Ryzen 7 7735HSのスペックレビュー&性能ベンチマークを検証していく。従来モデルのRyzen 7 6800Hと同じZen 3+アーキテクチャを採用していてマイナーチェンジモデルに留まる。Ryzen 7 6800Hからの買い替えだと性能差を体感することは難しい。スペックは8コア16スレッドと高めだ。Ryzen 7シリーズを謳っているが、性能的には現行モデルの中ではミドルクラス相当となる。
グラフィックボードはGeForce RTX 4060 Mobileまで選択可能だ。搭載モデルのラインナップは豊富で様々なモデルから選べるのが嬉しい。搭載モデルは「Ryzen 7 7735HS搭載ゲーミングノートPC一覧」で紹介いているが、すでに在庫が少なくなっている状況だ。
同時期に発売されたRyzen 7 7840HSは新しいZen 4アーキテクチャを採用していていて高いパフォーマンスを期待できる。同じ8コア16スレッドでもアーキテクチャが異なり、Ryzen 7 6800Hと比べて大きくパフォーマンスが向上している。
当ページの目次
Ryzen 7 7735HSの概要
コードネーム | Zen 3+(Rembrandt) |
---|---|
プロセス | 6nm |
コア/スレッド数 | 8コア / 16スレッド |
Pコア定格/最大クロック | 3.2 GHz/ 4.75 GHz |
L2キャッシュ | 4MB |
L3キャッシュ | 16MB |
内蔵GPU | Radeon 680M |
PBP | 35W |
MTP | 54W |
発売日 | 2023年01月04日 |
価格 | – |
特徴 | (+)8コア16スレッドの省電力モデル (+)豊富なラインナップを持つ (-)アーキテクチャは旧世代のZen 3+となる (-)搭載モデルのコスパはイマイチ |
評価 | ・総合評価 7.0 ・ゲーム評価 7.0 |
Ryzen 7 7735HSの基本スペック
他のRyzen 7シリーズと比較
Ryzen 7 7735HS | Ryzen 7 7840HS | Ryzen 7 6800H | |
---|---|---|---|
コードネーム | Zen 3+ (Rembrandt) | Zen 4 (Phoenix) | Zen 3+ (Rembrandt) |
プロセス | 6nm | 4nm | 6nm |
ダイサイズ | 208 mm² | 178 mm² | 208 mm² |
コア | 8 | 8 | 8 |
スレッド数 | 16 | 16 | 16 |
定格クロック | 3.20 GHz | 3.80 GHz | 3.20 GHz |
最大クロック | 4.75 GHz | 5.10 GHz | 4.70 GHz |
L2キャッシュ | 4MB | 8MB | 4MB |
L3キャッシュ | 16MB | 16MB | 16MB |
対応メモリ | DDR5-4800 LPDDR5-6400 | DDR5-5600 LPDDR5-7500 | DDR5-4800 LPDDR5-6400 |
内蔵グラフィックス | Radeon 680M | Radeon 780M | Radeon 680M |
PBP(TDP) | 35W | 35W | 45W |
MTP | 54W | 54W | - |
価格 | - | - | - |
搭載モデル価格 | 159,800円~ (RTX 4060M) | 153,341円~ (RTX 4060M) | - |
発売日 | 2023/01/04 | 2023/01 | 2022/01 |
Ryzen 7 7735HSはZen 3+アーキテクチャ採用のCPUだ。従来モデルのRyzen 7 6800Hと同じアーキテクチャとなる。プロセス・ダイサイズ・コア・スレッドと変わっていない。定格クロック周波数も3.20GHzと共通だ。最大クロックが4.70GHzから4.75GHzへと少しだけ引き上げられた。L2キャッシュ・L3キャッシュも変更は加えられていない。対応メモリ・内蔵GPUも同じだ。TDPが45Wから35Wへと20%以上引き下げられた。Ryzen 7 7735HSの強みは性能よりもこの省電力性の高さにあると言えるだろう。
