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ライバル同士であるNVIDIA GeForceとAMD Radeon製グラフィックボードの特徴を比較している。ゲーミングPCの購入や自作PCでのグラフィックボード選びでどちらのメーカーがよいのか悩んでいる方向けのコンテンツだ。NVIDIA製モデルはAda Lovelace/Ampere世代(RTX 40/RTX 30シリーズ)を、AMD製モデルはRadeon RX 7000/Radeon RX 6000シリーズを中心に見ていく。Intel製グラフィックボードのArcについては触れていない。
当ページの目次
NVIDIAとAMDの比較概要
企業名 | NVIDIA | AMD |
---|---|---|
ブランド | GeForce | Radeon |
売上 | $60,922,000,000 (9兆1383億円) | $22,680,000,000 (3兆4020億円) |
製品 | グラフィックボード | グラフィックボード CPU |
世代 | Ada Lovelace Ampere | RDNA 3.0 RDNA 2.0 |
Steamシェア (2024/2時点) | 76.92% | 15.09% |
ラインナップ | ☆ | ○ |
コスパ | ◎ | ☆ |
グラフィックス性能 | ☆ | ◎ |
レイトレーシング性能 | ○~☆ | △~○ |
特徴 | 幅広い性能帯をカバー | 上位モデルのコスパが高い |
BTOパソコン | ラインナップ豊富 割安 | ラインナップ少なめ 割高 |
NVIDIAは2022年10月に新しい世代であるAda Lovelaceのグラフィックボードをリリースした。上位モデルから順に発売されて、今はRTX 4090・RTX 4080・RTX 4070 Ti・RTX 4060 Ti 16GB/8GB・RTX 4060と順調にラインナップを増やしている。その後後発モデルとしてRTX 4080 SUPER・RTX 4070 Ti SUPER・RTX 4070 SUPERも発売された。
AMDはRDNA 3.0アーキテクチャを採用したRadeon RX 7000シリーズがラインナップにある。Radeon RX 7900 XTX・RX 7900 XT・RX 7800 XT・RX 7700 XT・RX 7600 XT・RX 7600と全てのラインナップが揃った。Radeon RX 6000シリーズは徐々に市場から姿を消しているように思える。
2024年2月時点でのSteam上での各メーカーのシェアはNVIDIAが76.92%と大部分を占めている。AMDのシェアは15.09%に留まる。そうは言っても少し前まででは考えられないほどRadeonがシェアを伸ばしていることは注目に値する。Radeon RX 6000シリーズが市場に与えたインパクトは大きい。次世代のRadeon RX 7000シリーズのラインナップが揃ったのでもう少し価格が下がれば今後もシェアが伸びる可能性がある。競合モデルが増えることはユーザーにとってプラスになるはずだ。
純粋なグラフィックス処理性能(ラスタライズ性能)だけで見ればRadeon製モデルの方がコストパフォーマンスが高い。より安価な価格でより高性能なグラフィックボードを購入できる。一方で、レイトレーシング性能についてはNVIDIA製グラフィックボードが圧倒している。AMD製Radeonシリーズよりも1世代早くレイトレーシングを導入したことで有利な立場にある。Radeonシリーズのレイトレーシングは発展途上だ。同様にDLSSなどAIの分野でもNVIDIAが優勢だ。DLSS 3.5がリリースされより注目を増している。
特徴を見ていくとGeForceは上から下までまんべんなく性能帯・価格帯をカバーしているのが魅力だ。初心者の方でも選びやすい。一方で、Radeonシリーズはハイクラスに強くコストパフォーマンスも良好だ。レイトレーシング性能を重視する方が少ない性能帯ということも後押ししてくれる。最新のRadeon RX 7000シリーズのモデルはハイエンドモデルとして高いパフォーマンスを持つ。
BTOパソコンについてはまだまだNVIDIA製グラフィックボードが優勢だ。ラインナップも多く初心者から上級者まで選びやすさがある。AMD製グラフィックボードについてはラインナップが限定的で割高感がある。単体として見ると安いが、BTOパソコンになると高くなってしまう。これは捌ける量が違うから仕方がないのかもしれない。
グラフィックボード簡易比較表【NVIDIA&AMDの対比】
Nvidia | AMD | 解説 |
---|---|---|
