当記事では、Radeon RX 7600のスペックレビュー&性能ベンチマークを検証している。2023年5月にようやくRDNA 3.0アーキテクチャ採用のグラフィックボードがラインナップに追加された。2022年12月にフラグシップモデルのRadeon RX 7900シリーズが発売されて実に5ヶ月も経過している。フラグシップモデルとは異なり、Radeon RX 7600のターゲットはフルHDでのゲームプレイを考えている方だ。ゲーミングプラットフォームのSteamでもっとも多くのユーザーがプレイしている環境(Steam, 2023)ということになる。
同時期にNVIDIAが同じフルHDをターゲットにしたGeForce RTX 4060 Tiをリリースしたが、Radeon RX 7600は性能も控え目でその分価格が抑えられている。性能的にはRadeon RX 6650 XTよりわずかに性能が高く、RTX 3060 TiとRTX 3060の間だ。国内の販売価格も落ち着いて来ていて購入しやすくなっている。レイトレーシング性能がそれほど高くないというデメリットはあるが、ラスタライズ性能だけを見ればコストパフォーマンスは良好だ。搭載モデルは、「Radeon RX 7600搭載おすすめゲーミングPC」で紹介している。その後競合のNVIDIAからGeForce RTX 4060がリリースされている。レイトレーシングやDLSSを重視するなら魅力的な選択肢となる。Radeon RX 7600と同等の価格で購入可能だ。
Radeon RX 7600スペック
世代 | RDNA 3.0 |
---|---|
プロセス | 6nm |
CUDAコア | 2,048 |
ベースクロック | 1720 MHz |
ゲームクロック | 2250 MHz |
ブーストクロック | 2655 MHz |
GPUメモリ | GDDR6 8GB |
TDP | 165W |
MSRP | $269 |
国内価格 | 37,980円~ *2024/10時点 |
発売日 | 2023/05/25 |
- (+)フルHDに最適な性能を持つ
- (+)RDNA 3世代における低価格帯モデル
- (-)モノリシックダイを採用している
- (-)搭載モデルのラインナップが少ない
当ページの目次
Radeon RX 7600の基本スペック
RX 7600 | RX 6650 XT | RX 6600 | |
---|---|---|---|
コードネーム | RDNA 3.0 | RDNA 2.0 | RDNA 2.0 |
GPU | Navi 33 | Navi 23 | Navi 23 |
プロセス | 6 nm | 7 nm | 7 nm |
ダイサイズ | 204 mm² | 237 mm² | 237 mm² |
トランジスタ数 | 133億 | 110.6億 | 110.6億 |
SMs | 32 | 32 | 28 |
CUDAコア数 | 2048 | 2048 | 1792 |
RTコア数 | 32基 | 32基 | 28基 |
AIコア | 64基 | - | - |
Tensorコア数 | - | - | - |
ベースクロック | 1720 MHz | 2055 MHz | 1626 MHz |
ゲームクロック | 2250 MHz | 2410 MHz | 2044 MHz |
ブーストクロック | 2655 MHz | 2635 MHz | 2491 MHz |
GPUメモリ | GDDR6 8GB | GDDR6 8GB | GDDR6 8GB |
メモリクロック | 18.0 Gbps | 17.5 Gbps | 14.0 Gbps |
メモリバス | 128 bit | 128 bit | 128 bit |
メモリバス帯域幅 | 288.0 GB/s | 288.0 GB/s | 224.0 GB/s |
L2キャッシュ | 2 MB | 2 MB | 2 MB |
L3キャッシュ | 32 MB | 32 MB | 32 MB |
FP32 Compute | 21.75 TFLOPS | 10.79 TFLOPS | 8.928 TFLOPS |
TDP | 165W | 176W | 132W |
補助電源 | 1x 8-pin | 1x 8-pin | 1x 8-pin |
バスインターフェイス | PCIe 4.0 x8 | PCIe 4.0 x8 | PCIe 4.0 x8 |
メディア | AV1 H265 H264 | AV1(Decode) H265 H264 | AV1(Decode) H265 H264 |
出力 | 1x HDMI 2.1 3x DisplayPort 2.1 | 1x HDMI 2.1 3x DisplayPort 1.4 | 1x HDMI 2.1 3x DisplayPort 1.4 |
MSRP | $269 | $329 | $329 |
国内価格 | 37,800円 | 29,980円 (中古) | 21,980円 (中古) |
