当ページでは、Ryzen 7 5800Xのスペック&性能ベンチマークを検証している。Ryzen 7 3800Xの後継モデルだ。第4世代Ryzenシリーズにおける、8コア16スレッドの高パフォーマンスCPUだ。スペック的にも性能的にもゲーマーにとって最も最適だと言えるモデルだが、価格が高いという致命的な問題がある。売れ筋モデルはRyzen 7 3700Xの後継モデルであるRyzen 7 5700Xとなるはずだ。Ryzen 7 5700Xは2022年4月にようやく発売されそうだ。Ryzen 7 5800Xがリリースされてから1年半も経過してからだ。Intel第12世代Core i7シリーズの登場でシェアを奪われて始めて動き出した。
搭載モデルは、「Ryzen 7 5800X搭載おすすめゲーミングPC」で解説している。2023年2月時点でRyzen 7 5800X搭載モデルはほとんどなく、Ryzen 7 5700Xの方が選択肢が豊富だ。元々の競合モデルはIntel第10世代のCore i7-10700Kだったが、今はIntel第12世代のCore i7-12700Kがライバルだ。12コア20スレッドと驚異的なスペックを誇り正直Ryzen 7 5800Xの立場が完全になくなってしまった。相応に価格が下がらない限り選ぶメリットは小さい。
その後Ryzen 7 5800Xは価格が下がって国内での販売価格は37,000円前後だ。競合モデルはおよそ60,000円のCore i7-12700Kではなく、Core i7-12700(48,352円)/Core i5-12600K(38,450円)となる。ハイブリッドコアアーキテクチャを採用したIntel製CPUは脅威だ。これらのモデルがあったからRyzen 7 5800Xの価格が引き下げられた形となっている。2022年9月に後継モデルである「Ryzen 7 7700X」がリリースされている。Zen 4アーキテクチャ採用でIPCが改善してより高いゲーム適性も持っている。
Ryzen 7 5800Xの基本情報
コードネーム | Zen 2 |
---|---|
プロセス | 7nm |
コア/スレッド数 | 8コア/16スレッド |
定格/最大クロック | 3.8 GHz/ 4.7 Ghz |
L3キャッシュ | 32MB |
TDP | 105W |
発売日 | 2020年11月06日 |
MSRP | $449 |
国内価格(発売時点) | 38,864円 |
中古価格(2024/7) | 26,980円 |
特徴 | (+)8コア16スレッドでマルチスレッド性能が高い (+)Zen 3アーキテクチャになりゲーム適性が向上した (+)省電力性に長けている (-)Intel第12世代Core i7シリーズが脅威となる (-)価格が高くコスパはイマイチ (-)搭載BTOパソコンの価格も上がる |
評価 | ・総合評価 6.5 ・ゲーム評価 6.0 |
当ページの目次
Ryzen 7 5800Xの基本情報
AMD製CPUと比較
7 5800X | 7 3800X | |
---|---|---|
メーカー | AMD | AMD |
コードネーム | Zen 3 (Vermeer) | Zen 2 (Matisse) |
プロセス | 7nm | 7nm |
トランジスタ数 | 41.5億 | 38.0億 |
ダイサイズ | 81 mm² | 74 mm² |
CPUコア数 | 8コア | 8コア |
スレッド数 | 16スレッド | 16スレッド |
定格クロック | 3.8 GHz | 3.9 GHz |
最大クロック | 4.7 GHz | 4.7 GHz |
L3キャッシュ | 32MB | 32MB |
対応メモリ | DDR4-3200 | DDR4-3200 |
CPUクーラー | なし | Wraith Prism |
PCI-Express | Gen 4 | Gen 4 |
TDP | 105W | 105W |
価格 | $449 | $399 |
発売日 | 2020年11月06日 | 2019年07月07日 |
定格クロックが3%少なく、最大クロックは4.7 GHzが維持されている。L3キャッシュ容量・対応メモリは共通だ。Ryzen 7 5800XではCPUクーラーが非搭載だ。PCI-ExpressはGen 4.0となっている。TDPも105W共通だ。価格は$50アップだ。プレミアム路線になったと考えてよいだろう。
スペックだけを見るとダウングレードしているように感じられるかもしれない。それでもZen 2からZen 3へとアーキテクチャが変わってゲーミング性能が大幅に向上している。スペックを見るだけではわからない部分だろう。そこは後述のベンチマークを参考にして欲しい。
Intel製CPUと比較
7 5800X | i7-10700K | i7-12700K | |
---|---|---|---|
