デュアル水冷システム搭載のゲーミングPCを紹介していく。CPUもグラフィックボードも数年前と比べて飛躍的に性能が向上している。アーキテクチャも進化して省電力性も向上しているが、それ以上に消費電力・発熱量ともに大きくなっている。だからこそデュアル水冷システムが求められていると考えることもできる。CPUクーラーについては水冷式が珍しいものではなくなった。夏場の暑い時期などは特に意識する必要があるだろう。
ゲーミングPCにおける様々な熱対策の中でもCPUとGPU水冷化の効果は絶大だ。ネックとなるのはコストと故障リスクだろう。空冷タイプと比べてパーツの点数が増えるのである程度は仕方がない。パフォーマンス・価格・故障リスクを天秤にかけて選択しよう。搭載モデルについては、「おすすめのダブル水冷のゲーミングPCを紹介」で紹介している。デュアル位水冷はサイコムが得意としている分野だ。
デュアル水冷システムとは
画像引用元:https://www.sycom.co.jp/bto/Hydro/
デュアル水冷システムとは、CPUとグラフィックボードを冷却するための2基のラジエーターを搭載した水冷システムのことだ。ポイントはCPU用の水冷システムとグラフィックボード用の水冷システムがそれぞれ別に組み込まれているところにある。PCパーツの中で最も発熱量の大きいCPUとGPUを冷却できるメリットは大きい。
CPUに水冷クーラーを搭載したモデルというのはよく見るが、デュアル水冷は珍しくあまりラインナップにない。どちらかというとグラフィックボードの水冷化が希少だ。2025年時点でデュアル水冷モデルは、サイコムでのみ販売されている。上記の画像はサイコムのデュアル水冷のイメージ画像だ。一時はマウスコンピューターのゲーミングブランドであるG TUNEからも販売されていた。
その後マウスコンピューターはゲーミングノートPC向けの水冷ボックスも販売していたがこちらも消滅した。デュアル水冷モデルは高性能なパーツを採用していて性能・構成もパーフェクトに近い。価格差を受け入れられるならおすすめしやすい。夏場の暑い時期でも温度のコントロールができるため安定したゲームプレイが実現する。
水冷CPUクーラーの効果を検証した結果、やはりハイエンドのモデルであれば水冷クーラーの方が好ましいことがわかった。CPUもGPUもこのクロック周波数を高く維持できれば理論上は高いパフォーマンスが発揮できているということになる。絶対的な性能は変わらないが、時間当たりのパフォーマンスで考えれば十分な向上と言えるだろう。
画像引用元:https://jp.msi.com/
実は水冷式のグラフィックボードはBTOメーカーの独占ではない。水冷クーラー搭載のグラフィックボードは市販されているのだ。上記画像はMSIの水冷クーラー搭載モデルである「GeForce RTX 5090 32G SUPRIM LIQUID SOC」だ。ハイエンドにふさわしい高性能クーラー搭載でパフォーマンスを最大限に引き出せる。空冷と水冷を組み合わせたハイブリッド冷却システムは画期的だ。問題は579,80円と高価なことだ。通常のGeForce RTX 5090が398,000円なので実に45%も高い。もっとも購入したくても供給不足の影響で購入できない状況だが…
デュアル水冷パソコンを選ぶ際の注意点
通常モデルよりも価格が高い
ダブル水冷パソコンは、通常のモデルと比べて7万円~8万円程度高くなってしまう。当然水冷化のパーツが増えたこととそれに合わせてケースを選定する必要が出てくるので仕方のない部分だ。電源ユニットにもコストは掛かってしまうだろう。また、ハイクラス以上のゲーミングPCで採用されることが多くCPUとグラフィックボードの価格自体も上がってしまう。
これを高いと見るか安いと見るかで評価が変わる。機能性の高さを見れば特段高いと感じることはないと思う。パソコンは性能が高くなることで、パフォーマンスを低下させる原因となる熱の問題が付いて回る。夏場はどうしても温度が上昇しやすく、それによってパフォーマンスの著しい低下が見られるものだ。その問題を解決するのが、このダブル水冷モデルだ。精神的にストレスを感じることもなくなるのではないかと思う。
パーツの交換時にリスクが伴う
水冷パソコンの場合CPUやグラフィックボードを交換することが難しくなる。新しいパーツが出たから交換しようと気軽に行うことはできない。交換自体ができても水冷化がうまくできなかったり、故障の原因となったりしてしまう。特注品を使っている場合は交換自体不可能と考えておこう。だからこそハイエンドクラスのモデルを選択しておきたい。