ゲーミングPC価格 | 154,800円~ | - | - |
発売日 | 2023/05/25 | 2022/05/10 | 2021/10/13 |
Radeon RX 7600は、RDNA 3.0アーキテクチャを採用したグラフィックボードだ。RDNA 2.0のRadeon RX 6600と比べると順当に進化を遂げていることがわかる。プロセスは7nmから6nmへと微細化され、ダイサイズは14%小さく204m㎡だ。トランジスタ数は21%増えて133億となる。SM数は14%多く、CUDAコア数も1792→2048へと14%増えている。Radeon RX 7600では新たにAIコア64基が追加された。
ベースクロックは5%、ゲームクロックは11%、ブーストクロック6%それぞれ高くなっている。性能アップはこのクロック周波数の引き上げに起因すると考えてよい。GPUメモリはGDDR6 8GBと変わらない。メモリクロックは14.0 Gbpsから18.0 Gbpsへと引き上げられている。メモリバスは128 bitと共通だ。メモリクロックが速くなったことでメモリバス帯域幅は27%広く288.0 GB/sとなる。L2キャッシュ及びL3キャッシュ容量(Infinity Cache)に変更はない。
FP32 Computeは24%アップの21.75 TFLOPSだ。TDPは25%高く165となった。補助電源・バスインターフェイスは変わっていない。メディアではAV1エンコードに対応しているのはポイントだ。次世代コーデックに対応しているのは頼もしい。出力に関してもDisplayPort 2.1をサポートしている。価格は$60安くなっている。2023年6月時点での実売価格は12,000円だ。今後RX 6600の価格まで下がればより魅力が増すことになる。
スペック的にはRadeon RX 6600の上位モデルであるRadeon RX 6650 XTに近い。それでもアーキテクチャは新しくなっていることに変わりはない。プロセスの微細化によってダイサイズは一回り小さくなっているにも関わらずトランジスタ数は増量だ。SM数・CUDAコア数・RTコア数は共通となる。RX 7600ではAIコアが搭載されているぐらいで目新しさがあるわけではない。
ベースクロックはRX 6650 XTの方が19%高く、ゲームクロックもRX 6650 XTの方が7%高い。ブーストクロックはRX 7600の方がわずかに高くなっている。GPUメモリ周りもほとんど変わらない。メモリクロックが微増となっているだけにとどまる。FP32 Computeはおよそ2倍と進化している。TDPは6%低く抑えられている。補助電源・バスインターフェイス・メディアはRX 6600と同じだ。
価格差は$60となる。単体のグラフィックボード価格では3,180円の差がある。性能差を考慮すれば納得できるのではないかと思う。Radeon RX 6650 XT搭載モデルの販売が終了して搭載ゲーミングPCの価格は同等の水準まで下がっている。
Radeon RX 7600の特徴&強み
Radeon RX 6600から順当な進化を遂げた
RTX 3070 | |
RTX 4060 Ti | |
RX 6700 XT | |
RTX 3060 Ti | |
RTX 4060 | |
RTX 2070 SUPER | |
RX 7600 | |
RX 6650 XT | |
RX 6600 XT | |
RTX 2070 | |
RTX 3060 | |
RTX 2060 SUPER | |
GTX 1070 Ti | |
RTX 2060 | |
RX 6600 | |
RTX 3050 | |
GTX 1660 Ti |
Radeon RX 7600は、当サイトのスコアで22,164というスコアを出している。20,000を超えていればフルHDで高リフレッシュレートを目指せる水準だ。従来モデルのRadeon 6600と比べて30%弱スコアが伸びていて順当な進化を遂げたと言えるだろう。同時期に発売されたRTX 4060 Tiとの性能差は28%とかなり大きい。フルHDをターゲットとしている点では共通だが、性能的にも価格的にもRTX 4060 TiはWQHD寄りだ。
Radeon RX 6650 XTと比べるとほとんど性能は変わらないことに気付く。あくまでもRadeon RX 6600と比べて性能が伸びたということだ。Radeon RX 6650 XTに対して、Radeon RX 7600を選ぶ理由としてはAIコア搭載・省電力性の高さ・AV1エンコードサポート・DisplayPort 2.1サポートの4点だ。これらの特徴に魅力を感じる方なら、価格差4,000円を考慮しても選択する価値はある。今現在Radeon RX 6650 XT/Radeon RX 6600 XTを使っているなら買い替えのメリットは小さい。
