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当記事では、AMD Radeon VIIのスペックレビュー&性能ベンチマークを検証している。Radeon VIIは初めて市場に投入された7nmプロセスGPUということで業界でも注目されているグラフィックボードだ。Radeon RX Vega 64の後継モデルとなる。2019年の時点ですでに2021年にも続く7nmプロセスの基礎を築いていたと言える。

2018年11月にRadeon RX 590がリリースされたため当面AMDから新しいグラフィックボードが発売されることはないと考えられていた。しかし、CES 2019(電子機器の見本市)でハイエンドのグラフィックボードRadeon VIIがリリースされることがわかり注目されていた。気になるスペックや性能について詳しく見ていこう。

よくわかる!!AMD Radeon VIIの特徴まとめ

  • 初めて7nm GPUを搭載したグラフィックボード(+)
  • WQHD環境以上で高いパフォーマンスを発揮(+)
  • HBM2 16GBの大容量GPUメモリを搭載(+)
  • ゲーミング性能はRTX 2080に劣る(-)
  • レイトレーシングやDLSSはない(-)
  • 熱を持ちやすく熱対策が必須(-)

AMD Radeon VIIの基本スペック

Radeon VII RTX 2080 RX Vega 64
アーキテクチャ GCN 5.1 Turing GCN 5.0
GPU Vega 20 TU104 Vega 10
プロセス 7nm 12nm 14nm
トランジスタ数 132億 136億 125億
ダイサイズ 331mm² 545mm² 486mm²
コンピューターユニット 60 46 64
シェーダーコア 3840基 2944基 4096基
RTコア数 46基
Tensorコア数 368基
ベースクロック 1400MHz 1515MHz 1247MHz
ブーストクロック 1750MHz 1800MHz 1546MHz
GPUメモリ 16GB HBM2 8GB GDDR6 8GB HBM2
メモリクロック 1000 MHz 1750 MHz 945 MHz
メモリバス 4096 bit 256 bit 2048 bit
メモリバス帯域幅 1,024 GB/s 448 GB/s 484 GB/s
TDP 300W 215W 295W
MSRP $699 $699 $499
中古価格 34,980円 26,980円 19,980円
発売日 2019/02/07 2018/09/20 2017/08/14

コードネームVega 20は、前世代のRadeon RX Vega 64で採用されているVega 10のリニューアル版ということだ。RX Vega 64との大きな変更点はプロセスが14nm→7nmに半分に縮小されているところとなる。一般消費者向けのGPUとしては初めて7nmプロセスが採用された。結果的に、トランジスタ数を6%アップしてるにもかかわらずダイサイズも30%縮小することに成功している。パワー効率が上がりクロック周波数を引き上げることが可能だ。

通常プロセスが縮小すると消費電力を抑えることが可能だ。しかし、AMDはこのモデルに対してクロック周波数を13%引き上げて省電力よりも性能を取った。RTX 2080に対抗するための処置と言えるだろう。クロック周波数を引き上げたことで消費電力は300WとRTX 2080よりも40%も高くなってしまっている。RX Vega 64よりも5Wアップとなった。発熱も多く、ファンノイズも大きめだ。ここを気にされる方は注意した方が良い。

コンピュートユニットが64から60に落ちたことでCUDAコア(シェダーコア)は4096基から3840基へと6%程度少なくなっている。ここはクロック周波数の引き上げと次に紹介するメモリ周りの強化でカバーしている。RTX 2080では46のコンピュートユニットと2944基のCUDAコアだが、構造が異なるため純粋な比較は意味をなさないので数字として把握しておく程度で十分だ。

その他改善点としてはメモリの性能を向上させたのも注目ポイントだ。RadeonⅦは、高性能なHBM2を搭載している。4096 bitのワイドバスメモリで、驚異的な1TB/sのメモリバンド幅を実現した。メモリバスがRadeon Vega 64の2倍になっているのは驚くべきだ。RTX 2080の448 GB/sと比べても圧倒的だ。なお、このHBM2は次世代のメモリとして期待されていたが、価格が高すぎて今では採用されていない。先を行き過ぎた結果だと言えるかもしれない。

AMD Radeon VIIの現在の評価【2025年】

ミドルクラス相当のゲーミング性能を持つ

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Radeon VIIのゲーミング性能は、ミドルクラス相当だ。現行のRDNA 3.0アーキテクチャ採用のRadeon RX 7600と同等となる。フルHD環境でのゲームプレイに最適だ。タイトル次第では高設定あるいは高リフレッシュレートに対応できる。発売当時はWQHD環境をターゲットとするグラフィックボードだった。発売当時同価格帯だったGeForce RTX 2080よりも3%程度劣る結果となった。性能的にはGeForce RTX 2080とGeForce RTX 2070の真ん中でGeForce RTX 2070寄りに位置する。