RTX 4090 RTX 4080 SUPER RTX 4080 | 4Kでのリアルタイムレイトレーシング適用 高設定での240hz以上に対応 | |
RX 7900 XTX RX 7900 XT | 4K解像度、高設定での240Hz以上に対応 レイトレーシング性能はイマイチ | |
RTX 4070 Ti SUPER RTX 4070 Ti RTX 3090 | 4Kでのリアルタイムレイトレーシング適用 高設定での240hz以上に対応 | |
RTX 3080 Ti | 4Kでのリアルタイムレイトレーシング適用 高設定での240hz以上に対応 | |
RX 6950 XT RX 6900 XT | 4K解像度、高設定での240Hz以上に対応 レイトレーシング性能はイマイチ | |
RTX 3080 12GB | 4Kでのリアルタイムレイトレーシング適用 高設定での240Hz以上に対応 | |
RX 7800 XT RX 6800 XT | 4K解像度、高設定での240Hz以上に対応 レイトレーシング性能はイマイチ | |
RTX 4070 SUPER RTX 4070 RTX 3080 10GB RTX 3070 Ti | WQHDでのリアルタイムレイトレーシング適用 高設定での240Hz以上に対応 | |
RTX 3070 RTX 4060 Ti 16GB/8GB | RX 7700 XT RX 6800 | WQHDでのリアルタイムレイトレーシング適用 高設定での144Hz以上に対応 |
RX 6750 XT RX 6700 XT | フルHD、高設定での240Hz以上に対応 | |
RTX 3060 Ti | RX 7600 XT | フルHD、144Hz以上に対応 |
RX 7600 RX 6650 XT RX 6600 XT | フルHD、高リフレッシュレートに対応 | |
RTX 4060 RTX 3060 | RX 6600 | フルHD、高設定に対応 |
RTX 3050 | フルHD、設定調整が必要 | |
GTX 1660 Ti GTX 1660 SUPER GTX 1660 GTX 1660 | ロークラス | |
RTX 3050 6GB GTX 1650 SUPER GTX 1650 | RX 6500 XT RX 6400 | エントリークラス |
基本的に単体のグラフィックボードとしてはAMDはNVIDIAよりも安価に展開しているため、コストパフォーマンスという点では強力だ。ただし、タイトルによっては不安定な挙動を見せてしまうことがある。現時点では安定感に掛けるAMDよりも、安定しているNVIDIAに分がある。
ゲームにおすすめのグラフィックボードを探している方向けの、2023年最新のグラボ性能スコア比較表だ。GPUのスペック・価格・コスパ指標も一覧でまとめている。
NVIDIAとAMDのグラフィックボードの特徴を比較
ここからはより詳細に両企業のグラフィックボードを比較していく。価格・性能・ハード・ソフト・機能に分けて見ていこう。
Steamでのシェア
Steamハードウェア&ソフトウェア調査(Steam, 2024)においては、2024年2時点でのユーザーのビデオカードメーカー別の割合はNVIDIAが76.92%と大多数を占めている。何か問題が起こった場合でもオンライン上にある豊富な情報から解決策を探しやすい。ユーザーが多いということは解決策も豊富だということだ。AMDはCPU内蔵GPU含めて15.09%に留まっている。
今はBTOパソコンが自作パソコンより安価に入手することができるようになったのも関係している。自作ユーザーに適したGPUであること自体がメリットにならなくなったからだ。また、BTOショップは初心者を基準にモデルを構築する傾向にある。つまり、Radeonにとっては有利な市場とは言えないのだ。当然これは国内だけではなく海外にも当てはまるのではないかと思う。
グラフィックス性能・コスパ
製品 | 性能 | 価格 | コスパ | GPUメモリ |
---|---|---|---|---|
RTX 4090 | 279,800 | 0.203 | 24GB | |
RX 7900 XTX | 156,380 | 0.298 | 24GB | |
RTX 4080 SUPER | 179,800 | 0.250 | 16GB | |
RTX 4080 | 189,800 | 0.236 | 16GB | |
RX 7900 XT | 119,800 | 0.352 | 20GB | |
RTX 4070 Ti SUPER | 147,800 | 0.277 | 16GB | |
RTX 4070 Ti | 108,000 | 0.354 | 12GB | |
RTX 4070 SUPER | 97,800 | 0.373 | 12GB | |