デメリットに関しては人によるところが大きく、ハイエンドモデルである以上少なくとも早々に交換する必要はなさそうだ。基本的にダブル水冷パソコンでは水漏れの心配もなく耐久性も高いので基本的な面での不安はない。それでも空冷式と比べると故障リスクは高い。故障してしまうと修理に時間とコストが掛かってしまうことになる。当然ダブル水冷という特殊性から購入した店舗での修理となるので、近くのパソコンショップに持ち込みというのは厳しい。
かつてマウスコンピューターが画期的な水冷システムを販売していた
画像引用元:(GAME Watch, 2015)
マウスコンピューターが2015年頃に販売していたデュアル水冷パソコンの仕組みを見ていく。今は販売終了となっているため参考として読み進めていただければと思う。同じシステムのゲーミングPCが登場していないところを見るとネックとなる部分が多かったのかもしれない。サイコムのデュアル水冷システムはCPUとGPUそれぞれにラジエーターが搭載されたオーソドックスな仕組みだ。
ラジエーター1つでCPUとGPUを冷却
驚くべきことは1つのラジエーターでCPUとグラフィックボードの両パーツの冷却に成功したことだ。本来CPUとグラフィックボードそれぞれに冷却用のラジエーターが必要になり搭載ケースなどに制約が出てしまう。マウスコンピューターはクイックコネクトと呼ばれる独自技術によって1つのラジエーターで2つのパーツへ対応できるようになった。
ケースの制約も緩和されSLI接続によるミドルタワーでのデュアル水冷も実現している。また、ラジエーターの数が減ったことで静音性と効率化を両立できるようになった。メンテナンスフリーで最低でも5年は品質の低下は見られないほど質の高い水冷クーラーだということだ。品質の高さが売りとなっているマウスコンピューターの今後の展望は様々でこれからも注目したい。
マウスコンピューターが始めるゲーミングPCのパフォーマンス向上と品質向上を両立した新しい何かを生み出す一歩だ。フルタワーPCでしか実現しなかったデュアル水冷をミドルタワーで実現したのだから、もはや不可能なことはないだろう。現在ノートパソコンとデスクトップパソコンの両方の良いところを凝縮したパソコンの開発も進んでいるとのことだ。
すっきりした中身で拡張も可能
内部を見ると水冷のチューブが目立つくらいでまだ余裕がある。取り外しも簡単なので水冷対応のグラフィックボードなんかが登場すれば、付け替えもできる優れものだ。CPUやグラフィックボードのオーバークロックによる熱の問題も簡単にクリアしている。より高みを見れる構成でも通常のモデルと比較して約2万円の差でしかない。
これを高いと見るか安いと見るかは、ユーザーが求めているものによって変わってくるだろう。通常のモデルと同じくメモリスロットは4つあり、8GBを2枚使用した16GB構成で最大32GBまで搭載することが可能となっている。HDDを3~4台追加したり、サウンドカードやその他スロットを埋めるほどの拡張を行うには最適なダブル水冷となる。
ただし、CPUとグラフィックボードのみの冷却に特化しているため、ファンの交換や増設も一応検討したほうが良さそうだ。CPUとグラフィックボードからの発熱を大きく軽減させることができるので、よほどのことがない限り大丈夫だとは思うが・・・電源は500Wなので、増設を行うときはなるべく電源の見直しもしておきたい。
おすすめのデュアル水冷のゲーミングPCを紹介
G-Master Hydro Z890 Cube(サイコム)
価格:
446,500円 426,500+送料2,920円
CPU:Core Ultra 7 265K(240mm水冷)
GPU:GeForce RTX 4070 Ti SUPER
メモリ:DDR5-5600 32GB
ストレージ:SSD 1TB Gen4 NVMe
電源:750W 80PLUS GOLD
コスパ:調査中
サイコムでもデュアル水冷モデルがある。驚くことにG-Master Hydro Z790 Cubeはキューブケースなのだ!通常デュアル水冷パソコンの場合2つのラジエーターを搭載するために大型のケースが採用されることが多い。このモデルについてはコンパクトでありながら十分な拡張性を持ち高いパフォーマンスを発揮する。Core Ultra 7 265K×GeForce RTX 4070 Ti SUPERを搭載していて高解像度や高リフレッシュレートでのゲームプレイに対応することが可能だ。WQHD環境でのゲームプレイに適している。Core Ultra 7 265Kは20コア20スレッドと高スペックでマルチスレッド性能が高い。ハイパースレッディングには非対応となったが、アーキテクチャの進化によってパフォーマンスは引き上げられている。動画編集などのクリエイター作業を考えている方にもおすすめだ。これをベースモデルにあなた好みの一台に仕上げて欲しい。