競合モデルであるRTX 3060は40,980円で販売されていてRX 7600よりも2,000円安く購入できる。9%の性能アップに掛かるコストは5%と考えると悪くない。ただし、レイトレーシング・DLSSといった機能ではRTX 3060に劣ってしまう点は理解しておこう。純粋なグラフィックボード性能を求める方向けだ。その後次世代のGeForce RTX 4060が登場した。価格は42,460円でRadeon RX 7600よりも5,000円程度高い。性能は2%アップだ。RX 7600のコストパフォーマンスの高さが光る。
省電力性の高さはまずまず
RX 6600 | |
RTX 4060 Ti | |
RX 7600 | |
RX 6600 XT | |
RTX 3060 | |
RX 6650 XT | |
RTX 4070 | |
RTX 3060 Ti | |
RX 6700 XT | |
RX 6800 | |
RTX 3070 |
競合モデルであるNVIDIA GeForce RTX 4060 Tiと比べると見劣りしてしまう。RTX 4060 Tiは、RX 7600よりも28%も性能が高いにも関わらず消費電力は10%低い。つまり、より省電力性の高いグラフィックボードということだ。RX 7600が優れているのはAMDのラインナップ内のことと考えるとよい。
搭載ゲーミングPCのラインナップも増えている
Radeon RX 7600を搭載したゲーミングPCのラインナップも順調に増えてきているように思う。やはり多くのユーザーが欲しいと思う性能帯・価格帯のグラフィックボードということでBTOメーカーとしても無視できないのだろう。NVIDIA製グラフィックボードと比べるとどうしてもラインナップは少ない傾向にあるが、フルHDをメインターゲットにしたRadeon RX 7600には期待したい。
今はまだ発売されたばかりということで搭載モデルの価格は高い。競合モデルとなるRTX 3060 TiやRTX 3060よりも販売台数が伸びず単価を下げづらいという事情もあるのかもしれない。コストパフォーマンスだけを考えればより性能の高いRTX 3060 Ti搭載モデルの方が安く購入できる。販売台数が伸びてくれば価格も引き下げられるはずだ。今後の動向に注目したい。
Radeon RX 7600のフレームレート一覧
Far Cry 6
RTX 4060 Ti | |
RTX 3060 Ti | |
RX 7600 | |
RX 6650 XT | |
RX 6600 XT | |
Arc A770 | |
RTX 3060 | |
RX 6600 |
Horizon Zero Dawn
RTX 4060 Ti | |
RTX 3060 Ti | |
RX 7600 | |
RX 6650 XT | |
RX 6600 XT | |
RTX 3060 | |
Arc A770 | |
RX 6600 |
Borderlands 3
RTX 4060 Ti | |
RX 7600 | |
RX 6650 XT | |
RX 6600 XT | |
RTX 3060 Ti | |
Arc A770 | |
RX 6600 | |
RTX 3060 |
Watch Dogs: Legion
RTX 4060 Ti | |
RTX 3060 Ti | |
RX 7600 | |
RX 6650 XT | |
RX 6600 XT | |
Arc A770 | |
RTX 3060 | |
RX 6600 |
Radeon RX 7600のレイトレーシング性能
レイトレーシング性能も気になるところだろう。AMDはこのレイトレーシングの導入について競合のNVIDIAと比べて遅れをとった。それが響いてGeForce RTX 40シリーズ/RTX 30シリーズと比べてワンランク性能が落ちてしまう。後発のIntel Arcシリーズと比べても見劣りしてしまう。レイトレーシング性能を重視したい方は注意が必要だ。
Control
RTX 4060 Ti | |
RTX 3060 Ti | |
Arc A770 | |
RTX 3060 | |
RX 7600 | |
RX 6650 XT | |
RX 6600 XT | |
RX 6600 |
Cyberpunk 2077
RTX 4060 Ti | |
RTX 3060 Ti | |
RX 7600 FSR2 | |
RTX 3060 | |
Arc A770 | |
RX 7600 | |
RX 6650 XT | |
RX 6600 XT | |
RX 6600 |
Spider-Man: Miles Morales
RTX 4060 Ti | |
RTX 3060 Ti | |
RX 7600 FSR2 | |
Arc A770 | |
RTX 3060 | |
RX 7600 | |
RX 6650 XT | |
RX 6600 XT | |
RX 6600 |
Radeon RX 7600搭載おすすめゲーミングPC
Magnate-G MTRW 第12世代Core/Radeon RX7600搭載(ドスパラ)
CPU:Core i5-12400
