画像引用元:https://www.ark-pc.co.jp/ *イメージ
当記事では、Intel Arc A770のスペックレビュー&性能ベンチマークを検証している。Intel Arc Aシリーズのフラグシップモデルだ。ただし、フラグシップモデルとは言っても市場的にはミドルクラスの性能を持つに留まる。フルHD環境でのゲームプレイを考えているゲーマー向けだ。競合モデルは、NVIDIAのGeForce RTX 3060やAMDのRadeon RX 6650 XTとなる。
レイトレーシングやXeSSに対応しているのも興味深い。Intelは第1世代からこれらの新しい機能を搭載してきた。なお、Intel Arc A380の記事でも記載した通り、Intel製グラフィックボードはResizable BARの有効が必須だ。無効化のままだとゲームプレイ時のフレームレートが全く伸びずゲームを快適にプレイできない。つまり、Ryzen 3000シリーズ以降(AMD 500/400チップセットなど)/Intel第10世代CPU以降(Z490/H470/B460/H410チップセットなど)が対応となる。それ以前のモデルを使用している方はIntel Arc A770の購入を待つべきだ。
グローバルでの発売から遅れること一ヶ月、2022年11月11日(金) 11:00から国内でもIntel Arc A770(Limited Edition)が発売開始となった。搭載モデルは「Intel Arc A770搭載おすすめBTOパソコン」で紹介している。総合的に見て誰にでもおすすめできるわけではなく、Intelが好きで応援したいと考えているユーザー向けだと言えるだろう。コスパなどで決めるモデルではないことは確かだ。
世代 | Alchemist |
---|---|
プロセス | 6nm |
CUDAコア | 4096 |
ベースクロック | – |
ブーストクロック | 2100 MHz |
GPUメモリ | GDDR6 16GB |
TDP | 225W |
MSRP | $349 |
国内価格 | 47,800円 |
発売日 | 2022/10/12 |
- (+)RTX 3060と比べても遜色ない性能を持つ
- (+)第1世代ながらレイトレーシング性能が高い
- (+)GPUメモリ容量16GBと大容量
- (-)Intel Arc A750との差別化がやや弱い
- (-)競合モデルと比べて消費電力が高め
- (-)登場時の価格が高くコスパはイマイチ
当ページの目次
Intel Arc A770の基本スペック
製品名 | Arc A770 | Arc A750 | RTX 3060 | RX 6650 XT |
---|---|---|---|---|
コードネーム | Alchemist | Alchemist | Ampere | RDNA 2.0 |
GPU | ACM-G10 | ACM-G10 | GA106 | Navi 23 |
プロセス | 6 nm | 6 nm | 8 nm | 7 nm |
トランジスタ数 | 217億 | 217億 | 120億 | 110.6億 |
ダイサイズ | 406 mm² | 406 mm² | 276 mm² | 237 mm² |
コンピュートユニット | 32 | 28 | 28 | 32 |
CUDAコア数 | 4096 | 3584 | 3584 | 2048 |
RTコア | 32 | 28 | 28 | 32 |
Metrixコア (Tensorコア) | 512 | 448 | 112 | - |
ベースクロック | - | - | 1320 MHz | 2055 MHz |
ブーストクロック | 2100 MHz | 2050 MHz | 1777 MHz | 2410 MHz |
GPUメモリ | GDDR6 16GB | GDDR6 8GB | GDDR6 12GB | GDDR6 8GB |
メモリクロック | 17.5 Gbps | 16.0 Gbps | 15.0 Gbps | 17.5 Gbps |
メモリバス | 256 bit | 256 bit | 192 bit | 128 bit |
メモリバス帯域幅 | 559.4 GB/s | 512.0 GB/s | 360.0 GB/s | 280.3 GB/s |
Infinity Cache | - | - | - | 32MB |
バスインターフェイス | PCIe 4.0 x16 | PCIe 4.0 x16 | PCIe 4.0 x16 | PCIe 4.0 x8 |
