r9380x画像引用元:https://www.gigabyte.com/

当記事では、Radeon R9 380Xの性能比較&ベンチマーク検証をしている。2015年6月18日に発売されたAMD製ミドルクラスのグラフィックボードだ。フルスペックのTonga GPUを採用している。$229という価格でGeForce GTX 970($169)とGeForce GTX 960($289)の隙間に入り込む形だ。

ちょうど穴ができていた部分なので、ユーザーにとってもメリットがあるだろう。基本的にはフルHDがメインのターゲットとなるモデルだと考えてよい。GTX 1050 Tiと同等のゲーミング性能を持つが、今となっては消費電力が高くワットパフォーマンスは悪い。後継モデルは、GCN 4.0アーキテクチャ採用の「Radeon RX 480」だ。

Radeon R9 380Xの概要

基本スペック

R9 380X R9 390 R9 280X
アーキテクチャ GCN 3.0 GCN 2.0 GCN 1.0
プロセス 28nm 28nm 28nm
GPU Antigua XT Grenada PRO Tahiti XTL
トランジスタ数 50億 62億 43.13億
ダイサイズ 366 mm² 438 mm² 352 mm²
CUDAコア 2048 2560 2048
ベースクロック 970MHz 1000MHz 850MHz
ブーストクロック 1000MHz
GPUメモリ 4GB GDDR5 8GB GDDR5 3GB GDDR5
メモリクロック 1425 MHz
(5.7 Gbps)
1500 MHz
(6 Gbps)
1500 MHz
(6 Gbps)
メモリバス 256 bit 512 bit 384 bit
メモリバス帯域幅 182.4 GB/s 384.0 GB/s 288.0 GB/s
バスインターフェイス PCIe 3.0 x16 PCIe 3.0 x16 PCIe 3.0 x16
TDP 190W 250W 250W
MSRP $229 $290 $219
発売日 2015/11/19 2015/6/18 2013/10/08
Radeon R9 380Xは、Tonga GPUを採用したグラフィックボードだ。技術的にはHawaii GPUを採用しているR9 390よりも一歩先を行っている。Tonga GPUでは最新のGCN 1.2ストリームプロセッサーを搭載しているのが特徴だ。プロセスはRadeon R9 390と同じ28nmとなっている。ここは前世代のRadeon R9 280Xから変わっていない。

トランジスタ数はRadeon R9 280Xよりも15%程度増え50億に達している。その分ダイサイズは366m㎡と僅かに大きい。CUDAコアは同じ2048だ。ベースクロックが13%引き上げられ970MHzとなっている。上位のR9 390では1000MHzまで高くなる。

メモリ周りについては基本的にはダウングレードされている。メモリクロック周波数は1425MHzと5%ダウン、メモリバスも256bitだ。当然メモリバンド幅も182.4GB/sに抑えられている。一方で、メモリ容量は3GB→4GBへと1GB増えている。これは高解像度でのゲームプレイ時などに有利に働く。また、消費電力が大幅に抑えられているのもポイントだ。250Wから190Wへと25%近く省電力性が高められている。価格は$10アップだ。

Radeon R9 390では、Radeon R9 280Xよりもワンランク高いGPUメモリを採用している。メモリバスが512bitになり、メモリバンド幅も384.0 GB/sと余裕がある。さらに、GPUメモリも8GB GDDR5を採用していてより強化されている。その分消費電力は高いが、ワットパフォーマンスは比較的良好だ。

NVIDIA製モデルと比較

R9 380X GTX 960 GTX 970
アーキテクチャ GCN 3.0 Maxwell 2.0 Maxwell 2.0
プロセス 28nm 28nm 28nm
GPU Antigua XT GM206 GM204
トランジスタ数 50億 29.4億 52億
ダイサイズ 366 mm² 228 mm² 398 mm²
CUDAコア 2048 1024 1664
ベースクロック 970MHz 1127MHz 1050MHz
ブーストクロック 1178MHz 1178MHz
GPUメモリ 4GB GDDR5 2GB GDDR5 4GB GDDR5
メモリクロック 1425 MHz
(5.7 Gbps)
1753 MHz
(7.0 Gbps)
1753 MHz
(7.0 Gbps)
メモリバス 256 bit 112.2 GB/s 256bit
メモリバス帯域幅 182.4 GB/s 384.0 GB/s 224.4 GB/s
バスインターフェイス PCIe 3.0 x16 PCIe 3.0 x16 PCIe 3.0 x16
TDP 190W 120W 148W
MSRP $229 $169 $289
発売日 2015/11/19 2015/01/22 2014/09/18
NVIDIA製のグラフィックボードと比較していく。Radeon R9 380Xは、価格的にちょうどGTX 960とGTX 970の真ん中に入っている。つまりこの間に収まる性能を期待したい。ここが最大のポイントだ。28nmプロセスはすべてのモデルで共通となっている。Radeon R9 380Xは、GTX 90シリーズと比べてCUDAコアが多くベースクロックが抑えられているということがわかる。トランジスタ数やダイサイズはGTX 970に近い。あとはアーキテクチャの違いがどこまで影響を与えるかといったところだろう。