GPU:Radeon RX 7600
メモリ:DDR5-480 16GB
ストレージ:SSD 1TB Gen4 NVMe
電源:550W 80PLUS BRONZE
コスパ:調査中
サードウェーブが販売する最新モデルだ。ビジネスブランドのMagnateシリーズにもゲーム向け高コスパモデルが登場した。Core i5-12400×Radeon RX 7600搭載の一台だ。フルHD環境でのゲームプレイに適している。メモリはDDR5-4800 16GBと必要十分だ。ストレージはSSD 1TB Gen4 NVMeを搭載している。初期構成として見れば必要十分だろう。電源ユニットは550W BRONZEだ。ファンを光らせたいならカスタマイズでARGBファンに変更する必要がある。納期が延びてしまうのがネックだ。
GALLERIA RM5R-76 4500搭載(ドスパラ)
CPU:Ryzen 5 4500
GPU:Radeon RX 7600
メモリ:DDR4-3200 16GB
ストレージ:SSD 500GB NVMe
電源:550W 80PLUS BRONZE
コスパ:調査中
ガレリアブランドのミニタワーケースを採用したゲーミングPCだ。CPUにRyzen 5 4500を搭載することで価格を抑えている。6コア12スレッドというスペックだ。アーキテクチャはZen 2で2世代前のモデルとなる。CPU性能自体それほど高くない点は理解しておこう。ミドルクラスのRadeon RX 7600との組み合わせならそこまでボトルネックの心配はいらない。リリースされたばかりのRadeon RX 7600搭載モデルが税込137,980円ならまずまずだろう。メモリDDR4-3200 16GB、SSD 1TB NVMeという構成だ。電源ユニットは550W BRONZEを採用している。翌日出荷に対応しているのは嬉しい。
FRGKLB760M/SG1(フロンティア)
CPU:Core i5-14400F
GPU:Radeon RX 7600
メモリ:DDR4-3200 16GB
ストレージ:SSD 1TB NVMe
電源:600W 80PLUS BRONZE
コスパ:調査中
Core i5-14400F×Radeon RX 7600搭載のミドルクラスのゲーミングPCだ。フロンティア自慢のミドルタワーケースを採用している。クリアガラスパネル採用でデザイン性に優れている。Core i5-14400FはIntel第14世代の高コスパモデルだ。ミドルクラスのグラフィックボードとの組み合わせが人気のCPUとなる。10コア16スレッドとスペックが高くゲームプレイ以外の用途にも対応しやすい。競合のRyzen 5 7600と比べても優位性がある。CPUクーラーは空冷タイプだ。構成はメモリDDR4-3200 16GB、SSD 1TB NVMeだ。電源ユニットは600W BRONZEを採用していて必要十分だろう。
GALLERIA XA7R-76 5700X搭載(ドスパラ)
CPU:Ryzen 7 5700X
GPU:Radeon RX 7600
メモリ:DDR4-3200 16GB
ストレージ:SSD 1TB Gen4 NVMe
電源:550W 80PLUS BRONZE
コスパ:調査中
ガレリアブランドのミドルタワーケース採用モデルだ。デザイン性の高いケースで多くのユーザーから支持されている。CPUには第4世代Ryzen 7 5700Xを搭載している。8コア16スレッドというスペックで幅広い用途に対応可能だ。Intel第13世代のCore i5-13400と同等のゲーム性能を期待できる。メモリDDR4-3200 16GB、SSD 1TB Gen4 NVMeと構成も充実している。電源ユニットは550W BRONZEとやや控え目だ。それでも省電力性の高いモデルなので特に問題はない。
G-Tune DG-A5A60(G-Tune)
CPU:Ryzen 5 7500F
GPU:Radeon RX 7600
メモリ:DDR5-4800 16GB
ストレージ:SSD 1TB Gen4 NVMe
電源:750W 80PLUS BRONZE
コスパ:調査中
Ryzen 5 7500F×Radeon RX 7600搭載のミドルクラスのゲーミングPCだ。CPUにはZen 4アーキテクチャ採用のRyzen 5 7500Fを搭載している。6コア12スレッドというスペックながらCore i5-14400と同等のゲーム性能を持つ。Radeon RX 7600との組み合わせならベストマッチに近い。メモリDDR5-4800 16GB・SSD 1TB Gen4 NVMeと構成も抜群だ。電源ユニットは750W BRONZEを採用している。G-Tuneのモデルは送料無料&標準3年保証で安心だ。
参照外部サイト
- Steamハードウェア&ソフトウェア 調査: April 2023(Steam, 2023)
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