TDP | 225W | 225W | 170W | 176W |
補助電源 | 1x 6-pin + 1x 8-pin | 1x 6-pin + 1x 8-pin | 1x 12-pin | 1x 8-pin |
動画サポート | AV1 HEVC H.265 H.264 | AV1 HEVC H.265 H.264 | AV1*1 HEVC H.265 H.264 | AV1* HEVC H.265 H.264 |
価格 | $349 | $289 | $329 | $399 |
国内価格 | 47,800円 | 31,800円 | 30,990円* | 35,800円 |
発売日 | 2022/10/12 | 2022/10/12 | 2021/02/25 | 2022/05/10 |
*2 中古価格
Intel Arc A770は、6nmプロセスを採用していてGPUにフルスペックのACM-G10を採用している。下位モデルのArc A750 LEと差別化されている形だ。コンピュートユニットは32基全てが有効化されていて、CUDAコア数は4096(32×128)となる。Arc A750 LEと比べて15%多い。RTコアは32、Metrixコアは512となる。ブーストクロックはArc A750 LEと比べて50 MHzだけ高い。
GPUメモリがArc A750 LEの倍の16GBとなる。メモリクロック10%速く17.5 Gbpsだ。メモリバスは256 bitと変わらない。メモリバス帯域幅は、メモリクロックが速い分だけ広く559.4 GB/sだ。バスインターフェイス・TDP・補助電源・動画サポートは全て共通だ。Intel Arc A770にもGPUメモリ容量が8GBのモデルもラインナップにある。国内のBTOメーカーから販売されているのは性能面で劣るGPUメモリ8GBモデルのみだ。Intel Arc AシリーズではAV1のエンコードをサポートしている。価格差は$60でIntel Arc A770 LEの方が高い。国内価格では14,820円の差がある。
プロセスを比較するとRTX 3060が8nmで、RX 6650 XTが7nmとなっている。Intel Arc A770は6nmと一回り小さいプロセスを採用している。また、トランジスタ数は競合モデルよりも80%-90%多く217億だ。ダイサイズも50%-70%も大きい。ブーストクロックはRTX 3060とRX 6650 XTの間で2100 MHzとなる。
GPUメモリが競合モデルよりも33%以上多く16GBというのは心強い。メモリバス帯域幅も559.4 GB/sと突出した数値だ。一方で、TDPが225Wと、競合モデルと比べて30%以上高いのは気になるところだおろう。補助電源は1×6-pin+1×8-pinだ。Intel Arc A770 LEは、競合モデルと比べて動画サポート支援が充実している。AV1のエンコードに対応しているのは強みだ。MSRPではRTX 3060よりも$20高い設定となる。
Intel Arc A770の最新評価【2023年】
Intel Arc A770の性能は前評判通りミドルクラス相当となる。フルHD環境でのゲームプレイを考えている方にとっては十分な性能だ。競合のGeForce RTX 3060よりも10%程度高く、Radeon RX 6650 XTよりも5%低い。現行のミドルクラスであるGeForce RTX 4060よりも8%低く、Radeon RX 7600よりも6%低い。ドライバーの安定感も日増しに高くなっているように思える。intel Arc A770は、レイトレーシング性能が高くそこまで考慮すれば選択肢に入るのではないかと思う。下位モデルであるIntel Arc A750と比べると4%程度パフォーマンスが高い。
Intel Arc A770(16GB)の単体価格は47,800円~、GeForce RTX 4060(8GB)が42,780円~、Radeon RX 7600(8GB)が38,800円~だ。確かにGPUメモリ容量が16GBと価格帯を考えると大容量だが、ゲーミング性能を考慮すると見劣りしてしまう。Radeon RX 7600よりも価格が安くないと選びづらい。なお、Intel Arc A770を搭載したBTOパソコンは皆無だ。まだまだNVIDIAとAMDの牙城を崩すのは難しい。
Intel Arc A770の特徴&強み
RTX 3060以上の性能でフルHDでのゲームプレイに最適
