻度 | 改善のしやすさ |
---|---|---|
性能でデスクトップに劣る | ★★★★★ | ★★★★☆ |
主要パーツの換装が難しく将来性が低い | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
キーボードが使いづらい | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ |
意外と持ち運びには不向き | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ |
ファンの音が大きい | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ |
モニターが小さく使いづらい | ★★★☆☆ | ★☆☆☆☆ |
ラインナップが極端に少ない | ★★☆☆☆ | ★☆☆☆☆ |
ゲーミングノートPCをおすすめしない理由ごとに深刻度(あるいは重要度)とその改善のしやすさをまとめている。実は深刻度の高い項目の方が対応しやすいのだ。つまり、ゲーミングノートPCの弱点は力技でなんとかなるという側面もある。例えば、性能が追いつかないなら初めからハイエンドのモデルを選択しておけばある程度カバーできる。
お金は掛かるが、デスクトップ向けモデルよりもワンランクあるいはツーランクのグレードを購入すればオッケーだ。主要パーツの換装が難しい点もクリアできるだろう。キーボードが使いづらければゲーミングキーボードを購入して対応すればよいし、持ち運びが難しいなら車移動をメインすればよい。
モニターが小さく見づらい点はやや対応しづらい。どこまで許容できるかがポイントだ。ファンの音が気になりそうなら最新のグラフィックボードとAMDが販売する省電力CPUを選択しよう。プロセスの微細化のおんけいもあって発熱量を抑えられるからだ。
ゲーミングノートPCはこんなゲーマーにおすすめ!
- 一定のお金を掛けられる方
- サブパソコンとして購入を検討している方
- 外出先でも電源利用が前提の方
- 車での移動が多い方
ゲーミングノートPCの弱点を考えるとこれらの条件に当てはまる方であれば購入しても後悔しないだろう。当てはまる項目が多いほど有利だ。デスクトップパソコンを所有していてゲーミングノートPCをサブパソコンとして利用するなど利用頻度が高くなければ長所を活かしやすい。
参照外部サイト
- JEITAバッテリ動作時間測定法(Ver. 3.0)(電子情報技術産業協会, 2023)