実は同時期にZen 4アーキテクチャ採用のRyzen 7 7840HSが発売されている。プロセスが4nmとZen 3+の6nmよりも33%微細化された。ダイサイズも14%小さく178m㎡だ。コア・スレッドはそれぞれ8コア16スレッドと変更はない。定格クロックは0.6GHz高く、最大クロックも0.35GHz高くなっている。L2キャッシュは倍の8MBだ。L3キャッシュは16MBと変更はない。対応メモリはDDR5-5600・LPDDR5-7500へと拡充されている。内蔵グラフィックスもRadeon 780Mへとアップグレードされた。TDPは35W、MTPは54Wと同じだ。
Intel製CPUと比較
Ryzen 7 7735HS | Core i5-13500H | |
---|---|---|
コードネーム | Zen 3+ (Rembrandt) | Raptor Lake |
プロセス | 6nm | 10nm |
ダイサイズ | 208 mm² | - |
トータルコア | 8 | 12 |
トータルスレッド | 16 | 16 |
コア(P) | 8 | 4 |
スレッド(P) | 16 | 8 |
コア(E) | - | 8 |
スレッド(E) | - | 8 |
定格クロック(P) | 3.20 GHz | 2.60 GHz |
最大クロック(P) | 4.75 GHz | 4.70 GHz |
定格クロック(E) | - | 1.90 GHz |
最大クロック(E) | - | 3.50 GHz |
L2キャッシュ | 4MB | 16MB |
L3キャッシュ | 16MB | 18MB |
対応メモリ | DDR5-4800 LPDDR5-6400 | DDR5-5200 DDR4-3200 |
内蔵グラフィックス | Radeon 680M | Iris Xe Graphics |
PBP(TDP) | 35W | 45W |
MTP | 54W | 95W |
価格 | - | $342 |
搭載モデル価格 | 129,980円~ (RTX 3050M) | 127,980円~ (RTX 3050M) |
発売日 | 2023/01/04 | 2023/01/04 |
価格帯の近いCore i5-13500Hと比較していく。グレード的にはCore i7-13700Hが比較対象となるはずだが、Ryzen 7 7735HSは旧世代のアーキテクチャを採用しているということもあってより低価格のCore i5-13500Hを比較対象とした。Core i5-13500HはRaptor Lake世代のCPUでプロセスは10nmだ。
ハイブリッドコアアーキテクチャを採用していて4つのPコアと8つのEコアを搭載している。トータルコア・トータルスレッドはそれぞれ12コア16スレッドとなる。コア自体はCore i5-13500Hの方が多いが、スレッドはどちらも16スレッドと同じだ。Pコアの定格クロックはRyzen 7 7735HSの方が0.6GHz(23%)高く、最大クロックも0.05GHz(1%)高い。
Core i5-13500HのEコアの定格クロックは1.90GHz、最大クロックは3.50GHzだ。Ryzen 7 7735HSにはEコア相当のコアは搭載されていない。L2キャッシュはCore i5-13500Hの方が多く16MBだ。L3キャッシュ容量も2MB多くなっている。Core i5-13500HはDDR5-5200だけではなくDDR4-3200メモリもサポートしている。
内蔵グラフィックスはIris Xe Graphicsだ。TDPはCore i5-13500Hの方が29%高く、MTPもCore i5-13500Hの方が76%高い。それぞれ45W・95Wだ。Core i5-13500Hの価格は$342となる。Ryzen 7 7735HSの価格は公開されていないが、搭載モデルの価格を見る限りCore i5-13500Hと同じぐらいだと考えている。
Ryzen 7 7735HS搭載モデルの特徴
ミドルクラス相当のCPU性能を持つ
Ryzen 7 7735HSの性能スコアは21,264でミドルクラス相当の性能を持つCPUだ。旧世代のRyzen 7 6800Hよりも2%程度性能が高く、Ryzen 9 6900HSも上回る。競合モデルのCore i5-13500Hよりも5%程度パフォーマンスが低い。用途によってはそれ以上の差がつくこともある。ハイブリッドコアアーキテクチャ採用モデルに完敗だ。