Intel Arc A770は、ミドルクラスの性能を持ちフルHD環境でのゲームプレイを考えているに最適なグラフィックボードだ。グラフィックス処理性能ではRTX 3060とRadeon RX 6650 XTの間に収まっている。レイトレーシング性能についても期待以上でRTX 3060と同等以上の適性を持つ。
Radeon RX 6650 XTと比べると純粋な処理性能では負けてしまうが、レイトレーシング性能では大きく上回っている。Intelが投じた第1世代のIntel Arcシリーズとしては及第点だろう。一方で、下位モデルのArc A750との差別化が弱いようにも思える。コストパフォーマンスを考えるとIntel Arc A750の方が優れている。MSRPで17%程度安く、Arc A770に近い性能を得られるからだ。
もっともドライバーの不安定さやDirectX 11への適性が低く現時点でIntel Arcシリーズを積極的におすすめできるわけではないが、スタートとしては悪くない。2022年10月時点ではRTX 3060やRX 6650 XTを選択しておくのが無難だろう。今変にリスクを取るメリットはないはずだ。
AV1エンコードに対応している
Intel Arc A770の強みは性能やレイトレーシングだけではない。動画支援も充実していてAV1・HEVC・H.265・H.264のエンコード/デコードに対応している。特に新しい規格であるAV1のエンコードに対応しているのは強みだ。NVIDIAやAMD製グラフィックボードは対応しておらず初めての試みとなっている。両モデルが対応しているのはAV1のデコードのみだ。
従来モデルと比べてより効率よくエンコードを行えるのが特徴だ。YoutubeやNetflixではAV1個ードックが使われていて将来性が高いと言える。下記のツイートは、IntelがつぶやいたものでAV1ハードウェア活用した際の優位性について動画にしている。H.264と比べてもその差は歴然だ。
#IntelArc graphics supports #AV1 hardware-accelerated encoding and decoding. It's a game changer providing incredible improvements to deliver better encoding versus traditional implementations. See the difference in this demo on Elden Ring.
See it in 4K: https://t.co/kcIXF7xwtg pic.twitter.com/syvMkPI2x2
— Intel Graphics (@IntelGraphics) March 30, 2022
競合モデルと比べて消費電力が高め
Intel Arc A750がそうであったように、Intel Arc A770も消費電力の高さがネックとなる。RTX 3060やRadeon RX 6650 XTと比べて25%以上も消費電力が高い。Arc A770よりも性能の高いRTX 3060 Tiよりも消費電力が高くなっているのは悩ましいところだ。
なにせIntelにとって20年ぶりのグラフィックボードなのだから、今の時点で経験豊富なNVIDIAやAMDと比べるのは不公平かもしれない。初めてのグラボだから寛容にいきたい。考え方によっては1世代でここまで消費電力を抑えられたのは朗報と言えるかもしれない。
BTOパソコンではGPUメモリ8GBが主流
2023年3月時点でドスパラ及びパソコン工房からIntel Arc A770を搭載したゲーミングPCが販売されている。すべてのモデルがGPUメモリ容量が8GBの下位グレードのみだ。当ページでレビューをしているGPUメモリ16GB搭載モデルよりもパフォーマンス面で見劣りしてしまうことは理解しておく必要がある。もっともそのリスクをとるのであれば素直にGeForce RTX 3060やRadeon RX 6650 XT搭載モデルを選択するべきだろう。
ドライバーが不安定なこともあって選びづらさがある。初心者の方は必ず避けるべきだ。Intel Arc A770搭載モデルは、Intelへの投資的な側面が大きい。ある程度の販売台数を見込めれば次世代モデルをリリースしてくれるはずだ。第三の企業が生まれることは長い目で見ればユーザーにとってプラスになる。現時点ではNVIDIA・AMDと比べて不利な立場にあることは間違いない。
Intel Arc A770のフレームレート一覧
Far Cry 6
RTX 3070 | |
RTX 3060 Ti | |
RX 6650 XT | |
RX 6600 XT | |
Arc A770 LE | |