メモリ周りに関してはGTX 970が優秀だ。Radeon R9 380Xと比べてメモリクロックも1753MHzと25%近く高くそして7.0Gbpsとなっている。メモリバンド幅が224.4 GB/sだ。GTX 960については、メモリバスが128bitでメモリバンド幅も112.2 GB/sと下回っている。GPUメモリも半分の2GBに留まる。

消費電力についてはRadeon R9 380Xの完敗だ。上位モデルであるGTX 970よりも高い消費電力は厳しい。ここは改善の余地があるはずだ。アーキテクチャを変えずにスペックを高くするとどうしてもこうなってしまう。今後はプロセスの縮小などを行っていく必要があるだろう。

Radeon R9 380Xの最新評価【2025年】

r9380xgamescore
Radeon R9 380Xのゲーム性能は7,495だ。GeForce GTX 960と同等のゲーム性能を持つ。次世代のRadeon RX 470になると31%程度処理性能が高くなる。Tongaアーキテクチャはまだまだ発展途上だったのだ。ゲーム性能的にはやや厳しくなっている。フルHD環境でも低設定を基準に考えるとよいだろう。9年前のモデルということもあり消費電力の高さや故障リスクの高さも気になるところだ。

今Radeon R9 380Xを使用している方は買い替えを検討した方がよい。Radeon RX 6400やGeForce GTX 1650辺りは狙い目といえるだろう。Radeon R9 380Xを中古で手に入れるのは難しくこのモデルの購入を考えている方は他のモデルをチェックしておこう。この性能帯ならNVIDIA製グラフィックボードの方がタマを見つけやすい。

Radeon R9 380Xの特徴まとめ【2015年】

性能はエントリークラスに及ばない

r9380xseinou1Radeon R9 380Xの性能は、現行モデルでいうとGeForce GTX 1650に及ばない。Pascal世代のGeForce GTX 1050 Tiと同等でゲーミング性能ははっきりと低い。その一つ前のMaxwell世代のGTX 960に近くフルHD環境で設定を下げることで対応していく必要がある。価格を考えるともう少しGTX 970寄りの性能を期待していたところだが残念だ。

将来性が高いモデルは言えず妥協して選ぶべきではない。それでも6年前に発売されたグラフィックボードであることを考えると合格点を挙げられるだろう。Radeon R9 280Xよりも9%程度パフォーマンスが向上している。世代を重ねるごとにグラフィックボードの性能は引き上げられるが、ミドルクラスのモデルならある程度は使い続けられるということだ。

消費電力が高くコストが掛かりがち

r9380-watt消費電力が高いというのはデメリットとなる。これは発売当時から言われ続けていることだ。この時代のAMD製グラフィックボードは消費電力の高さが悩みのタネだった。いずれにしても性能の似ているGTX 960と比べて40%以上も消費電力が高いのは痛い。公称値よりもGTX 970の消費電力が高かったのでなんとか面目を保っている。

2023年時点でエントリークラスの性能を持っているが、消費電力を考えると積極的に選ぶ理由は浮かばない。電源ユニットなどで少しコストが掛かってしまうことを考えてもマイナスだ。同等の性能を持つGTX 1650のTDPは僅か75Wだ。グラフィックボードを選ぶ際は性能だけではなくアーキテクチャ部分も見ておく方がよいだろう。やはり古いモデルだと不利になってしまう。

中古での入手は困難を極める

2023年時点で中古で入手することはできないだろう。Amazon.co.jpやドスパラでも販売されていない。GTX 960やGTX 970の在庫はちらほら見かけるので、入手が難しいR9 380Xは発売当時それほど売れなかったということだろう。入手できたとしても前述の通り消費電力の高さからおすすめしにくい。後継モデルのRadeon RX 400/Radeon RX 5000シリーズから一気に評価が上がっているように思う。

当然消費電力が高いと電源ユニット・CPUクーラー・PCケースなどにコストを掛ける必要がある。それならGTX 1650やGTX 1660 SUPERを購入してパソコンを組み上げた方が結果的に安上がりだ。古いモデルということで故障リスクも付きまとう。今は選択しないことを推奨する。

Radeon R9 380Xのベンチマーク

FULL HD環境及びWQHD環境でのフレームレートを計測している。注目はGTX 960やGTX 970との性能差及び前世代のR9 280Xとの性能差だ。

Battlefield 4

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Radeon R9 380Xが苦戦している。なんと前世代のRadeon R9 280Xよりも10%程度フレームレートが低い。価格が安いGTX 960よりも3%-4%劣っている。GTX 970との差は70%近くと大きい。タイトル次第ではスペック通りのパフォーマンスを発揮できないようだ。

Call of Duty:Advanced Warfare

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ここではGTX 960に対して18%程度フレームレートが高い。WQHD環境では14%と差が縮まる。GTX 970との差は30%でやはりGTX 960寄りのグラフィックボードだということがわかる。Radeon R9 280Xよりも3%劣るのは気になるところだ。この結果だと買い替えを推奨することができない。

Far Cry 4

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Far Cry 4でもCoDと同様の結果だ。前世代のRadeon R9 280Xに及ばないのはメモリ周りの違いが大きいのかもしれない。性能差は2%程度だ。GTX 960と比べると23%高くしっかりと役割は果たしていると言えるだろう。GTX 970との差は29%とやや大きい。

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