やはりクロック周波数が少し上がっただけではそこまで性能は伸びない。新しく発売されたモデルだが、クロック周波数引き上げのパフォーマンスへの寄与は小さいと考えておこう。現在Ryzen 7 6800HやRyzen 9 6900HSを所有している方が買い替えを行っても性能差を体感することは難しい。ただし、グラフィックボードがGeForce RTX 30シリーズから次世代のGeForce RTX 40シリーズになるなら選ぶ価値がある。
ゲームプレイにおいてはグラフィックボードの性能はCPU以上に重要だ。CPU性能が重要な動画編集などクリエイター用途がメインなら買い替えは慎重になった方がよい。グラフィックボードありきで考えるべきだ。デスクトップ向けCPUだと第3世代RyzenシリーズのRyzen 7 5700Xが近い。デスクトップパソコンでも人気のCPUだ。モバイル向けのCPUも着実に進化している。
ラインナップはエントリーからミドルクラスまで
Ryzen 7 7735HSはミドルクラスの性能を持つCPUで、組み合わせるグラフィックボードもミドルクラスまでがメインとなる。70番台以上のグラフィックボードを選択したいならRyzen 9 7940HSやRyzen 7 7845HXなどを搭載したモデルを選択する必要がある。Ryzen 7 7735HS搭載モデルを選ぶと必然的にフルHD環境でのゲームプレイを考えているユーザーが対象となる。
GeForce RTX 4060 Mobileの方がGeForce RTX 4050 Mobileと価格が同等だが、これはGeForce RTX 4060 Mobile搭載モデルがセール対象モデルだからだ。現在ASUSではクリスマスセールが実施されていて通常よりも20,000円OFFで購入できる。通常時であればGeForce RTX 4050 Mobileの方が20,000円安く購入できるということだ。上位モデルのRyzen 7 7840HS搭載モデルとの価格差が小さくコストパフォーマンスはイマイチだ。メーカーの問題もあるかもしれない。ASUSはまだしもG-TuneやMSIは価格が高めだ。
なお、ゲーミングノートPCの本体重量は約2.20kg前後と平均的で持ち運びはしやすい。省電力モデルでかつ選ばれるグラフィックボードがミドルクラスまでということで本体をそこまで大きくする必要はないのだろう。ポータブル性を重視している方も要チェックだ。
Ryzen 7 7735HSのベンチマーク一覧
Cinebench R23
Cinebench R23でCPUの客観的なパフォーマンスを見ていく。Ryzen 7 7735HSのマルチコア性能は12,761、シングルコア性能は1,675だ。従来モデルのRyzen 7 6800Hと比べてマルチコア性能が5%高く、シングルコア性能も3%高い。Ryzen 9 6900HSとおおよそ同等のパフォーマンスを持っている。居グ王のCore i5-13500Hと比べるとマルチコア性能が3%低く、シングルコア性能も11%低い。Core i5-13500Hはハイブリッドコアアーキテクチャを採用していてそれがうまく機能している。Zen 4アーキテクチャを採用したRyzen 7 7840HSと比べるとマルチコア性能が32%高く、シングルコア性能も14%高い。同じRyzen 7シリーズでもZen 3+とZen 4では別物だと考えておこう。より高い性能を求めるならRyzen 7 7840HSを選ぶ方が満足できるだろう。
Handbrake
動画のエンコードソフトであるHandbrakeでそのパフォーマンスを見ていく。従来モデルのRyzen 7 6800Hよりも少しだけパフォーマンスが高い。Ryzen 9 6900HSと比べてもパフォーマンスが上だ。Core i5-13500Hと比べると5%程度パフォーマンスが低い。Handbrakeではコア・スレッドが多いほうが有利でIntel製CPUが有利だ。
7-Zip(圧縮)