RX 6600 | |
Arc A750 LE | |
RTX 3060 | |
RTX 3050 |
Horizon Zero Dawn
RTX 3070 | |
RTX 3060 Ti | |
RX 6650 XT | |
RX 6600 XT | |
RTX 3060 | |
RX 6600 | |
Arc A770 LE | |
Arc A750 LE | |
RTX 3050 |
Watch Dogs: Legion
RTX 3070 | |
RTX 3060 Ti | |
Arc A770 LE | |
RX 6650 XT | |
RX 6600 XT | |
Arc A750 LE | |
RTX 3060 | |
RX 6600 | |
RTX 3050 |
Intel Arc A770のレイトレーシング性能
Control
RTX 3070 | |
RTX 3060 Ti | |
Arc A770 | |
Arc A750 LE | |
RTX 3060 | |
RX 6650 XT | |
RX 6600 XT | |
RTX 3050 | |
RX 6600 |
Cyberpunk 2077
RTX 3070 | |
Arc A770 | |
Arc A750 LE | |
RTX 3060 Ti | |
RTX 3060 | |
RTX 3050 | |
RX 6650 XT | |
RX 6600 XT | |
RX 6600 |
Fortnite
RTX 3070 | |
RTX 3060 Ti | |
Arc A770 | |
Arc A750 LE | |
RTX 3060 | |
RX 6650 XT | |
RX 6600 XT | |
RTX 3050 | |
RX 6600 |
Intel Arc A770搭載おすすめゲーミングPC
GALLERIA XA7C-A750(ドスパラ)
CPU:Core i7-13700F
GPU:Intel Arc A770 8GB
メモリ:DDR4-3200 16GB
ストレージ:SSD 1TB NVMe
電源:750W 80PLUS GOLD
コスパ:調査中
Core i7-13700F×Intel Arc A770搭載のゲーミングPCだ。ガレリアのミドルタワーケースを採用していて拡張性に長けている。性能的にはRTX 3060相当で価格は妥当だろう。あえてIntel製CPUを選ぶ理由を探すのが難しいが、この価格なら選択肢として悪くない。メモリ16GB、SDS 1TBという構成だ。電源ユニットは750W GOLDを採用している。やや消費電力の高いグラフィックボードということもあって電源ユニットにはコストが掛かっている。
LEVEL-R779-LC137KF-A8X(パソコン工房)
CPU:Core i7-13700KF
GPU:Intel Arc A770 8GB
メモリ:DDR5-4800 16GB
ストレージ:SSD 1TB NVMe
電源:800W 80PLUS GOLD
コスパ:調査中
パソコン工房が販売するIntel Arc A770搭載モデルだ。Intel Arc A770を搭載したモデルはミドルタワーモデルのみのラインナップで価格が高めだ。メモリDDR5-4800 16GB、SSD 1TB NVMeと構成は充実している。電源ユニットは800W GOLDを採用していて万全だ。Core i7-13700KFは16コア24スレッドと高スペックで幅広い用途に対応できるCPUだ。Intel Arc A770との組み合わせはもったいない。Arc A770の性能では力不足感が否めない。
LEVEL-R779-LC139KF-A8X(パソコン工房)
CPU:Core i9-13900KF
GPU:Intel Arc A770 8GB
メモリ:DDR5-4800 32GB
ストレージ:SSD 1TB NVMe
電源:800W 80PLUS GOLD
コスパ:調査中
Core i9-13900KF×Intel Arc A770 8GB搭載のゲーミングPCだ。RTX 3060搭載モデルが税込309,800円なので比較的価格は押さえられているように思う。メモリDDR5-4800 32GB、SSD 1TBと構成も十分だろう。電源ユニットは800W GOLDを採用していて万全だ。ドライバーの不安定さが改善されれば魅力的なモデルとなる。もっともその頃にはGeForce RTX 4060がリリースされて立場が危うくなるはずだ。
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