RX 6900 XT | 89,800 | 0.389 | 16GB | |
RTX 4070 | 82,980 | 0.392 | 12GB | |
RX 7800 XT | 80,800 | 0.410 | 16GB | |
RX 7700 XT | 69,800 | 0.430 | 12GB | |
RTX 4060 Ti 16GB | 68,783 | 0.408 | 16GB | |
RTX 4060 Ti | 55,800 | 0.502 | 8GB | |
RTX 3060 Ti | 54,800 | 0.442 | 8GB | |
RX 7600 XT | 56,800 | 0.419 | 16GB | |
RTX 4060 | 42,746 | 0.529 | 8GB | |
RX 7600 | 37,480 | 0.591 | 8GB | |
RX 6650 XT | 35,800 | 0.614 | 8GB | |
RTX 3060 | 39,374 | 0.475 | 12GB | |
RTX 3050 | 32,799 | 0.449 | 8GB | |
RX 6500 XT | 25,980 | 0.474 | 4GB | |
RTX 3050 6GB | 31,799 | 0.369 | 6GB | |
GTX 1650 | 21,431 | 0.444 | 4GB | |
RX 6400 | 21,700 | 0.433 | 4GB |
次の項目で解説するレイトレーシング性能を除外すればRadeon RX 7000/Radeon RX 6000シリーズは総じてコストパフォーマンスが高い。基本的には同性能帯のモデルならRadeonシリーズの方が安価だ。Radeon RX 7000シリーズのフラグシップモデルであるRadeon RX 7900 XTXは、RTX 4090には及ばないものの、同価格帯のGeForce RTX 4080よりもグラフィックス処理性能が高い。
Radeon RX 7900 XTに関しても12万円という価格を考慮すれば健闘していると言えるだろう。+70,000円のRTX 4080に近いパフォーマンスを得られる。Radeon RX 7000シリーズはハイエンドクラスとミドルハイクラスしかなくその中間が存在しない。そこは旧世代のRadeon RX 6000シリーズが担う形だが、コストパフォーマンス的にはそこまで優れているわけではない。
2023年9月に登場したRadeon RX 7800 XT/RX 7700 XTについてはまだまだ価格が高くNVIDIAの競合と比べても苦しい状況となる。ミドルクラスになるとRX 7600やRX 6650 XTが存在感を示している。競合のRTX 4060に比べるとレイトレーシング性能は劣るものの純粋なグラフィックス処理性能では十分だ。価格が抑えられている分選びやすさがある。
レイトレーシング性能
RTX 4090 | |
RTX 4080 SUPER | |
RTX 4080 | |
RTX 4070 Ti SUPER | |
RTX 4070 Ti | |
RX 7900 XTX | |
RTX 4070 SUPER | |
RX 7900 XT | |
RTX 4070 | |
RX 7800 XT | |
RTX 4060 Ti 16GB | |
RTX 4060 Ti | |
RX 7700 XT | |
RTX 3060 Ti | |
RTX 4060 | |
RTX 3060 | |
RX 7600 | |
RX 6650 XT | |
RTX 3050 | |
RTX 3050 6GB |
さらに、GeForce RTX 40シリーズには、DLSS 3.0(フレーム生成)という最新機能がある。DLSS 3.0に対応しているタイトルであれば最大で2倍程度フレームレートが高くなる。従来のDLSS 2.0でも50%前後フレームレートが高くなりより滑らかなゲームプレイが可能だ。その後DLSS 3.5(レイ再構築)が登場してますます洗練された機能になっている。AMDもアップスケーリング技術であるFSRを導入した。グラフィックの質ではDLSSに劣るもののフレームレートを高める上では効果的だ。
レイトレーシング性能を重視するならGeForceシリーズを選択するべきだろう。僅差ではなく明らかな差があるからだ。このレイトレーシング性能が低い分だけRadeonシリーズは価格が抑えられているとも捉えることができるだろう。つまり、純粋なグラフィックス処理性能だけを重視するならRadeonシリーズも悪い選択肢ではないということだ。
ハードウェア