その後RTX 2070 SUPERがリリースされたことで立場がかなり苦しくなってしまった。GeForce RTX 2070と同じ価格でGeForce RTX 2080寄りのゲーミング性能を持っているのだから苦戦を強いられることは目に見えている。価格に対するコストパフォーマンスでは今ひとつと言えるかもしれない。

それでも前世代のRadeon RX Vega 64よりも20%程度高い性能を持っている。AMD派の方には嬉しい選択肢となるだろう。次世代モデルでいうと$479のRadeon RX 6700 XTよりも性能は劣ってしまう。Ampere世代のGeForce RTX 3060よりは性能が高くフルHD環境で高リフレッシュレートでのゲームプレイは今でも行うことができる。消費電力が高いというデメリットはあるものの性能面では意外と通用するのだ。

コストパフォーマンスはよくない

製品名 ゲーム性能 VRAM TDP 価格 コスパ 発売日
RTX 2080 SUPER 23,712 8GB 250W 33,980 0.698 2019/07/23
RTX 2080 22,590 8GB 215W 26,980 0.837 2018/09/20
RTX 2070 SUPER 22,276 8GB 215W 24,980 0.892 2019/07/09
GTX 1080 Ti 22,209 11GB 250W 25,980 0.855 2017/03/11
RX 7600 22,164 8GB 165W 38,800 0.571 2023/05/25
RX 6650 XT 21,990 8GB 180W 29,980 0.733 2022/05/10
Radeon VII 21,764 16GB 300W 34,980 0.622 2019/02/07
RX 6600 XT 21,147 8GB 160W 24,980 0.847 2021/08/10
RTX 3060 20,591 12GB 170W 32,980 0.624 2021/02/26
RX 5700 XT 20,503 8GB 225W 19,480 1.053 2019/07/07

Radeon VIIの現在の評価としては高くないというのが正直なところだ。そもそも2024年7月時点で中古のタマを探すのは難しい。発売された時からそれほど数が出ている印象は受けていなかったことを考えると納得だ。GeForce RTX 2080 SUPER・GeForce RTX 2080・GeForce RTX 2070 SUPERなどNVIDIA製グラフィックボードが強力だった。消費電力を見ても完敗だ。

中古でもNVIDIA製グラフィックボードが優秀なのは変わらない。どのモデルもコストパフォーマンス指標でRadeon Ⅶを上回っている。レイトレーシング・DLSSといった機能も上だ。今はRadeon VIIを選ばずGeForce RTX 2080 SUPERやGeForce RTX 2070 SUPERを選択するとよいだろう。

AMD Radeon VIIの特徴&注意点【発売時点】

RX Vega 64から飛躍的な進歩はない

AMDにとってのマイナス面はAMD Radeon VIIはVegaのままだということだ。新しい7nmのプロセスを採用しているものの第5世代のアーキテクチャを流用している。プロセスが縮小化されたことでクロック周波数を引き上げたただそれだけに見えてしまう。Radeon VIIが、AMDにとって利点と言えるのは確実に前モデルのRX Vega 64から性能がアップしているということだ。おおよそ20%程度のパフォーマンスが向上を見込めるのはさすがだ。そもそも発売が全く想定だったのだからAMDファンからすると嬉しいだろう。

NVIDIAがレイトレーシングなど新しい技術に焦点を当てていることを考えるとやはり物足りない。レイトレーシング自体未知数だが、ゲーム向けの新技術ということで評価できる。DLSSについても同様だ。AMD Radeon VIIで採用されているVega 20はVegaアーキテクチャ自体に付加された機能はない。AMDの戦略で気になるのはRX Vega 64から大きく変化していないことに尽きる。

中身を見るとRadeon VIIはVega 60あるいはスペックを表した型番にするべきだったかもしれない。AMDは、何よりも性能を追いかけているということだ。コレ自体AMDの立ち位置を考えると理にかなっているかもしれないが、Radeon Ⅶが先代モデルの欠点をなくそうという努力はしていないということになる。例えば、パワー効率などが欠点の一つだ。この点においてはNVIDIA製グラフィックボードと大きく差を付けられてしまった。

コンテンツクリエイター向けとして優秀

Radeon VIIは、コンテンツ制作を考慮すると興味深いグラフィックボードとなる。3D CAD、動画編集、WEBデザイン、ゲーム開発など活躍できる幅は広い。Radeon VIIは、16GBのVRAMを搭載している。高性能なHBM2を搭載していることも強みだ。現時点で市場にライバルはいない。

8GB以上のVRAMを要求されるアプリケーションの利用を考えているプロフェッショナルの方にとっては10万円前後で購入できるRadeon VIIは魅力的な選択肢だと言える。VRAM 24GBのRTX TITANだと40万円近い予算が必要だ。ゲームプレイにおいては16GBのVRAMを活かせるとは思えない。それでもVRAMを求められるクリエイター向けのアプリケーションを使用する方には最適な選択肢だと言える。