メーカー | AMD | Intel | Intel |
コードネーム | Zen 3 | Comet Lake | Alder Lake |
プロセス | 7nm | 14nm | 10nm |
CPUコア数 | 8コア | 8コア | 12コア(8+4) |
スレッド数 | 16スレッド | 16スレッド | 20スレッド |
定格クロック(P) | 3.8 GHz | 3.8 GHz | 3.6 GHz |
最大クロック(P) | 4.7 Ghz | 5.1 Ghz | 5.0 Ghz |
定格クロック(E) | - | - | 2.7 GHz |
最大クロック(E) | - | - | 3.8 GHz |
L3キャッシュ | 32MB | 16MB | 25MB |
対応メモリ | DDR4-3200 | DDR4-2933 | DDR5-4800 DDR4-3200 |
CPUクーラー | なし | なし | なし |
PCI-Express | Gen 4 | Gen 3 | Gen 4 |
内蔵グラフィックス | × | UHD 630 | UHD 770 |
TDP(PBP) | 105W | 125W | 125W |
PL2(MTP) | - | 229W | 190W |
価格 | $449 | $384 | $419 |
発売日 | 2020年11月06日 | 2020年04月30日 | 2021年11月4日 |
定格クロックはどちらも3.8GHzで、最大クロックはCore i7-10700Kの方が9%高い。L3キャッシュ容量はRyzen 7 5800Xの方が多く32MBだ。対応メモリもRyzen 7 5800XではDDR4-3200に対応していてワンランク上だ。CPUクーラーはどちらも日同梱となっている。PCI-ExpressについてはCore i7-10700KがGen 3に対してRyzen 7 5800XではGen 4だ。
Core i7-10700Kでは内蔵グラフィックスが搭載されている。内蔵グラフィックス非搭載のRyzen 7 5800Xは外部グラフィックボードは必須だ。TDPはCore i7-10700Kの方が20%大きく125Wだ。やはり14nmプロセスを採用しているため省電力性は厳しい。価格差は$65でRyzen 7 5800Xの方が高い。これまでAMD製CPUはコスパの高さをウリにしていたがここに来て変わってしまった。
2021年11月にIntel第12世代のCore i7-12700Kがリリースされた。プロセスが10nmへと微細化されている。Ryzen 7 5800Xの7nmプロセスには及ばないものの進化した。Core i7-12700Kでは12コア20スレッドと飛躍的にスペックが向上している。L3キャッシュ容量も25MBへと増量された。対応メモリもDDR5-4800に対応している。
Ryzen 7 5800Xが少し遅れとった形だ。価格は$419でCore i7-10700Kよりも$35高いが、Ryzen 7 5800Xよりも$30安い。ただ、このCore i7-12700Kが発売されたことでRyzen 7 5800Xの価格が下がってきている。実売価格ではRyzen 7 5800Xの方が安価だ。ツーランク下のCore i5-12600KならRyzen 7 5800Xと同等の価格で購入できる。性能的にはCore i5-12600Kの方が上だ。
Ryzen 7 5800Xの最新評価【2024年】
今でもまずまず通用するゲーム性能を持つ
上記はゲーミング性能をグラフにまとめたものだ。Ryzen 7 5800Xは2020年に発売されたモデルとして見るとまずまず高いゲーム性能を持つCPUとなる。当時の競合モデルであるCore i7-10700Kと比べて1%-2%程度低い。今でも販売されているRyzen 7 5700Xよりもゲーム性能は上だ。また、Core i5-13400と同等のゲーム性能を期待できる。
ところがIntel第11世代のCore i7-11700K、Intel第12世代のCore i7-12700KとIntelは攻勢を仕掛けて来た。とくにIntel第12世代の上位モデルでは2つのコアを組み合わせたハイブリッドコアアーキテクチャを採用して高いパフォーマンスを発揮する。Core i7-12700Kとの性能差は12%となっている。マルチコア性能ではそれ以上の差がある。12コア20スレッドというスペックは圧巻だ。これまでRyzen 7 5800Xが優勢だったマルチスレッド性能でも遠く及ばない。
中古価格は25,980円~と妥当な価格設定
製品名 | コア/スレッド | ゲーム性能 | 価格 | コスパ | 発売日 |
---|---|---|---|---|---|
Ryzen 7 5700X3D | 8/16 | 34,488 | 29,980 | 1.150 | 2024/02/02 |