技術的な部分ではNVIDIAがリードしているように見える。レイトレーシング・DLSSがその最たる例だ。RTX 20シリーズの時点で、リアルタイムレイトレーシングの性能を高め、RTX 30シリーズで開花させた。次世代のゲームへの対応はAMDよりも一足早く見据えていたように思う。RTX 40シリーズではDLSS 3.0へと進化を果たした。フレーム生成は新しい技術として注目されている。
AMDの技術が劣っているわけではない。おそらく、AMDも同等の性能を持つモデルを展開することはできる。全く同じ製品を出しても意味がないので特性を持たせている。その特性が市場のニーズに上手く噛み合っていないだけだ。GPU性能が求められる場面はゲームプレイでは幅広い。その後AMDもアップスケーリング技術であるFSRが導入している。フレームレート向上という側面から見ると有効だ。
フルHDが主流である今、高性能なGPU性能は無駄になりやすい。特にリアルタイムレイトレーシングに関しては実用的なタイトルが少ない。NVIDIAの機能は時代を先取りしており、AMDの無駄を廃する機能は今現在のゲーム環境構築に着目しているのではないだろうか。
ただ、AMDが無駄を廃し実用性を追求しているにも関わらず価格が抑えきれていないところが問題となる。NVIDIA製品と性能は同等でも機能で落ちる。また、不具合の多さも目立つ。常にあと一歩が続いている状態である。一時はメモリ周りを強化して差別化を図ったこともあった。その傾向は今も残ってはいる。昔ほど特化した造りではなくても、NVIDIAよりもメモリ周りは強いように思う。
それがGeForceより優れた場面を生む要因となったと考えている。言い換えればGeForceに弱点と言える部分を指摘した。総合的な評価ではGeForceが上でも、対抗製品としての役目はしっかりこなせている。この関係があることで、次の世代でどうなるかが常に分からない状態が続いている。それはAMDがプロセスの微細化で一歩先をいっているからだ。
性能で置いていかれたRadeonシリーズがまたNVIDIAのGeForceに並んでいることからも分かる。あまり上手くはいかなかったが、今シリーズの集大成とも言えるRX 6800 XTは惜しかった。取捨選択で機能よりも性能を重視した結果、あまり受け入れられなかった。最上位のGPUに関してはあまり価格が影響しないのかもしれない。
ソフトウェア
最適化されたソフトウェアはハードウェアの性能やパフォーマンスによい影響を与える。グラフィックボードでは、ドライバーやコントロールパネルがそのソフトウェアとなる。ドライバーはNVIDIAもAMDも頻繁に更新が行われる。負荷の高い最新のタイトルへの最適化が最も多い。このドライバーにも特性がある。NVIDIAは最適化を中心としたもので、AMDは問題の解決に向けたアップデートも織り込まれている。
AMDのRadeonはバグや不具合が多いが、このアップデートにより修正されていく。また、AMDはドライバの更新で性能の底上げが行われることもあった。正しく言えば、発表時のものより製品版は性能が低い。徐々に問題を解決し、最適化を行うことで発表時の性能に近づいていく。やや不安のように思えるかもしれない。
しかし、アップデートの回数が多いので長期に渡る不具合がない。価格が落ち着く頃には性能も落ち着くので扱いやすくなる。少しじゃじゃ馬な要素はあるものの、ソフトウェアでは同等だ。コントロールパネルのユーザービリティは双方高く、ソフトウェアにおける優位性は無いと言えるだろう。
機能
ゲーム動画の録画
機能面もこれまでと変わらず、双方名称の違う似た機能が搭載されている。例えば、ゲーム動画の録画やストリームにはNvidia ShadowplayとAMD ReLiveが用意されている。低負荷で高画質な動画、配信が可能なツールで設定した時間分だけ巻き戻して動画を保存する機能もある。
安定した録画を行うのであればGPUドライバーに搭載されているソフトウェアを使用することを推奨する。該当するグラフィックボードを搭載していれば無料で使用できるツールであり、その機能性は無料とは思えないものだ。
ただ、このShadowPlayとReliveではReliveに軍配が上がる。シンプルな設定、最大20分巻き戻し録画が特徴のShadowPlayに対し、Reliveは最大1時間、1秒単位で細かく巻き戻し時間を設定できるだけでなく、録画の設定も非常に細かくすることができる。そこまで細かな設定は必要とせず、最高設定で保存する場合はメリットになりにくい。
Vertical Synchronization Substitute