Zipファイルの圧縮速度を計測した。Ryzen 7 6800Hと比べて7%程度パフォーマンスが向上している。Ryzen 9 6900HSと比べても2%程度パフォーマンスが高い。Core i5-13500Hと比べて3%程度パフォーマンスが低くなっている。上位モデルのRyzen 7 7840HSになると30%近くもパフォーマンスが高くなる。
7-Zip(解凍)
Zipファイルの解凍速度も見ていこう。Ryzen 7 6800Hと比べて3%程度パフォーマンスが高くなっている。Ryzen 9 6900HSと比べてもパフォーマンスは上だ。競合モデルのCore i5-13500Hよりも14%程度速度が速い。
Adobe Photoshop
Photoshopでのスコアを見ていこう。Ryzen 7 7735HSのスコアは1,195とまずまずだ。従来モデルのRyzen 7 6800Hと比べて22%もパフォーマンスが高い。Core i5-13500HどころがCore i7-13700Hに匹敵するほどだ。さすがにこれだけパフォーマンスが上がっているのは疑問が残る。IntelのハイエンドモデルであるHXシリーズもスコアが伸び悩んでいる。相性の問題もあるのかもしれない。改めてベンチマークを取り直したいと考えている。
Ryzen 7 7735HS搭載ゲーミングノートPC一覧
Thin-A15-B7VE-4159JP (MSI)
液晶:15.6インチFHD 144Hz
重量:約1.86kg
CPU:Ryzen 7 7735HS
GPU:GeForce RTX 4050 Mobile
メモリ:DDR5 16GB
ストレージ:SSD 1TB NVMe
電源:120W ACアダプター
コスパ:調査中
MSIが販売するゲーミングノートPCだ。CPUにはRyzen 7 7735HSを、GPUにはGeForce RTX 4050 Mobileを搭載している。フルHD環境でのゲームプレイに最適だ。144Hz対応モニター搭載で快適なゲームプレイが実現する。GeForce RTX 4050 Mobileは、従来モデルのGeForce RTX 3060 Mobileに近い性能を持ちゲーム適性が高い。メモリDDR5 16GB・SSD 1TB NVMeと構成は平均的だ。
TUF Gaming A15 FA507NV(ASUS)
179,800円 159,800円+送料770円
液晶:15.6インチFHD 144Hz
重量:約2.20kg
CPU:Ryzen 7 7735HS
GPU:GeForce RTX 4060 Mobile
メモリ:DDR5-4800 16GB
ストレージ:SSD 1TB Gen4 NVMe
電源:240W ACアダプター
コスパ:調査中
ASUSが販売する高コスパゲーミングノートPCだ。セール期間中は通常価格から20,000円OFFで購入できる。GeForce RTX 4050 Mobile搭載モデル並の価格でGeForce RTX 4060 Mobile搭載モデルが購入できる。高リフレッシュレートでのゲームプレイにも対応可能だ。本体重量は約2.20kgと平均的だ。カバンに入れておけば持ち運びも容易だ。メモリDDR5-4800 16GB・SSD 1TB Gen4 NVMeと構成も充実している。
G-Tune P6-A7G50BK-A (G-Tune)
139,800円 129,800円
液晶:16.0インチWUXGA 144Hz
重量:約2.22kg
CPU:Ryzen 7 7735HS
GPU:GeForce RTX 3050 Mobile
メモリ:DDR5-4800 16GB
ストレージ:SSD 500GB Gen4 NVMe
電源:150W ACアダプター
コスパ:調査中
Ryzen 7 7735HS×GeForce RTX 3050 Mobile搭載のエントリークラスのゲーミングノートPCだ。16.0インチWUXGAディスプレイを搭載している。リフレッシュレートは144Hzだ。本体重量は約2.22kgと16.0インチモデルとしては軽い。カバンがあれば持ち運びもできる。GeForce RTX 3050 Mobileは旧世代のモデルながらエントリークラスとしてまずまずの性能を有する。設定次第では高リフレッシュレートも目指せる。Ryzen 7 7735HSとのバランスだとCPU寄りと言える。メモリDDR5-4800 16GB・SSD 500GB Gen4 NVMeと構成は平均的だ。