Core i7-12700 | 12/20 | 30,937 | 37,980 | 0.815 | 2022/01/05 |
Core i7-12700F | 12/20 | 30,937 | 35,980 | 0.860 | 2022/01/05 |
Core i5-13400 | 10/16 | 28,926 | 27,980 | 1.034 | 2023/01/03 |
Core i5-13400F | 10/16 | 28,926 | 25,980 | 1.113 | 2023/01/03 |
Ryzen 7 5800X | 8/16 | 27,331 | 25,980 | 1.052 | 2020/10/09 |
Ryzen 9 5900X | 12/24 | 27,257 | 37,980 | 0.718 | 2020/10/09 |
Ryzen 7 5700X | 8/16 | 27,036 | 20,980 | 1.289 | 2022/04/04 |
Core i9-11900K | 8/16 | 26,816 | 41,980 | 0.639 | 2021/03/30 |
Core i9-11900KF | 8/16 | 26,816 | 40,980 | 0.654 | 2021/03/30 |
Core i5-12400 | 6/12 | 26,448 | 18,980 | 1.393 | 2022/01/05 |
Core i5-12400F | 6/12 | 26,448 | 17,480 | 1.513 | 2022/01/05 |
より高いコストパフォーマンスを追求するならCore i5-12400がおすすめだ。スペックは6コア12スレッドと次世代モデルと比べると見劣りするが、コストパフォーマンス指標はトップクラスだ。ゲーム実況や動画編集などのクリエイティブ作業を考えていないなら十分候補にはいる。
発売時点のRyzen 7 5800Xの評価【2020年時点】
i7シリーズ以上のゲーミング性能を持つ
Ryzen 7 5800Xではゲーミング性能が飛躍的に向上している。第3世代のRyzen 7 3800XTやRyzen 7 3800Xとは別物のCPUとなった。Intel第10世代のCore i7-10700Kをも上回り、おおよそCore i9-10900Kに匹敵するゲーミング性能を持つ。ゲームプレイを考えるならかなり魅力的なモデルとなるだろう。自作ユーザーの方もぜひチェックしておこう。
省電力性が高い
Ryzen 7 5800Xは省電力性の高さも特徴の一つだ。Core i7-10700Kと比べても10%近く省電力性が高い。消費電力が抑えられてかつ性能が高いのだから言うことはない。Ryzen 7 3800XTよりも6%程度消費電力が低くなった。Zen 3アーキテクチャはかなり魅力的に思える。Intel第12世代のモデルと比べてもそれは変わらない。
1コア当たりのコストが最も高い
Ryzen 7 5800Xはプレミアム価格が設定されていると考えて間違いない。前世代のRyzen 7 3800XTから$50アップの$449となるのは厳しい。コア当たり$56ということになる。上位のRyzen 9 5900Xがコア当たり$46で、下位のRyzen 5 5600Xが1コア当たり$49であることを考えるとやはりプレミアム価格が設定されている。
プレミアム価格が設定されるのもちゃんとした理由がある。Ryzen 7 5800XではシングルのCCDが使用されることになる。一つのCCDには8つのコアがあるわけだが、8コアを持つRyzen 7 5800Xではトップの品質のシリコンウェーハが要求されることになる。品質が劣るシリコンでは代用できず、6コアのRyzen 5 5600Xあるいは12コア(6×6)のRyzen 9 5900Xに流用される形になる。この状況を考えると価格が高いのもうなずける。
Ryzen 7 5800Xのゲームベンチマーク一覧
ゲームプレイ時のフレームレートを計測している。他のCPUとの性能差を比べる上で有効な指標となる。Ryzen 7 5800Xは、8コア16スレッドとゲーマーの方にとってはぐさりと刺さる性能帯だ。Core i7-10700Kを上回るゲーミング性能を持っている。注目ポイントはRyzen 7 3800XTやRyzen 7 3800Xなどの第3世代のRyzenシリーズとの性能差だ。ゲーミングパフォーマンスは、今回の第4世代Ryzenの強みと言える部分なのでしっかり確認したい。
Borderlands 3
Shadow of the Tomb Raider
Hitman 2
その他アプリケーションのベンチマーク
ゲーム以外のアプリケーションにおけるパフォーマンスを見ていく。動画編集などのクリエイター作業を考えている方は必見だ。ここでの性能が高ければゲーム実況でも有利に考えてよい。Ryzenシリーズがずっと強みにしている部分だ。どれほどスコアが伸びているかに注目して欲しい。