今では一般的になりつつあるVertical Synchronization Substituteにも対応している。NVIDIAはG-SYNC、AMDはFreeSyncという名称だ。対応したモニターでのみ使用できる機能で、ラグをあえて描写せずに映像を繋ぐことにより描写される映像の遅延を感じにくくする機能だ。例え性能が高くてもプリフリーズを頻発するEFTのようなゲームでは効果が高く、よりスムーズにゲームを快適にプレイすることが出来る。
対応したモニターはやや価格が高くなる傾向にあるため、あれば良い程度の機能として見ておくべきだろう。特に高リフレッシュレートに対応したモニターの場合は価格的に選びにくく、搭載しているグラフィックボードがNVIDIAかAMDかによって選択肢が異なるため中級者以上向けの機能だ。
GameWorksやTressFX
最後に、競合が持っていなくて特定の製品だけが持つ小さな機能がある。つまり、NVIDIAにはGameWorksという機能が用意されている。GameWorksは主にゲーム開発者向けのツールだ。NVIDIAのこの機能はもはやユニークあるいは代替不可能というわけではないことは理解しておいて欲しい。
実際、Radeonも開発者向けに独自のレンダリング技術である「TressFX」を用意している。GameWorksがTressFXにないものとして気軽に利用でき誰でも簡単に活用できるということだ。そのため、NVIDIAのグラフィックボードでレンダリングをするとよりよい環境を構築できるということになる。
BTOパソコンに見る両者の関係について
Radeonシリーズ搭載モデルも増えてきているが…
今現在の主流はNVIDIAのGPUだ。そのため、ショップはRadeonよりRTXシリーズを多く仕入れていると考えて間違いない。結果的にセール対象や値引きになりやすいのはRTX 30シリーズだ。RadeonはAMDユーザーなら魅力的に感じても、まだまだ主流になるには遠い。ではNVIDIAのGPUが安泰かというとそうでもない。
AMDのGPUはNVIDIAに及ばないが、徐々にその差を詰めている。Radeon RX 5000シリーズからラインナップが増えていることは間違いない。それでもまだまだ差があるのが現実だ。また、単体のグラフィックボードとしては安価でも搭載BTOパソコンになると一気に価格が跳ね上がってしまうのも問題だ。
これはバルク購入できる量が限られているからだろう。もう少し地位を築くことができればNVIDIAと対等に戦えるのではないだろうか。ラインナップの差が開いている以上、自作ユーザー向けという印象は拭えていない。AMDのCPUであるRyzenがさらに広まれば、Radeonと組み合わせたモデルも増えてくるはずだ。このままの勢いが続けば3世代、4世代後には大きく距離を詰められそうだ。
ゲーミングノートPCではNVIDIAが圧倒的に優勢
ゲーミングノートPCに採用するグラフィックボードとしてはNVIDIAが優勢だ。市場にあるゲーミングノートPCのほとんどがNVIDIA製グラフィックボードを搭載していることになる。AMDのラインナップ的にはRadeon RX 6800M・Radeon RX 6700M・Radeon RX 6600Mの3種類があるが搭載モデルはほとんどない。
MSIやASUSなどの海外メーカーで少し取り扱いがある程度だ。国内BTOメーカーでは皆無と言ってもよい。性能的にもNVIDIA製RTX 30シリーズには及ばない。デスクトップ向けモデルについてはNVIDIAと対等に戦えているが、モバイル向けはまだまだ追いついていない。
ゲームのプレイスタイルの変化による共存の未来
NVIDIAとAMDのGPUはそれぞれに違った特性がある。解像度などゲームのプレイスタイルに合わせてメーカーを選べるようになるかもしれない。そうなることがNVIDIAとAMDが完全に共存する世界と言える。そして、ユーザーが求めるものでもあるはずだ。
RTX 30シリーズ登場以降、確実にゲーム環境は変わってきている。グラフィックボードの性能が上がり数年前よりもWQHD解像度が非常に身近になったと言える。144Hz対応のWQHDモニターも多く存在している。FPSやRTSなどではあまり需要のない解像度でも、RPGなどのPvEをメインとするタイトルでは大きな恩恵がある。解像度が高くなれば画質も上がる。
それでいて描写に掛かる負荷は大きくなっても、割合で言えば困難なものではない。古いGPUでは厳しくても、現行のGPUであればWQHD環境は容易に構築できる。GPUの性能が上がることでゲームプレイの環境も変化してきている。それはリフレッシュレートにも現れている。10年前は75Hzまでしか対応していないタイトルもあった。それが今では当たり前に120Hzに対応し、144Hz、165Hz、240Hzと上限も上がっている。