在庫が少なく入手しにくい

Radeon VIIで懸念されるのは在庫僅少で入手困難になる可能性があることだ。RTX 2080 Tiのリリース時も品切れが続いたが、このRadeon VIIでも同様に在庫が薄くなりやすいと言われている。この新しいRadeonシリーズについては需要がそれほど高くないことを考慮して生産自体それほど多くないだろう。

各グラフィックボードのベンダーもそれほど参入しないと考えられる。現時点ではMSIから発売が予定されている。BTOメーカーでも抱える在庫はそれほど多くないだろう。同様にRadeon VII搭載のBTOパソコン自体ほとんど販売されない可能性はある。今後のラインナップ追加を要チェック。当サイトでも新しいモデルが販売されれば随時追加していくつもりだ。

その後もBTOメーカーでのラインナップが増えることはなく一部の自作ゲーマーの方が手に入れるぐらいで終わってしまった。2021年時点では中古で手に入れることも困難だ。それだけ希少性の高いグラフィックボードだということになる。

AMD Radeon VIIのベンチマーク一覧(ゲーム)

ゲームプレイ中のフレームレートを計測。WQHD環境及び4K解像度×最高設定で計測している。簡単に結果をまとめると、基本的にはWQHD環境をターゲットとするグラフィックボードだ。4K解像度も対象となるが、一部のタイトルでは60fpsを出すことができないこともあり設定を調整することが求められる。

PUBG

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人気タイトルのPUBGではRTX 2080よりも3%-5%高いスコアを計測している。RX Vega 64と比較すると50%高い。新しいグラフィックボードということで性能面では確かに向上しているということがわかる。ただし、Radeon VIIがRTX 2080を上回ったのはこのPUGBだけだ。相性がよいタイトルがあること自体は好ましい。

Rise of the Tomb Raider

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RX Vega 64よりも25%高いフレームレートとなっている。一方で、競合であるRTX 2080と比べると20%劣ってしまっている。最適化があまり進んでいないのだろう。なお、4K解像度では最高設定でのゲームプレイは厳しい。42.4fpsと安定していないからだ。もっともそれはRTX 2080やRTX 2070にも当てはまる。設定を調整して対応する必要がある。

Battlefield 5

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RTX 2080とほぼ同等のスコアだ。新しいタイトルほど高いフレームレートが出やすい。WQHD環境ならリフレッシュレートの高いモニターでも最大限活かせる。4K解像度でも73.1fpsと十分過ぎる性能を持っていると言えるだろう。RX Vega 64と比較すると25%高くなっていることから新モデルとしてふさわしい性能だ。

Far Cry 5

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TOP 3のモデルについてはほぼ同等のスコアとなっている。これはCPUがボトルネックとなってしまっているからだろう。注目すべきは、4K解像度でのゲームプレイにおいてはRTX 2080及びGTX 1080 Tiよりも高くなっていることだ。新しいタイトルに強いグラフィックボードに仕上がっている。

Deus EX: Mankind Divided

deusexradeonⅦ-deusex

RTX 2080とほぼ同等だ。数%の差なので誤差と言えるかもしれない。RX Vega 64と比較すると35%程度高いスコアを計測している。WQHD環境で60fps以上出せるグラフィックボードが出るとは驚くしかない。グラフィックボードの性能は時代と共に確実に進化しているということだ。

AMD Radeon VIIのベンチマーク一覧(その他)

コンテンツ制作はゲームとは全く異なる土俵となる。ゲーム以上に大容量のGPUメモリがより良い影響を与えることがあるのだ。それらを踏まえた上でベンチマークを見ていこう。LuxMarkは、OpneCLのベンチマークツールだ。Cinema 4Dは、MAXON Computer社によって開発されている3DCGソフトウェアだ。

LuxMark v.3.1

Luxmark-radeonⅦ画像引用元:http://www.luxrender.net/LuxMark v.3.1-radeon7

LuxBall HDRのようなバンド幅が重要なベンチマークでは、Titan RTXのようなモンスター級のグラフィックボードをも超える。Nueumann TLM-201 SEやHotel LobbyではさすがにTitanを超えられていないが、RTX 2080よりも15%以上高いスコアとなっている。

Cinema 4D

cinema4d-radeonⅦ画像引用元:https://www.amd.com/Cinema4D-radeon7

Cinema4Dは、RTX 2080を好むようだ。それでもRX Vega 64と比較して30%-40%程度スコアが向上している。ゲームだけではなくクリエイター用途を中心に考えたら魅力的な選択肢となるだろう。

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ベンチマークテスト環境

desktoppc

CPU Core i7-8700K
メモリ “2x8GB G.Skill TridentZ RGB
DDR4-3200”
SSD “Samsung 970 Evo 1TB
Samsung 860 Evo 4TB”
電源ユニット EVGA SuperNova P2 1000W
マザーボード Gigabyte Z370 Aorus Gaming 7
参照元:AMD RADEON VII REVIEW (PCGAMER)

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