G-Master Hydro Z890(サイコム)
価格:
502,490円 482,490円+送料2,920円
CPU:Core Ultra 7 265K
GPU:GeForce RTX 4080 SUPER
メモリ:DDR5-5600 32GB
ストレージ:SSD 1TB Gen4 NVMe
電源:850W 80PLUS GOLD
コスパ:調査中
ミドルタワーのゲーミングPCだ。CPUにはハイクラスのCore Ultra 7 265Kを採用している。フラグシップモデルのCore Ultra 9 285Kを選択することも可能だ。ゲームだけではなく、動画編集やエンコードなどでも高い性能を発揮する。グラフィックスにはGeForce RTX 4080 SUPERを搭載している。電源も高品質な850W GOLD認証を採用し抜群の安定性を誇る。CPUクーラー・マザーボード・ストレージなどのカスタマイズでぜひあなた好みの一台に仕上げて欲しい。品薄状態ということもあってGeForce RTX 4090へのアップグレードはできなくなっている。次世代のGeForce RTX 50シリーズ登場の布石かもしれない。
G-Master Hydro X870A(サイコム)
価格:
486,950円 466,950円+送料2,920円
CPU:Ryzen 7 9700X
GPU:GeForce RTX 4080 SUPER
メモリ:DDR5-5600 32GB
ストレージ:SSD 1TB Gen4 NVMe
電源:850W 80PLUS GOLD
コスパ:調査中
Ryzenシリーズを採用した水冷モデルもある。当該モデルはミドルタワーケースを採用している。Ryzen 7 9700Xは8コア16スレッドとマルチスレッド性能の高さが魅力だ。動画編集・RAW現像などクリエイター作業も得意としている。グラフィックボードにはGeForce RTX 4080 SUPERを搭載している。4K環境をメインターゲットとできる高い性能が魅力となっている。ベースモデルとして最適な一台だ。CPUやグラフィックボードをカスタマイズしたり、好みのメーカー製パーツに交換したりと楽しめるはずだ。3D V-Cache搭載の人気モデルであるRyzen 7 9800X3Dへアップグレードできる。ダウングレードにも対応している。
G-Tune H6-I9G80BK-A(G-Tune)
価格:439,800円(税込)
液晶:16.0インチWQXGA 240Hz
CPU:Core i9-13900HX
GPU:GeForce RTX 4080 Mobile
メモリ:DDR5-4800 32GB
SSD:1TB Gen4 NVMe
HDD:非搭載
+11,000円で外付け水冷BOX付属となる。ダブル水冷というわけではないが、ゲーミングノートPCで水冷クーラーを搭載したモデルは珍しいので紹介しておく。熱対策がキーとなるゲーミングノートPCでは理にかなったモデルだと言える。Core i9-13900HX×RTX 4080 Mobile搭載でデスクトップパソコンと比べても見劣りしないパフォーマンスを誇る。高リフレッシュレートでのゲームプレイにも対応可能だ。もちろん水冷クーラーのおかげで通常よりも高いパフォーマンスを期待できる。メモリ32GB、SSD 1TB Gen4 NVMeと構成も充実している。水冷ボックスなしでの本体重量は約2.34kgと性能から見ると軽い。持ち運びにも対応できそうだ。
G-Tune XP-Z-LC(G-Tune)
価格:571,780円(税込)
CPU:Core i9-11900K
GPU:GeForce RTX 3090
メモリ:DDR4-3200 32GB
SSD:2TB NVMe
HDD:4TB
電源:1000W 80PLUS TITANIUM
RTX 3090を搭載したハイエンドクラスのゲーミングPCだ。CPUとGPUのダブル水冷搭載モデルとなっている。ゲーム性能に関しては現行最強と言っても過言ではない。4K解像度にも対応できるポテンシャルを持っている。ただし、ゲームプレイだけを考えるとGeForce RTX 3080 TiやGeForce RTX 3080でもよいのではないかとも思う。フラグシップモデルにこだわりたい方向けだ。構成も圧倒的でメモリ64GB、SSD 2TB、HDD 4TBとなる。電源ユニットも1000W PLATINUMと万全だろう。価格は税込50万円オーバーと選びやすいとは言えないが、まだまだ数が少ないGeForce RTX 3090を搭載した貴重なモデルだ。
出典
- コネクタを繋ぐだけのCPU・GPUダブル水冷ゲーミングPCが完成(GAME Watch, 2015)