360Hz対応モニターの登場で競技性の高いゲームの理想とするリフレッシュレートも上昇傾向だ。リフレッシュレートを求めるならNVIDIAに適正がある。ゲームの安定性に関してはAMDよりも優れているからだ。これらの環境向上はGPU性能による恩恵である。一時は高まり過ぎたGPU性能を使う場面がなくなりそうだった。それが上手くゲームと調和し、次世代のゲームタイトルではなくゲーム環境を生み出した。
そして人気が下り坂のMMORPGに再燃の兆しが出た。高解像度にすると描写が鮮やかになり、ゲームの世界への没入感を高めた。それだけではなく、WQHDにすることでゲームを有利に進められるようになることも。視界が広がり見やすくなり、ボス戦などでは回避行動に移りやすい。FF14ではWQHDが適切という声もあるほどだ。フルHDからWQHDへの移行は思うより早いかもしれない。WQHDはメモリ周りが強いRadeonの得意分野である。
WQHD解像度で60Hzモニターを使用するならRadeonを選択肢に加えるのは悪くない。NVIDIAが力を入れているリアルタイムレイトレーシングはMMORPGとも相性がよい。今はまだ適用できるタイトルはなくても、将来的に必ず登場する。フルHDが主流の今、これだけ性能が高くなっても使い道がなかった。その性能をゲームの要求スペック以外のところに費やすことで無駄がなくなった。
GTX 1660 SUPERで対応できるゲームにRTX 3080は宝の持ち腐れでしかなかった。ただ、これから先は環境次第でRTX 3080が必要となることもある。ゲーム側の進化もあるが、それ以上にゲームのプレイスタイルに大きな変化が現れたように思う。GPUの進化が快適性だけではなくプレイスタイルを広げた。プレイスタイルが広がったことで結果的に快適性の向上にも繋がる。
Intelがグラボ業界参入で業界が盛り上がる
Intelが22年振りにグラフィックボード業界参入することになり、すでに各社からグラフィックボードがリリース(4gamer, 2022)されている。ドスパラやマウスコンピューターはすでにIntel Arcを搭載したゲーミングPCを販売している。長らくNVIDIAとAMDの二強だったが、第三の勢力が誕生したことになる。まずはエントリークラスのIntel Arc A380が発売され、Intel Arc A770やIntel Arc A750などがリリースされる予定だ。
ゲーマーにとっても選択肢が増えることはメリットとなる。価格競争が起きるので、より安くより高性能なモデルが手に入れられる。現時点ではまだまだ未知数だが、今後の展開に期待できる。NVIDIAやAMDも意識せざるを得ないだろう。2022年後半から2023年に掛けてより一層盛り上がりそうだ。
当記事のまとめ
NVIDIAとAMDはどちらも優れたGPUメーカーだ。持っている特性が違うことで選択する層も違ってくる。ワットパフォーマンスを重視するならAMDのRadeonが優れている。NVIDIAは性能の安定性に長けており、ゲーム全般で扱いやすい。Radeonはやや安定性が欠ける部分があるので高リフレッシュレートへの適性はGeForceほど高くない。
ただ、メモリ周りが強力なことで高解像度では扱いやすい。ドライバーの更新も頻繁にあるので問題解決が迅速であることが多い。どちらも良し悪しあるものの、今はNVIDIAのGeForceが主流であり人気のGPUだ。ゲーミングPCはBTOパソコンが一般的である。BTOショップが取り扱うGPUはNVIDIAが圧倒的である。
Radeonは自作ユーザーに人気ではあるが、自作自体が以前ほど盛況とは言えない。それでも、Radeon RX 7000シリーズはGeForce RTX 40シリーズに迫る勢いがある。次世代では関係が逆転しているかもしれない。どちらが優れているかを見るよりも、どちらが自分に適しているかを判断したい。
ショップでパソコンを購入するならNVIDIA、グラフィックボードの交換を考えているならRadeonも選択肢に入る。今はどちらも魅力的なラインナップが揃っているので吟味して選択したい。新世代のGPUが登場したことでゲームのプレイ環境は大きく変わってきた。実現したい環境に性能を合わせて考えていきたい。Intel製グラフィックボードの動向にも注目だ。
参照外部サイト
- [TGS2022]いよいよ日本にも投入? Intel製単体GPU「Intel Arc」搭載ゲームPC&グラフィックスカードが披露される(4gamer, 2022)
- Radeon RX 6500 XTを試す – RDNA 2最小、6nmプロセスのNavi 24 GPUを実力検証(マイナビニュース, 2022)
- Steamハードウェア&ソフトウェア 調査: February 2024(Steam, 2024)
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