Cinebench R20スコア
シングルスレッドの王者であったIntel製CPUを圧倒する形だ。マルチスレッド性能でもIntel Core i9-10900Kに匹敵するスコアを出している。8コア16スレッドのCPUで10コア20スレッドのCPUに肉薄するというのは驚くばかりだ。
7-Zip
Puget Systems Adobe
Ryzen 7 5800X搭載おすすめゲーミングPC
各BTOメーカーからRyzen 7 5800X搭載モデルが販売されている。やはり価格は高めでコストパフォーマンスに優れているとは言えない。税抜20万円近い価格設定が多い。Core i9-10900K搭載モデルを購入できる価格帯で取り扱いが難しい。
LEVEL-R7X6-LCR58X-RBX(パソコン工房)
CPU:Ryzen 7 5800X
GPU:GeForce RTX 3060
メモリ:DDR4-3200 16GB
ストレージ:SSD 1TB NVMe
電源:700W 80PLUS BRONZE
コスパ:調査中
2023年2月時点で唯一販売されているRyzen 7 5800X搭載モデルだ。8コア16スレッドとマルチスレッド性能が高く幅広い用途に対応できる。ゲーム実況や動画編集などの作業を考えている方におすすめだ。Radeon RX 6600はミドルクラスのグラフィックボードでフルHD環境でのゲームプレイに適している。タイトルによっては高リフレッシュレートを目指せる。RTX 3060搭載モデルと比べると価格が高いのがネックとなる。総合的に見てコストパフォーマンスに優れたモデルではないので他のモデルをチェックするべきだろう。
ZEFT R26L(セブン)
CPU:Ryzen 7 5800X
GPU:GeForce RTX 3060 Ti
メモリ:DDR4-3200 16GB
ストレージ:SSD 500GB NVMe
電源:750W 80PLUS GOLD
コスパ:調査中
なRyzen 7 5800X搭載モデルとなっている。人気のPCケースである「Cooler Master MASTERBOX CM694」を採用したゲーミングPCだ。HDD×6基とSSD×8基搭載可能な拡張性の高さが圧巻だ。グラフィックスにはRTX 3060 Tiを搭載していて満足度の高いゲームプレイが可能だ。WQHD環境までであればある程度余裕がある。メモリ16GB、SSD 500GBと構成も十分あろう。電源ユニットは750W GOLDを採用している。
LEVEL-R7X6-LCR58X-RBX(パソコン工房)
CPU:Ryzen 7 5800X
GPU:GeForce RTX 3060 Ti
メモリ:DDR4-3200 16GB
ストレージ:SSD 1TB NVMe
電源:700W 80PLUS BRONZE
コスパ:調査中
Ryzen 7 5800X搭載モデルだ。グラフィックボードにはハイクラスのRTX 3060 Tiを搭載している。ミドルタワーケースを採用している。税込み22万円台と価格が高めなRyzen 7 5800X搭載モデルとしては優秀だ。RTX 3060 Tiは処理性能が高くWQHD解像度でのゲームプレイや高リフレッシュレートでのゲームプレイを想定しているゲーマー向けだ。メモリ16GB、SSD 1TBと構成も及第点だ。全体的にバランスの取れた一台だと言える。
GALLERIA ZA7R-R37 5800X搭載(ドスパラ)
CPU:Ryzen 7 5800X
GPU:GeForce RTX 3070
メモリ:DDR4-3200 16GB
ストレージ:SSD 1TB NVMe
電源:750W 80PLUS GOLD
コスパ:2.9
Ryzen 7 5800X×RTX 3070搭載のゲーミングPCだ。ドスパラはRyzenシリーズの価格がかなり高めに設定されている。コスパ重視なら他のモデルを見た方がよいだろう。Zen 3アーキテクチャになってパフォーマンスが向上していてRTX 3070との相性は標準的だ。メモリ16GB、SSD 1TBと構成も十分だ。電源ユニットは750W GOLDとなっている。
GALLERIA ZA7R-R38(ドスパラ)
CPU:Ryzen 7 5800X
GPU:GeForce RTX 3080
メモリ:DDR4 16GB
ストレージ:SSD 1TB NVMe
電源:750W 80PLUS GOLD
コスパ:0.6
RTX 3080×Ryzen 7 5800X搭載のゲーミングPCだ。RTX 3080は、RTX 2080 Tiを大幅に超えるゲーミング性能を持つ。4K解像度にも対応できる性能の高さが特徴だと言える。レイトレーシングやDLSSといった機能も存分に活用することができるのはポイントだ。Ryzen 7 5800Xとの相性も良好だ。メモリ16GB、SSD 1TBと構成も十分だろう。
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